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第70話 冬休み初手のイベントが豪華過ぎる!!

12月23日、火曜日


「それでは、節度をもった冬休みを送ってください」


担任の締めの一言と同時に

教室が一気に解放される。


今日から冬休み…!


そして

明日はクリスマスイブ、明後日はクリスマス。


クリスマスは本来、降誕祭と言ってイエス・キリストの誕生を祝うという日なのだ。

確か、向こうの国では家族や親戚が集まって祝う…だとか。


日本は、何かとイベントに盛り上がってる訳だが…


「このあと、まーくんと遊ぶの〜!」


「よっしゃ!!クリスマスまでに彼女間に合ったわ!!」


「もしもし?理沙?校門前集合」


右も左手も、恋人ムーブやアピール


そんな、浮かれた人達に

去年、俺はリア充滅べとか言ってたな……


でも今年は……俺も滅ぼされる側にいる

人生、色々あるもんだな…

……いやいや、よくない!


「リア充とか非リアとか……そんな括りで考えるの」

「日常楽しんでるやつ、全員リア充だ」


クラスメイトのリア充の皆さんよ……どうか楽しんでおくれ……

そんなことを考えながら、いつものように翔と帰る

……予定だったが。


「家業が忙しいから、明日夕方になるかも」


とのこと。

高校生にしては働き過ぎだと思うが

お疲れ様です、ほんとに。


「ゆかっち〜!一緒に帰ろ〜!」


「あ、うん!」


いつもの真桜さん声に振り返る。

こういう“いつも通り”が、なんだかんだ一番ありがたい。

恵まれてるな、俺


――そして帰り道。


「私、明日からフライトだからね〜!フランス!」



「え、明日フランス!?もう!?」


「あはは、そんな大層なもんじゃないよ〜。向こうに知り合いいるし、よく行ってるし!ゆかっちも来る?」


「ええ!?いや、私は……予定あるし……そもそもパスポートないし……!」


「ふーん…予定か…!楽しみ??」


「へぇ!?あ、はい!楽しみです!」


「ははは!動揺してるよ、ゆかっち!」


「えぇ…だっだって…」


「私もクリスマスゆかっちと一緒に過ごしたかったんだけどなぁ〜、まぁ今回はもう一緒に行く人いるからまたみんなでフランスに行こっか!」


「ひぇぇぇ…」


海外旅行を、デパート感覚で行ってるのかな…?この人は。


そんなこんな手を振って別れ、

そして、帰宅。


「ふぅ……」


ドアを閉めて、靴を脱いで

部屋の静けさに戻る。


さっきまでの真桜さんの賑やかさが、少し淋しくなる。


「……明日、クリスマスイブか……」



ベッドに倒れ込み、天井をぼーっと見つめながら、力を抜く。


「…………実感、わかないなぁ」


ぽつり、と零れる。

こうして、ふとした瞬間に冷静になることがある。


裕香になって

翔と付き合って

ちゃんと“年相応”っぽいドキドキなんてして…



最初は――白石さん、なんて思ってた

でも、あれは今思えば恋愛なんて呼べるほどのものじゃない

もっとこう……ぼんやりしてて、曖昧で

正直……どうせ無理だろうな、って

そんなこと、どこかで思ってた。 


翔も似たようなものはずだったのに…

裕香として生きてる内に

本気で、尽くして…尽くされたいと願うようになってた。


「この18年間……ちゃんと俺の人生、なんだよな……」


男だった時間も

今の、この身体も

全部ひっくるめて――俺だ。


考えれば考えるほど、不思議で奇妙な人生だ…


ソワソワ…!


「うう……なんか落ち着かないな……!」


翔の事を考えてたらクリスマスの実感が近づいてきた…!


「……よし、明日の準備しよう。そうだ、買い物だ」


勢いで起き上がる。

こういう時は、動いた方がいい。


着替えて、外へ。

冷たい空気が、少しだけ頭をクリアにしてくれる。


「えっと……鶏もも肉、チーズ、レタス……

あ、スパイスもいるな……あ、ケーキの材料も……!」


気づけば、どんどん増えていく。


「……俺の手料理で、満足してくれるかな……」



――帰り道


「うおぉ……買いすぎた……!」


両手いっぱいの荷物。

地味に、いや普通に重い…!


「ケーキの材料、明日でもよかったか……?」


今さら気づき、思い出す

俺、今……非力なんだったと。


8ヶ月経っても、こういうとこで実感する。


不思議と、嫌じゃない

むしろ

この重さすら少しだけ、心地いい。


だって、頭の中には

俺の料理やケーキを食べて

「うまい」って笑う、翔の顔が浮かんでるか。

それだけで、足取りは軽くなる。


――帰宅


「あー……疲れた……」


荷物を置いて、その場にへたり込む。


「明日も色々あるんだよな…………クリスマスパーティーなんて、生まれて初めてだし」


未知すぎるイベント。

正解も、やり方も、わからないが、

だからこそ、全力でやる…そう決めていた。


工夫して、考えて

ちゃんと、楽しませたい。


ーーーー


翌日、昼。


「……とりあえず、ケーキからやるか…!」


昨日買ってきた材料でケーキから調理に入る。


3時間後


「ふぅ……まぁ、こんなとこかな……?」


ケーキを作り終えて、そっと冷蔵庫へ

ひと仕事終えた達成感と、

これから来る“本番”へのざわつきが、じわじわ混ざる。


「チキンは……来る直前でいいか……」


その時


ピコンッ…!


「……っ!」


反射的にスマホを見る………翔だ!!。


【やっぱり、18時にそっちになる。すまないな、折角のクリスマスイブだっていうのに】


「……そっか」


もう少し、早く来てくれたら…嬉しいのに…


「あ!……いやいやいや!翔が忙しいの、俺が一番知ってるだろ……!ここで拗ねるとか、違うだろ!俺のバカ!!」


翔の苦労を無下にするな…!俺!

誰のおかげでこんな充実した生活を送ってると思ってるんだ!


しかし…もしメンヘラなら

ここでキレたりふてたりしてる…だろうな…

共感出来てしまう当たり

俺もその気があると思うとちょっとゾッとする。


れ、恋愛って……怖いな……

だからこそ、ここは労わねば。


【お仕事お疲れ様!全然大丈夫!ゆっくりケーキとチキン作って待ってるね】


送信

「……よし」


ピコンッ…!


即返信来た…!!


【そんな気遣い出来るお前は、本当に恋人として優秀だ。ありがとうな】


「ふふふ…!優秀か…褒め上手め…!」


惚気に浸るが…一気に現実に引き戻される。


「って、いやいやいやいや!

あと数時間後に翔が来るんだけど!?!?」



「わわわわわ……!」


ワクワクとドキドキで

全部まとめて脳内パーティー開催中。 


「だ、大丈夫か……!?確認……!」


「ケーキ……よし!プレゼント……よし!チキンは一時間前から……!」


完璧…たぶん!



「……なんでこんな、人生の一大イベントみたいな感じになってんだ……?」


恋人が家に来るだけ

それだけ、のはずなのに。


ドクン。ドクン…!


「うぅ……胸が……落ち着かない……」


じっとしてるのが一番耐え難い…!


「……よし、シャワー浴びよう」



俺は急いでシャワーへ向かい温水を浴びる事にした。



「ふぅ……落ち着け……落ち着け……」


お湯を浴びながら、深呼吸…

少しはマシになる――はずだった。


濡れた自分と身体を見て

ふと、思い出す、白石さんの言葉。


『万が一……万が一ね……!裕香さんも女の子なんだから……お肌の手入れと……可愛い下着くらいは……』


「――――っっっっ!!!!」



「まままま待て待て待て……!!」


脳内が一気に別方向へ加速する。


「も、もしかして……俺……どうなるんだ……!?」


「い、一応……その…ゴムは俺も…準備は……したけど……!」



いやいやいやいや万が一だろ!?そうだよな!?


ととと、とりあえず!

カミソリで身体のムダ毛を整えて!

あと…いいい、一応、大事な所も…

なんか綺麗に見えたほうがいいとか…?


そんで保湿して!

やることやって!

無理やり平常心を取り戻……したかった!無理だった!


ーーリビング


「…………」


ドクン…!ドクン…!

あれ……心臓、さっきよりうるさくないかな……?

明らかに…バフがかかってる!


気づけば、家の中をぐるぐる

キッチンとリビングをうろちょろ。


「……あと、一時間前!?…あ!」


時計を見て、さらに焦る。


「チキン!チキン仕込まないと!!」


「……と、とりあえず……今は料理に集中……!」


それだけを頼りに、無理やり意識を引き戻す。




――そして


チキン料理も、無事完成。


「……う、うむ……我ながら、よくやったのでは……?」



正直、ああいう――

アニメでよく見る丸ごと七面鳥ドーン!みたいなのは無理だ。

作り方調べてもよく分からなかった。



「でも……俺なりに、頑張った……よな」



ちら、と時計を見る。

――17時55分。 


「ま、間に合ったぁぁぁ……!」


一気に力が抜ける

安堵……そして

じわじわと、別の感情がせり上がってくる。


「来るじゃん……あと5分で来るじゃん……!」


さっきまで料理に集中して誤魔化してた“それ”が、

容赦なく襲いかかってくる。


「わわわわわ……なんでだよ……!作り終わった途端これかよ……!」


「こ、恋人と初めてのクリスマスって、みんなこんな感じなのか……!?」


恋愛ゲームとか漫画みたいに。

さらっと迎えて、

自然に会話して、

余裕ある感じに…!


「無理だ、これぇ……」


現実、はそんな甘くないということか…


――残り、5分。

長い。

異様に長い。


翔とクリスマスで……しかもお泊まり……


「頼むから落ち着けぇ…!俺の煩悩!!彼氏が魅力的過ぎる!」


気づけばまた、

リビングとキッチンを往復。


そして――18時。


ピーンポーン…!


「――っ!!」


全身が跳ねる。


「き……来た……!」


モニターに映る、見慣れた姿

それなのに

今日は、全然違って見える。


「すまん!遅くなった!」


「あ……あ……う、うん!い、今開ける!」


声、ちょっと裏返った。


ガチャ


ドアを開ける。


「ふぅ……やっと終わった。待たせたな、裕香」


目の前に、翔。


あ、あれ?言葉が、出ない。

心臓の音だけが、やけに大きい。


「…?裕香?」


「……い、いらっしゃい!」


やっと、それだけ言えた。


緊張で頭が飛びそうな

俺の初めての“恋人とのクリスマスパーティー”

今、始まる…!!

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