第35話 逸脱――噛み合わない勝利
残っているのは二チーム。レインたちと、正面の四人。
先に仕掛けてきたのは相手だった。
「来るぞ」
ラグの声と同時に前衛が踏み込む。ユークと正面からぶつかる。金属音。
横から二人目が差し込む。無駄がない。連動している。
「右、二枚!」
後衛が詠唱に入る。
「『エアスラッシュ』」
圧縮された風刃が斜めから走る。回避方向を制限する軌道。
「『ウィンドランス』」
直線の風圧が重なる。避けた先に届く位置。完全に連動している。
「読まれてるな」
クラウスが陣を展開するが、相手はわずかに軌道を変えて陣の外へ出る。
ユークが受ける。押される。逃げ場が削られる。
(……このままじゃ押し切られる)
レインは踏み出す。視線を動かす。相手ではなく、その"間"。四人の動きの繋がり。タイミング。流れ。
(……ここ)
手を上げる。何もない空間へ。相手と相手の間に。触れるように。押す。
連動がずれた。
前衛の踏み込みがわずかに早い。後ろの支援が遅れる。重なるはずのタイミングが噛み合わない。
「っ――?」
相手の目が揺れる。一瞬の空白。ユークが踏み込む。防御が間に合わない。一撃。結界が反応し、一人が弾かれる。
だが、終わらない。残り三。すぐに立て直してくる。
「……今の、何だ」
低い声。だが止まらない。今度は慎重に。
レインは同じように流れを捉える。
(……もう一回)
踏み込み。連動。組み上がる瞬間。
レインが動く。迷いがない。"間"に向けて。押す。
連動が外れる。今度は明確に。一人の動きが完全に浮く。支えがない。空白ができる。
「今だ!」
ユークが一気に詰める。ラグが横から押し込む。クラウスの陣が退路を潰す。囲まれる。連携が機能しない。個になる。
畳みかける。決まる。最後の一人も捕えて、試合終了。
ざわめきが上から落ちてくる。
「……今の、何だ?」「連携、崩れてなかったか?」「魔法じゃないよな……?」
評価が揺れる。
クラウスがゆっくりと口を開く。
「……構造が、ずれている」
小さく。だが、はっきりと。
イリスが無言で見ていた。視線は外さない。ただ観測している。わずかに眉が寄る。理解しようとして、届かない。
レインはただ一つ。戦闘が終わったことだけを認識していた。
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