第34話 予選――混戦の開始
実技場の空気は、明らかに昨日までと違っていた。
観客席が埋まっている。中央の区画は簡易的な壁と段差で区切られ、視界も動線も制限される。
その中に、四つのチームが配置されていた。
「……四チーム同時、か」
ユークが小さく息を吐く。
「距離は悪くない。どこも一発で届く」
ラグが目を細める。
「開始直後に動くな。先にぶつかる」
クラウスが言う。
教師が手を上げる。ざわめきが落ちる。
「――開始」
同時に、動きが弾けた。
右側のチームが踏み込む。正面で衝突。金属音。魔力の弾ける音。
「来るぞ」
ラグの声。左側が動いた。こちらへ。
「前出る」
ユークが踏み込む。クラウスが一歩下がり、足元に簡易陣を展開する。
レインは一拍遅れて動く。ユークの軌道に入る。ずれる。ユークの一撃が先に入る。繋がらない。
「遅い」
クラウスの声。だが止まらない。相手が後退する。別のチームと交錯する。乱戦。
飛来する魔法が来る。別のチームからだ。
レインは前に出た。魔法の軌道を見る。当たる位置を捉える。手を上げる。軌道に、かざす。
押す。
魔法の進行がずれた。本来の軌道から外れ、横を抜ける。後方の壁に当たる。
「……今の、何だ?」
短い声。だが戦闘は続く。
時間が流れ、一チームが脱落する。残りは三チームに絞られた。
「……来る」
ラグの声が低い。二方向。同時に。
ユークが前に出る。レインが踏み込んでくる相手を見る。距離。当たる位置。避けきれない。
手をかざす。目の前の空間へ。押す。
相手の踏み込みがずれた。足が空を切る。重心が流れる。体勢が崩れる。
「っ――?」
ユークが叩く。ラグが抑える。クラウスの陣が足を止める。結界が反応し、弾かれる。
(……あと一つ)
残りは二チーム。自分たちと、もう一組。
流れは、こちらに寄っている。
レインは何も言わない。ただ前を見る。次に来る動きだけを、捉えている。




