表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無属性と判定された俺、実は世界の理から外れた【例外】でした。〜攻撃が当たらない上に魔法陣すら掴める俺が、聖騎士を圧倒する  作者: 真波 蓮


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

107/109

第107話 合理の牢獄――泥臭い抵抗


 完璧な殺戮の陣形だった。


 岩壁に囲まれた巨大な闘技場の中、実体を持った幻影兵たちが一糸乱れぬ連携で槍を突き出してくる。


「厄介極まりないな。幻影ゆえに同士討ちの恐れがなく、全兵士が単一の思考で動いている。理屈の上では、陣形に死角が存在しない」


 クラウスが手帳を広げる間もなく、迫り来る敵兵の足元へ水の上級魔法『タイダルストリーム』を放つ。


 激流が前列の兵士たちを押し流す。だが、空いた穴を埋めるように、後列の兵士が機械的な正確さで即座に踏み込んできた。


「右斜め前方から十! 上空からも来ます!」


 ミレアの探知が、土塊の兵士たちの軌道をコンマ数秒早く読み取り、叫ぶ。


「了解だ!」


 その警告に合わせ、ラグが槍を振るい、風の魔法『エアカッター』で上空からの奇襲を叩き落とす。


 同時に、地上ではユークの片手剣と、ディオルの大剣が唸りを上げていた。


「押し込まれるな! 陣形を保て!」


 元王剣の重い一撃が、幻影兵を三体まとめて粉砕する。


 そこに、雷を纏ったアルトがオリジナル魔法『スパークコンプレッション』の連撃を叩き込み、分厚い岩の盾ごと敵陣を抉り開けた。


「ルクス、頼む!」


「ええ、任せてください」


 アルトがこじ開けた一瞬の隙。


 そこへ、ルクスが完璧な踏み込みで滑り込む。光の魔力を纏わせた白銀の刃が閃き、瞬く間に十体以上の幻影兵を両断した。


 さらに、死角へ回り込んでいたイリスが、崩れた陣形の隙間から短剣を振るう。


 前衛の突破力、遊撃の機動力、そして索敵。反逆者たちの連携もまた、極めて高い次元で完成されていた。


「展開、『リカバリーフロウ』。皆さんに光の加護を」


 リュシアが絶え間なく光属性の回復魔法を展開し、前衛たちの疲労と微かな傷を瞬時に癒やしていく。


 戦線は維持されている。


 だが、カインが苛立たしげに舌打ちをした。


「クソが、キリがねぇぞ。俺の能力で端から術式を無効化して消し飛ばしてるが、あいつ、俺が見るより早く新しい兵士を生成しやがる!」


 倒しても、倒しても、岩壁から新たな幻影兵が無尽蔵に這い出してくる。


 ジリ貧だった。一行の泥臭い抵抗は、少しずつ、だが確実に削り取られていた。


 高く隆起した岩柱の上。


 盤上の支配者たるレオニスは、冷徹な瞳でその光景を見下ろしていた。


「個々の戦闘力は申し分ない。だが、その程度の演算は済んでいる」


 レオニスが、無慈悲に魔器を発動させる。


「例外の少年が足を止めた時点で、勝敗は決している。チェックメイトだ。イレギュラーは、合理の砂に沈め」


 土属性の上級魔法、『サンドプレッシャー』。


 重低音が響き渡り、闘技場を形成していた巨大な四方の岩壁が、内側へ向かって急激に圧縮を始めた。


「壁が、迫ってくる……!」


 ユークが声を上げる。


 ただでさえ密集している幻影兵の群れに加え、空間そのものが押し潰されようとしていた。


 逃げ場はない。回避するスペースすらも、物理的に削り取られていく。


「これも計算通りってわけか。性格悪いねえ、あの副団長様は」


 ラグが額の汗を拭いながら、乾いた笑いを漏らす。


 四方から迫る分厚い岩壁。


 そして、逃げ場を失った一行に向けて、数百の幻影兵が一斉に長槍を突き出す。


 回避も、防御も不可能な、完全なる死の圧縮。


 その絶対的な絶望の只中で。


 これまで足を止め、ただ盤面を眺めていたレインが、面倒くさそうに首を鳴らした。


「おい」


 気怠げな声が、軋む岩の音を縫って響く。


「お前、俺が全部ズラす前提で計算組んだだろ」


 極限まで圧縮された空間で、例外の瞳が冷たく細められた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ