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無属性と判定された俺、実は世界の理から外れた【例外】でした。〜攻撃が当たらない上に魔法陣すら掴める俺が、聖騎士を圧倒する  作者: 真波 蓮


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第106話 盤上の支配者――死角なき包囲網


 大結晶の消滅から数日。


 王都へと続く平野部を、一行は駆けていた。


 草を揺らす風の音が、唐突に止んだ。


 ラグが歩みを止め、愛用の槍を構える。


「来るぞ。下だ」


 その警告と同時だった。


 大地がうめき声を上げ、鼓膜を圧迫する重低音と共に周囲の地面が急激に隆起する。


「展開、『ガイアフォートレス』」


 上空から降ってきた冷徹な声と共に、巨大な岩の壁が四方を完全に包み込んだ。


 一瞬にして、平野は四方を絶壁に囲まれた、巨大な闘技場へと変貌する。


「待ち伏せか」


 ディオルが忌々しげに頭上を睨む。


 隆起した岩柱の頂。そこに、一人の男が立っていた。


 一切の感情を排した、氷のような眼差し。


 騎士団副団長、統槍のレオニス。


 国家の現場支配者が、冷たい眼差しで反逆者たちを見下ろしていた。


「特級異能者と言えど、所詮は演算可能な駒に過ぎない」


 レオニスが手にした魔器を掲げる。


 その矛先から、歪な魔力が空間に波紋を広げた。


 何もない空間が揺らぎ、土塊が人の形を成していく。


 実体を持つ無数の幻影兵。それが、岩壁に囲まれた闘技場を埋め尽くすように次々と生成された。


「幻影兵の創造。一匹一匹が実体を持っている上、恐怖も痛覚も存在しない」


 クラウスが眼鏡を押し上げ、絶望的な分析を下す。


 数百に及ぶ幻影兵たちは、まるで一つの生き物のように一糸乱れぬ正確な陣形を組んだ。


「制圧しろ」


 レオニスの短い命令。


 それと同時に、最前列の幻影兵たちが一斉に長槍を突き出し、レインへと襲いかかる。


「面倒くせぇな」


 レインは気怠げに首を鳴らし、迫り来る無数の刃に向けて歩みを進める。


 槍の切っ先がレインの喉元に迫る。


 だが、刃は彼に触れることはない。


 レインの瞳が対象を認識し、その関係性に干渉する。


 軌道がズレる。


 必殺の刺突は、彼をすり抜けるように明後日の方向へと逸れていった。


「ほう」


 岩柱の上で、レオニスが目を細めた。


「これが例外か。現象としての防御ではなく、結果そのものを書き換える力」


 レインはそのまま歩みを止めず、幻影兵の群れの中へと足を踏み入れていく。


 放たれる刺突、斬撃。そのすべてが、レインの体をすり抜けるかのように軌道を逸らされる。


「だが、どうする」


 レオニスの表情に焦りは一切なかった。


 彼の頭脳は、レインが攻撃をズラす法則性を、瞬時に演算し始めていた。


 ズラせるのは、あくまで認識し、理解している対象のみ。


 そして、ズラした先には必ず別の空間が存在する。


「陣形変更。対象の回避法則を上書きしろ」


 レオニスの指示を受け、幻影兵たちの動きが劇的に変化した。


 ただ闇雲に攻撃するのではない。


 レインが軌道をズラすであろう位置を予測し、そのズラした先に、別の幻影兵が刃を置く。


 一撃目をズラす。だが、その逸れた先に、すでに次の槍が待ち構えている。


「っ……」


 レインの動きが、僅かに鈍った。


 三百六十度、すべての方向から計算し尽くされた飽和攻撃。


 ズラした先にも、またズラした先にも、致死の刃が緻密に配置されている。


「回避も干渉も不可能な、完全なる包囲網だ」


 レオニスが冷酷に宣告する。


「お前の理不尽は、私の合理の中ではすでに演算済みだ」


 一切の死角がない、合理の牢獄。


 盤上の支配者が作り出した完璧な詰み盤面の中で、例外の少年は足を止めることを余儀なくされた。

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