第37話 試行――掴みかけた手応え
大会本戦の区画。
観客のざわめきは前の試合より一段近い。
「……来てるな」
ユークが小さく言う。見られている。試されている。
向かいに立つ四人。構えは悪くない。隙も少ない。
(……さっきほどじゃない)
レインは一目で判断する。個は強い。だが繋がっていない。
「やれる」
ラグが短く言う。クラウスは無言で頷く。
「開始」
相手が動く。前衛が二人、同時に踏み込む。完全には揃っていない。
「前出る!」
ユークが迎え撃つ。横から魔法が来る。
「『フレイムバレット』」
レインが前に出る。火弾の進行線に手を上げる。触れるように。押す。一発目がわずかに逸れた。ユークの肩を外れる。
だが二発目はそのまま来る。ユークが受けて衝撃。
(……一回だけか。まだ安定しない)
次。前衛が振り抜く。ラグが割って入る。もう一人が踏み込む。
「左!」
ラグの声。レインが動く。踏み込んでくる位置。当たる線。その少し前に手をかざす。押す。
足の位置がずれた。踏み込みが浅くなる。剣先が届かない。
「っ――?」
その一瞬にユークが踏み込む。一撃で崩す。ラグが横から押し込む。クラウスの陣が足を絡める。結界が反応し、一人が弾かれる。
(……二回。成功している。でも毎回じゃない)
残り三。後衛が詠唱に入る。
「『ロックランス』」「『エアスラッシュ』」
同時に来る。
(……両方は無理だ)
風刃一点に絞る。手をかざす。押す。軌道が逸れる。だが岩槍はそのまま来る。
「下!」
ラグの声。レインが跳ぶ。靴底をかすめる。着地。体勢を立て直す。
(……まだ足りない。同時処理できない。でも使えている)
「押してるな」
クラウスの声が落ちる。「再現してる」
相手が三方向から来る。連携ではない。数で来る。
(……合わせるな。自分で切る)
一歩前に出る。踏み込んでくる一人。軌道に手をかざす。押す。位置が完全にずれる。空振る。体勢が崩れる。
ユークが叩く。ラグが抑える。クラウスの陣が足を止める。結界が弾く。二人目脱落。
残り二。相手の動きがわずかに鈍る。警戒。理解できないものへの距離。
「……なんだ、今の」
また詠唱。数で押す。一発押す。逸らす。二発目が肩にかすめる。
「……ちっ」
(全部は要らない。必要なところだけ通せばいい)
前に出る。相手が引く。間が空く。その"間"に入る。手をかざす。押す。足が止まる。動きが遅れる。
ユークが踏み込む。迷いがない。決まる。ラグが最後の一人を詰める。クラウスの陣が逃げ場を潰す。終わる。
ざわめきが広がる。
「さっきより、やってるな」「いや、今のは見えたぞ」「でも、なんであそこでずれる?」
ユークが肩を回す。「さっきよりやりやすかったな」
クラウスはレインを見る。「回数が増えている。だが、同時処理はできていない」
「分かってる」
視線は次の区画へ。さっき見たチーム。崩れなかった連携。
(……あれに通るか)
まだ分からない。でも少しだけ、手応えはあった。




