第36話 余波――定まらない評価
試合終了の合図が出たあとも、ざわめきはすぐには消えなかった。
「……今の、見たか?」「いや、見えたけど……何した?」「魔法じゃないよな、あれ」
断定がない。評価が揺れている。
レインはそのまま区画の外へ出る。呼吸は乱れていない。でも身体の奥に、わずかな重さが残っていた。
「……助かった」
ユークが短く言った。
「さっきの、あれがなかったら押し切られてた」
「……そうか」
事実かどうかも、よく分かっていない。ただ、通っただけだ。
「でもよ」
ユークが続ける。
「お前、タイミング合ってねえのに結果だけ持ってくよな」
少しだけ笑う。軽口に近い。だが完全な冗談でもない。
「流れが変わったのは確かだ」
ラグが横から口を挟む。
「あれ……押したのか?」
「……触った。そこに、ある感じがした」
それ以上は言えない。言葉が足りない。
「……やっぱり、そうか」
クラウスは何も言わない。ただレインを見ていた。
「再現できるか」
「分からない」
「……条件が必要か」
クラウスは小さく呟く。思考はもう別のところにある。
「後で試す」
「好きにしろ」
そのとき、隣の区画で次の試合が始まっていた。
四人が一つの動きになっている。無駄がない。一手ずれても次で戻す。
「面倒なの来たな」
ユークが短く言う。本質を突いている。
レインは何も言わない。ただ、見ている。
(……崩れない。あれは揃っている)
イリスが少し離れた場所で腕を組みながら、それを見ていた。
「……崩れないね」
重い一言。
次に当たる相手が、今決まった。
ざわめきが、少しだけ質を変える。期待と。比較と。そして測るような視線。




