第76話 かつて憧れだった人とデート!!ダブルだけど
俺の就職先も、半ば強引ではあるが無事に決まり
進路という大きな悩みも消えた一月末の土曜日。
今、俺はというと…?
「わぁ〜……! 彫刻の美術館! 行きたかったんだ……!」
「僕もここに来るのは初めてだね。今日は誘ってくれてありがとう、神宮寺くん」
「そりゃ何よりだ」
「おわぁ……これが……美術館……!」
箱根にいまーす
そして有名らしい美術館にいます。
周囲には巨大な石像や金属彫刻が並び、まるで異世界の公園みたいな光景が広がっていた。
そう……なんと今回!
白石さん&久我さん…そして俺&翔の
四人での温泉旅行。
いわゆるダブルデートである!
うおおおおお……!!
ダブルデート!!去年までは都市伝説だったやつ!!
しかも相手が白石さんと久我さん!!畏れ多い!!
「行くか、裕香」
「お、おう……!」
翔に促されながら館内へ入る。
しかし…問題が一つあった。
美術館
人生初である……
一体…何を観ればいいんだ?
「ここにはウンベルト・ボッチオーニの作品もあるらしいね」
久我さんがパンフレットを見ながら呟く。
「作家さん?」
「そうそう。未来派の芸術家だよ。彫刻でも有名なんだ」
「へぇ〜。詳しいのね、奏くん。私、ルネサンス辺りしか分からないなぁ」
「いやいや、それでも十分詳しいよ。分からない事あったら言って。解説するから」
「ふふっ。頼りになるわ、奏くん」
そのまま二人は自然と展示の方へ歩いていく。
ウ…ウンベト…ボッチ…??孤独の作家さんなのか…?
まずい…!!
これ前提知識とかいるやつか……?
俺は小声で翔に聞いた。
「な、なぁ……翔」
「ん?」
「美術館って……何する所なんだ?どうやって観ればいいんだ?」
「ん〜、ぶっちゃけ直感でいいぞ」
「ええ!?直感!?いやいや! もっとこう……ピカソとかダ・ヴィンチとかモーツァルトとか……!」
「モーツァルトは音楽家だ、そんな気張るな」
「まぁ、強いて言うなら作品ってのは、その時代背景とか作者の考え方とかが反映されてる」
「ほうほう…」
「それを見て何を感じるか」
「なるほど…」
「あと美術館そのものの表現もあるな。作品の配置、導線
、建物のデザイン、センス…全部込みで作品みたいなもんだ」
「へぇぇ……」
なるほど…なるほど………
ひっっっとつも…分からん。
「なんて言うけどな結局、美術なんて自己満足だ」
「え?」
「価値なんて時期ですぐ変わる、死んだり引退したりと
一円になることもあれば数億になることもある。
そんな不確定な世界だ」
「は、はぁ……トレカみたいだな…」
「だから思ったまま楽しめ」
「えぇ……そんな適当でいいのか……?」
「変に通られるより健全だ。ほら、この作品の感想いってみろ」
そう言いながら翔は目の前の巨大な石像を指差した。
そこにあったのは、なんというか……
力士みたいにガッシリした身体。
でも胸があるから女性……?
服なのか鎧なのか分からない白い網目模様
しかも赤や黄色が混ざったカラフル仕様。
「う、うーん……耐久高そう……?あとアーマー持ってそう」
「ぶっ……!くくくっ……なるほどな……!面白い視点だ」
「い、いや!俺は感じたまま言っただけだぞ!?」
「それでいいんだよ。感じたままで」
そして翔は改めて作品を見上げた。
「そうだな……弱攻撃の発生は遅そうだ」
「た、確かに……!」
こんな見方でいいのか……?
美術館って
それから俺と翔は
完全に独自の鑑賞スタイルを確立していった。
球体がひび割れたような巨大オブジェを見れば
「おぉ……これはラスボスっぽいぞ」
「確かにな、第二形態辺りか?」
また別の場所。
地面から巨大な手だけが突き出している作品。
「ワイバーンクエストにこんな敵いたなぁ」
「いたな『仲間を呼ぶ』を使ってくるぞ」
細長いうさぎが二匹向かい合っている作品の前。
「同キャラ対決だ!!これ絶対プレイヤーの腕を試されるやつ!」
「発生早そうだな、コンボも繋げやすそうだ」
芸術作品なのに芸術の話をしていなかったが…
多分…これも芸術なんだろう!翔が言ってるから間違いない…!うん!
本館の中でもやることは同じだった。
「こいつの必殺技なんだろうな」
「裏設定重そう」
「ラスダン前で仲間になるタイプだな」
作品を見ては妄想し勝手に設定を作り
ゲームキャラ化する…!
芸術家本人が聞いたら頭を抱えるような鑑賞方法だったと思うが…それはごめんなさい…
でも、楽しかった
凄く楽しかった。
正直、最初はもっと堅苦しい場所だと思っていた
知識が必要で教養が必要で
俺みたいな人間には縁のない場所だと。
だけど。
翔は「好きに見ろ」と…そう言ってくれた。
だから俺も気楽に楽しめた。
ーーーー
美術館も堪能し、いざ旅館へ…!
「え……えぇ……ここ……なのかい? 旅館って……」
久我さんが予想通り困惑した表情で建物を見上げている。
それもそのはず
目の前にあるのは、山の中に静かに佇む巨大な庭園と建物。
うーむ、きっとVIPとか星5とかそんな感じ
神宮寺家の旅館だし、もう俺は驚かなくなった。
修学旅行で泊まった旅館と比べても規模が違う。
「い、いやぁ……驚いたな……」
「ふふっ翔くんや真桜ちゃんと遊ぶと、たまにこういう事あるの、ね?裕香さん」
「あはは……そうですね……神宮寺家と遊ぶと、何もかも規格外になるというか……」
俺がこの台詞を言う側になるなんてな……
二組は別れ、それぞれ、別の部屋へ
「おおぉ……やっぱりすげぇ…!!」
洋室と和室が見事に合わさった広いひろーいお部屋!
が、無駄がなくシンプルゆえ神々しい感じがより際立つ!
そして…部屋付き露天風呂!さいこー!
荷物を整理し、夕食会場へ向かう。
温泉旅行の晩御飯といえば……すき焼き!!
黒毛和牛だぞ!!!
「おおぉぉ…うまいぃぃ…!…!」
食事も始まり…皆美術館の感想タイムに…
まずは久我さんが話し始める。
「未来派は個人的には好きなんだけど
どうしても戦争を賛美する部分もあって複雑なんだよね」
「技術革新への憧れと思想が強く出てるからね」
白石さんも頷く。
う…うーん、さっきのボッチ作家さんの…話かな…?
未来派…未来派??
えーっと…猫型ロボットの…アレみたいなやつ…か?
えーん!わからないよ〜!助けて翔えもん!!
「し……翔……」
「ん?」
「未来派って……?」
小声で尋ねる。
「あー、速度とか機械とかを表現した芸術だ」
「機械………そ、速度?」
「スピード感の表現だ。まぁ久我よ、もっと面白い話しようぜ?若者らしく」
「あ、ごめん…!つい語りたくなってしまって、はは」
そして久我さんはこちらを見る。
「二人はどうだった?美術館。
裕香さんは初めてだったよね?」
「へっ!?あ……うーんと……た、楽しかったです……!」
「それは良かった!どんな視点で見てたんだい?」
し…視点!?ど、どうしよう!?
まさかゲームのキャラに例えてましたとか…失礼にならいか!??ええぇ…えと…えーっと…ここは…正直に…
俺が答える前に翔が
「もしこの作品がゲームだったら…そんな感じだな
やってみたら結構面白いぞ?」
「ゲ、ゲーム!?なるほど……?つまり?」
「例えばお前なら未来派の作品を
曲にするならどう表現するかそういう視点だ」
「おお……!確かに……それは面白いかもしれない…!」
「なるほど……なるほど……これは…考案の甲斐がある…!」
な、納得した!?それでいいの!?久我さん!!
し…しかし…流石翔
こんなふざけた観賞を纏めてくれる…とは…
む…!俺も流れに乗らなければ!
「そ、そうですね!例えば……
反社会的な作品だったら……
現代の歯車になってたまるか!みたいな曲とか……!
ちょっと前に流行った『うるせーな!』とかです…!」
「おお…!なるほどなるほど!!わかって来たぞ!裕香さん!
ありがとう!」
なんか、久我さんのスイッチが入ったみたい…
「へぇ…そんな着目点…裕香さん、面白い発想するのね」
「い…いやぁ、ついオタク癖が…」
「ふふ…そうね…。創作の参考になりそう!」
なんとも奇妙で高尚な談義に花を咲かせた楽しい夕食も終わり
それぞれの部屋へ戻る前、
俺と翔は廊下にある自動販売機でジュースを買っていた。
「あ〜、不思議と盛り上がったなぁ……。白石さんと久我さんって、意外とオタク気質な所あるのかな……?」
「〇〇派が〜なんて言うあたりオタク要素強めだ。
いいじゃねぇか学生らしく自分たちの好きな話で盛り上がってて」
「お……お前も、一応学生だろ……」
翔の妙に貫禄のあるセリフにぼやいていると。
「あ、裕香さん!」
「ん……? あ、白石さん」
振り返ると、着替えの浴衣を抱えた白石さんが小走りでこちらへやって来た。
「裕香さん、良かったら……この後、大浴場に一緒にお風呂……どうかな……?」
「え……ええ!? い……一緒に!?」
「うん……! ここのお風呂、露天からの眺めがとっても素敵みたいだから……! 是非、裕香さんと一緒に入りたいなって」
「し……白石さん……と……一緒に……大浴場……」
ななな、何だってぇぇぇ!?
男の頃の俺……いや、今の女の俺からしても、これだけは断言できる。
あの、白石麗華さんに……『一緒にお風呂に入ろう』と誘われるなんて……!
これは、SSRの超絶イベントなのでは!!?
「お……お風呂……白石さんと……裸の付き合い……」
こんな神のようなお誘いを受けてしまっていいのか……?
期待と戸惑いで頭がパニックになりかけ、俺はふと後ろを振り向いた。
そこには……
「………え……へ……? ……風呂ぉ……?? え……ええ、裕香……? ん……?んん?」
うわわあああああ!! し……翔の顔が……!!
悲しみと、絶望と、恐怖と、少しの怒り……いや、なんかもう、この世のすべての『負の感情』をかき集めて煮詰めたような、凄まじい絶望顔になっている!!めちゃくちゃヤバい顔だ!!
こ……これは……まずい…!
うーん……そうだよな…確かに、元男だったら、
同性も警戒対象…だよな
「あ……あの……白石さん……」
「ん?」
「誘ってくれて、すっごく嬉しいんだけど……ごめんなさい……。私……翔と、一緒に入りたい……かな……って……」
「うぐっ!!」
俺の後ろから、の変な呻き声が聞こえた気がした…
「……ふふっ……! わかったわ! 折角の部屋露天だものね。それじゃ、また明日ね!」
(あわわわわわ……!!彼氏と一緒に入りたいって!! じ……純愛ゆかっち……尊い!! 尊すぎる!!可愛い!!あ〜推せる、!)
(う…うう…でも、ちょっと翔くんが羨ましい…あんな裕香さんにあんな…セリフ言われるなんて…)
ということで
俺と翔は、大浴場には行かず、部屋の客室露天風呂へ一緒に入る事にした。
脱衣スペース。
「……本当によかったのか……? 白石だぞ……? お前の……あ……憧れの……」
服を脱ぎながら、翔がまだ少し信じられないといった様子で、探るように聞いてくる。
「あ……いや……まぁ……男の頃の俺なら……死んでも食いつく、とんでもない神イベントのお誘いだったと思うけど……」
俺は、恥ずかしさを誤魔化すように目を伏せた。
「ぶっちゃけ……元が元だけに…女性と混浴は…翔に悪いし……」
「ははっ!かつての憧れに勝ったのか、俺は……
それは……ありがたいことだ」
(いいいいいっよっしゃぁぉぉぉぉぉぉぉ!!! ザマァみろ!! 白石ぃぃぃ!! 見たか?! 俺の……俺の裕香を!!
はは!! 完全勝利だ!! 奪ってやったぞ……どうだ……! これでもう、俺を邪魔するやつはいねぇ!……はぁ、長かったわ)
ガラス戸を開けて外に出ると、やはり部屋の備え付けにしては……なんて……豪華なんだ……
「あわわ……! 広い……! しかも、景色が……!」
岩造りの立派な浴槽の向こうには、ライトアップされた冬の木々と、箱根の澄んだ星空が広がっている。
俺は、妙な恥ずかしさにバスタオルを身体の前にギュッと抱きしめながら、その壮大な光景を見つめていた。
……一方の翔は、というと
「おいおい、なんでそんなに必死に隠してんだ……? もう何度も、隅々まで知ってる恋人同士だろ?」
わぁぁぁ……
当然のように前を隠すこともなく、堂々と現れた翔の……立派な筋肉と、彫刻のようなスタイル……浴槽が美術館へ変わった。
そして……その……まぁ、なんていうか……相変わらずの、立派に整ったマグナム……安全装置の状態だけど。
「あ……いや……! 男とお風呂に入るって……なんか、急に恥ずかしくなって……!!」
俺は顔から火を噴きそうになりながら、視線をあちこちに彷徨わせた。
「お……おぉ……そ……そうか……まぁ、お前が……それでいいんなら……無理にとは言わないが……」
チャプン……
あぁぁぁ……気持ちいいぃぃ……
冷えた身体に、箱根の極上の湯がじんわりと染み渡っていく。
温泉って、やっぱり素晴らしい……!
「ふぅ……」
肩まで浸かって俺が至福の吐息を漏らしていると、
ギュッ……
「ほぇ……!? ……し……翔……!?」
背後から、不意に強めの力で抱きしめられた。
「こういう時くらい、いいだろ? ほら、俺が直々にハグしてやってんだよ」
「ひゃっ……!」
い……いつの間にか、死守していた俺のバスタオルが剥ぎ取られ……湯船の中で、み、みみみ密着……! おわわわわ……!
そ、そそそ、それに……背中から、俺のお尻に……安全装置を外した強烈に存在感を主張する『硬いモノ』が、当ててる!! 当てられてる!!
『当ててる』の男バージョンがあるのかよ!! ギンギンじゃねぇか!!
「……どうだ? 立派だろ……?」
耳元で、わざとらしく低い、色気のある声で囁かれる
普通ならここで恥ずかしさで爆発するところだが……
「………ふふっ」
「……ん?」
「あ……いや……やっぱり兄妹だなぁ、似てるなって……。真桜さんも、前に一緒にお風呂入った時、背中からくっついて全く同じことしてたから……」
「………………」
「…………ゴフゥッ!!」
し……翔が、血を吐いたぁぁぁ!!?
「だ……大丈夫か!? 翔!! どうしたんだ急に!!」
「う……い……いや、だ……大丈夫だ……。不意打ちで、思わぬ特大ダメージを食らっただけだ……。すまん裕香……できれば、その話はもう二度と、俺の前で言わないでくれ……」
「?……? あ、わ……わかった……。気をつけるよ……?」
心底ダメージを負った顔で項垂れる翔に、俺は首を傾げながら頷いた。
(ぐぎぎぎ……!! くそ……あの愚妹め……!! 俺に一生消えぬ呪いをかけやがって!! くそったれぇぇ!!)
(昔、元カノどもが『翔くんの初めては私が全部奪いたかった〜!』なんてくだらんことを言ってたが……い……今なら、その気持ちが痛いほど凄くわかる……!! こんな、腸が煮えくり返るような気持ちになるのか……!! くそ……くそぉ!! 俺よりも前に、俺の裕香と裸でイチャイチャしやがって……!!)
「………ずりぃわ……ほんと」
ポツリと、翔が恨めしそうに呟いた。
「……へ……?」
す、すると……再び俺を背後から抱きしめた翔の手が、お湯の中を滑り……俺の……胸……お腹……そして、下腹部へと……熱を帯びた指先で、撫でるように這い回る……!?
「へ……!? ちょ……! 翔……ッ! ふ、風呂場だぞ!!」
「誰も見てねぇよ。……こういうシチュエーション……よくねぇか?」
翔の少し拗ねたような、それでいて有無を言わせない雄の吐息が、うなじにかかる。
「よ、よよ……よく……な!! ……いことも……ない、けど……っ」
「けど……?」
セリフと、手つきが俺の頭を刺激し…
雌を呼び覚ましてくる…
温泉の熱さと、翔と密着している強烈な興奮も相まって……俺の体温は、もうとっくに限界の沸点に到達しそうだった。
「で……できれば……部屋で……熱くて…」
消え入りそうな声で俺がそう懇願すると、背後の翔の動きがピタリと止まり……次の瞬間、ザバァッ! とお湯を割って立ち上がった。
ヒョイ…!
俺の身体を抱き上げる。
「へ…ほ、ほんとにするの!?え?…え?!」
「のぼせる前にな。……行くぞ」
「ひ、ひぃぃ…」
――――
「ん……んっ……そこ……っ♡」
「……ここか?」
翔の……ソレが……俺の、とてもいいところを的確についてくる。
恋人になってから、まだそんなに回数を重ねているわけでもないのに……うますぎる。
「翔……すごい、うまいん……だな……んっ……!」
「そりゃ、これくらいはな。経験値が違う」
「むぅ……っ!そうやって……他の女抱いた自慢しやがって……!」
快感の中でポロリとこぼれた嫉妬に、翔は愛おしそうに低く笑った。
「ははっ! すっかり『女』の顔に染まってるな。……心配すんな、お前で最後だよ」
「だって、仕方ない……だろ……? んっ……約束、だぞ……?」
風呂上がりの濡れた身体を静かに密着させ、肌と肌の熱で互いの感度と興奮を高め合っていき…さらなる段階へと…
少し小休憩のキス
チュッ……チュッ……パッ……
「ぷはっ……翔……キス、いいのか……? 俺……さっきまで……その……翔のを…汚くないか?…」
「俺は全く構わないが……いや、まさかお前の方からいくとは思わなかったぞ。……どうだった? 抵抗感とか、なかったのか?」
「いや……不思議と……する分には平気だった。う……うーん……
グニグニしてて……ちょっと……しょっぱかった……かな」
「うぉっ……」
(くっ……ヤバい……!! そんな無自覚にエロいセリフ……俺の理性がもたねぇ……!! 今までどんな女を相手にしても冷静でいられたのに……コイツ……! 天然の魔性め……!!)
再び、肌を重ね、熱を分け合う俺たち
ふと、俺の脳裏にゲスい疑問がよぎった。
「なぁ、翔……今頃、白石さん達も……別の部屋で、してるのかな……?」
「急に男子高校生みたいなこと言うな。
……まぁ、してるんじゃないか? 年頃のカップルだしな。……ちなみに、久我は夜は『受け』メインっぽいぞ」
「へぇ……! 白石さん攻めなんだ、意外……。
どんな感じなんだろ……静かに声出すのかな……?」
「さぁな。他人の夜の事情なんてどうでもいいだろ
そろそろ『女』に戻れ……裕香」
翔は少し呆れたように息を吐くと、余計なことを考える俺の気を引くように、手つきをより刺激的なものへと変えた。
「やっ……! も……もう……! んっ……あ……っ!」
「裕香……もっと欲しいか……?」
「うん……翔……欲しい……来て……っ♡」
快感の波に飲み込まれながら俺……いや、私は
愛する男の手によって完全に『女』にされ、静かに、甘い夜の底へと堕ちていった
ーーーー
一方……裕香が壁の向こうで勝手にあれこれ妄想していた、
もう一つの部屋。
久我と白石の客室。
この上品で教養あふれる二人は、さぞかし静かで穏やかな、大人の夜を過ごしているのだろう……と思いきや
「あっ……!♡ あっ! んんっ!♡ いい……! 奏くん……っ! 奏くんっ!」
「うっぐ……! すっご……! ボリュームが……っ」
薄暗い照明の中、ベッドの上。
仰向けになった久我の上にまたがり、主導権を握っていたのは、他でもない白石麗華だった。
学園では決して見せない、乱れた長い髪、火照った表情。
そして、裕香とは比べ物にならないほど豊満に実った『魅惑の脂肪』を激しく揺らしながら、普段のおしとやかな姿は完全に消え去り、そこには情熱のままに動く一人の「雌」がいた。
「ふふっ……奏くん……ここ……もっと、攻めて……♡」
「くっ……。ここまできたら……僕も、もう容赦しないよ……? 麗華……」
「やんっ……!♡ ……そうこなくっちゃ……!」
ついに雄としてのスイッチが入った久我の反撃に、白石はとろけるような歓喜の声を上げた。
こちらの二人もまた、若さと熱情を持て余した、最高に激しい年頃の夜を過ごしていたのだった。




