第41話 崩れ――均衡の破断
圧は変わらない。いや、強くなっている。でも目の前の数は減っているはずだった。
「――っ!」
ユークが踏み込む。火弾の雨を正面から切り裂く。剣が届く。
「らあッ!」
直撃。火属性の生徒が弾かれる。結界が反応。外へ。
(削った。でも)
(……軽くならない)
圧が落ちない。むしろ濃くなる。
(アルトだけで成立している)
「来る」
ラグが短く言う。次の瞬間アルトが踏み込んだ。速い。これまでより一段明確に。雷はすでに纏われている。
(維持してる)
レインは横にずれる。空振る。嫌な感覚が増す。
(……積んでる)
ラグが動く。読む。踏み込みの次の位置。だが。
「――遅い」
アルトの声。ほんのわずか。ズレる。読みが間に合わない。雷が届く。
「っ――」
直撃。蓄積が放出される。衝撃。ラグの身体が吹き飛ぶ。結界が反応。外へ。
そして直後に「『スパークコンプレッション』」再詠唱。雷が再び纏われる。
(かけ直した。リセットして再蓄積。いずれ当たればまた終わる)
クラウスが前に出る。足元の陣が展開される。複数。線が走る。交差。固定。アルトの動きがわずかに鈍る。
「ユーク、前を維持しろ」「分かってる!」
水が来る。「『アクアランス』」弾く。風が来る。「『エアスラッシュ』」避ける。そこにアルト。再び踏み込む。
(今は軽い。まだ溜まっていない)
でも続く。空振る。避ける。また空振る。そのたびに重くなる。
クラウスの陣が光る。制限する。
「無駄だ」
アルトが言う。雷が膨らむ。密度が変わる。
視界に入る。クラウスの陣。構造。結び目。その一点。
裂ける。強引に。繋がりが断ち切られる。陣が崩れる。
「っ――」
クラウスの足元が揺れる。制御が外れる。その一瞬にアルトが入る。雷が振り下ろされる。直撃。蓄積が弾ける。クラウスの身体が弾かれる。外へ。
そして直後。「『スパークコンプレッション』」再詠唱。
残るはレインとユーク。対するはアルト、水、風。
(……あれがいる限り、数は意味を持たない)
ユークが横に立つ。肩で息をしながら。
「……残ったな」「ああ」
アルトが一歩、前に出る。
「次で終わる」
静かな声。断定。
(ここからだ。まだ崩せていない)




