第40話 開幕――完成された布陣
決勝。
観客席のざわめきは、これまでとは明らかに違っていた。期待。緊張。そして確信。どちらが勝つのか、多くがすでに答えを持っている。
区画の中央。向かい合う二つのチーム。
レインたち。そしてアルト・レグナスのチーム。
黒髪。金の瞳。その立ち姿だけで空気が変わる。
(……分かりやすいな)
アルトもこちらを見ていた。測るでもなく、威圧するでもなく。ただ確認するように。
「……来るぞ」
「流れ、悪い」
ラグの言葉通り、風が淀んでいる。
「開始」
前に出たのはアルトではない。前衛の火が連射する。
「『フレイムバレット』」
その背後で水が重なる。
「『フロウバインド』」
横からも風刃。三方向。同時。
ユークが受ける。ラグが横から入る。クラウスの陣が光る。一瞬、流れが止まる。
レインが前に出る。火弾の隙間を抜ける。水の拘束を外す。風刃をかわす。
その合間。
来る。
アルト。踏み込み。速い。一直線。雷が腕に纏わりつく。
「『スパークコンプレッション』」
(……これは)
レインは半歩ずれる。空振る。でも嫌な感覚が残る。わずかに。でも確かに。
(……やっぱりか。避けるほど、重くなる)
アルトが一歩引く。間合いを切る。追わない。焦らない。ただ繰り返す。
前衛が再び圧をかける。逃げ場を削る。動かす。位置を限定する。そしてまた来る。今度は速い。
レインは体を捻る。紙一重で外す。空振る。さっきより重い。
「……避けた分、乗ってる」「間合いに入ると重くなる」「既知の現象だ。だが速度が違う」
(対処できてない)
レインは視線を上げる。アルトはまだ余裕がある。呼吸も乱れていない。積み上げている。確実に。
(このままだと、避けるほど不利になる。だが受けても終わる。なら)
視線をアルトに固定する。動き。踏み込み。振り。その全てを。観る。
そして。
また来る。今度はさらに速い。
「『スパークコンプレッション』」
再び。レインは動く。避ける。空振る。重くなる。積み上がる。その繰り返し。
アルトは止まらない。ただ積み上げる。確実に。勝つための形を。
(分かってる。構造は。仕組みは。でも)
(……崩せてない)
それが、全てだった。




