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第53話 最近の女子高校生はどうも大人ばかり

真桜さんに誘われ、やってきたお泊まり会の会場。

そこは、俺の想像を遥かに超える場所だった。


す……すごすぎる……!


天井にはキラキラと輝く特大のシャンデリア。

部屋はなんと二部屋も繋がっており、広い!


バスルームを覗いて驚愕

室内風呂だけでなく、ライトアップされた露天風呂まで完備!?

おまけにサウナまでついている徹底ぶりだ。


極めつけは、巨大なテレビモニター

リモコン一つで本格的なご飯も、映えるスイーツも注文し放題。

おまけに最新の通信カラオケまでついている……!!


ホテルでカラオケ………なんだこの夢のような空間は……!


ホテル名は『エターニテッド』


名前まで無駄にオシャレでかっこいい。


こんな至れり尽くせりのホテルがあるなんて……知らなかった……!

めちゃくちゃ素敵な場所だ……!


ただ…

ただ一つ、大きな問題があった。

このホテル……。


「おー! すげぇラブホだー!!」


桐谷さんが、満面の笑みで叫んだ。


そう。

ここは、まごうことなき『ラブホテル』である。


「ラ……ラブホ……!?」


ラブホといえば、あれだ。

あの……終電を逃した男女が「仕方ないね」と言いながら行く場所!

下心丸出しの男が「どしたん? 話聞こか?」からの連れ込む場所!

有名人や不倫相手が、週刊誌に盗撮される決定的瞬間の場所!!


「なははは! なんだこれ、テンション上がってきたぞ!!」


「でしょでしょ! 私、一回『ラブホ女子会』ってやつ、やってみたかったんだよね〜!」


「真桜はラブホ行ったことないのか??」


「うん! 私、ずっと海外ばかりだったからさ。日本のこういう独特なカルチャー? 一回行ってみたかったの! ヒカはあるよね?」


「あるぞー! 剛とだけどな!

でも、ここまでゴージャスなのは初めてだ! なはは!」


と……イケイケ女子たちが、ひたすら楽しそうにはしゃいでいる。


ラ、ラブホ女子会……?? そんなパリピな文化があるのか!?

というか、そもそも高校生がラブホなんて言っていいのか……?

い……いいのかな……?


※ダメです。条例等で18歳未満の立ち入りは禁止されています。


こんな卑猥な空間、絶対にあとの二人が引いてるはず……!

クール女子の神崎さんと、清楚代表の白石さんが、こんな破廉恥な場所を許すはずが……!


俺は助けを求めるように、後ろを振り返った。

「へぇ……。これがラブホ。初めて来たけど、面白そうな所ね白石さんは、来たことあるの?」


「 いや、私は今の所、ラブホは利用しないかなぁ、今の所は必要ないかもだし」


「…………え?」


お……オイオイオイ……!!

白石さんと神崎さん……!!

何、普通に大人の会話してるんだ……!?

「利用しない」ってなに!?


俺……完全に、に置いてけぼりにされてる……!?


「しかし真桜、高校生だけでラブホは、実はいけないんだぞ? 補導案件だ!」


「知ってるよー! でも大丈夫、ここは神宮寺家の息がかかった施設だから! 今日は朝まで楽しむぞー!」


神宮寺家の息がかかったラブホってなんだよ…!


しかし……負けるな、俺。

ここでビビっていたら、ラブホの怪しい勢いに押し潰されそうだ……!

俺だって、このパリピ空間を楽しむんだ……!


「ゆかっち〜! ベッドめっちゃ大きいぞ!」


桐谷さんが、キングサイズ以上の円形ベッドでトランポリンのようにはねている…が…ここで何度もあんなこと…こんなこと…

いや、お、俺も……俺も楽しむぞ……!


「てぇいっ!」


ボフンッ!!


勢いよく飛び込む……!

うおおお! なんだこれ、雲みたいにふかふかだ!


「これが……ラブホ……」


なんというか……思ったより、その……「いやらしい熱気がこもった部屋」って感じがしない。


清潔感があって、本当にレジャー施設みたいだ。

遊園地のアトラクションを、一部屋にギュッと圧縮した感じで、純粋にワクワクしてくる。


ふと、俺はベッドの枕元にあるコントロールパネルに気づいた。


「おぉ……光が調節できる!」


パネルには、いくつものスイッチが並んでいる。

ポチッと押してみると――。


部屋のメイン照明がスッと落ち、代わりに足元のブルーライトや、壁際の間接照明が妖しく点灯した。

なるほど……! ここから大人の雰囲気を作っていくのか……!


感心しながら、今度はパネルの下にある小さな引き出しに手を伸ばす。


ガラッ。


「えぇっ!!?」


そ、そこには。

見覚えのある、こけし型の……マッサージ機……。

で、電マ……!? これが、噂の……電マ!?


実物を生で見るのは初めてだ。

こ、これを……ここに当てて……ウインウインと……!?


(いやいやいや!! 違う! きっとこれは、寝る前に肩凝りをほぐすための純粋なマッサージ機だ! そうに決まってる!!)


必死に脳内を健全な方向へ軌道修正しつつ、さらに引き出しの奥を開けると――。


「……………こ、これ……」


四角い小さな銀色のパッケージ。

ご丁寧に、2枚。


「………………」


うん、知ってる。俺でもこれ知ってる。

やっぱりここはラブホだ。


さっきまで「遊園地みたい〜!」とか浮かれてた俺が馬鹿だった。ここはまごうことなき、大人の社交場だ。


「そ、それじゃ私……何か注文しますね!!」


ここのホテルは、テレビのリモコンでご飯もアメニティも、ドライヤーやヘアアイロンまでなんでも注文できるらしい。


「ラブホって凄いね。テレビでルームサービスみたいに注文できるんだ」


「ふーん、こんなに便利だなんてね。普通のホテルより快適かもしれないわ」


後ろから、白石さんと神崎さんが感心したように近づいてくる。


「う……うん! カラオケもあるみたいだし!すごいね…!」


俺は誤魔化すようにリモコンを手に取り、電源ボタンに指をかけた。


「あー! ゆかっち! 待て!!」


背後で、桐谷さんが止めようと手を伸ばす。

しかし、俺の指がボタンを押し込む方が、ほんの一瞬早かった。


ピッ……!



『ああぁんッ!!♡! やぁッ!♡ だめぇ、そこっ!!♡』




ブチッ!!


俺は光の速さで電源を切った。


「「「………………」」」


部屋の空気が、北極よりも冷たく凍りついた。


なんだ今の

なんで? なんでいきなりAVが流れてんの??

ついに日本の地上波は、深夜帯じゃなくてもそういう番組を全国放送できるようになったの……!?


「な、なはははは! しまった、言うの忘れてた!

ラブホのテレビはな、AVが見放題なんだ!

前の客が、アダルトチャンネルをつけたまま帰ったんだろな! つまり電源入れたら続きから再生されるトラップだ!」


「へぇー! すごいな、それ!! 効率的!」


真桜さんが手を叩いて喜んでいる。

「…………」

「…………」

白石さんと神崎さんは、完全に言葉を失っていた。

もちろん、俺もだ。


ラブホ……。

これが……ラブホ……らしいです……。



なにはどうあれ、ここはホテル!! ラブホとはいえ、超高級ホテルなのだ!!


先ほどの放送事故の気まずさを払拭するためにも、俺は豪華なご飯や映えスイーツを死ぬほど食べるぞ……!


リモコンのメニュー画面を食い入るように見つめ、注文を――!



「それじゃ、まず温泉いこ! 露天の!」


「……へ?」


「おー! いいな! ここなら5人でも全然いけそうだぞ!」


「もう……真桜ったら……また勝手に決めて……」


「今に始まったことじゃないよ、あの子は」


お……温泉……?

初手、温泉……!?

ご飯は!? スイーツは!? っていうか心の準備が!!


「ゆかっち! ぼーっとしてると置いてかれるぞ!」


「えぇ!? ……え、えと……私はその……」




――――



「普通にすげぇ! 露天風呂めっちゃ豪華だぞ!!」


「ラブホ女子会……!! アガってきたぁ〜! ねぇ、ゆかっち!」


「あはは……そ、そうですね……」


結局、こうなりました……とほほ……



ここはラブホ女子会としても超人気のスポットらしく、お風呂もそれなりに広く作られているらしい。


修学旅行の貸切スパを彷彿とさせる光景に、再びドキドキムラムラと罪悪感に浸る。


5人で浸かる広い露天風呂。

お湯からはなにやら高級そうな薔薇のいい香りが漂い、水面には赤い花びらまでぷかりと浮かんでいる。


しかし現状、湯船で繰り広げられているのは、薔薇というより完全に「百合」だけど。


「………………」


はしゃぐ真桜さんと桐谷さんをよそに、なにやら静かに周囲を見渡している神崎さん。


(う……修学旅行での真桜ちゃんとのアレ以来……どうしても変な目線になりそう……落ち着け私……!)


神崎さんは自分に言い聞かせつつ、チラリと隣の俺に目線を移す。


(ゆかっち……相変わらず華奢で……肌も透き通るみたいに綺麗……。そしてあのお腹……!

いやいや! だめだ! 翔くんに悪い! あれは翔くんの……!

……でも……今日はラブホ女子会だし……非日常の空間だし……ちょっとくらい……ちょっくらいなら……ムニッと……)



神崎さんの手が、お湯の下でスルスルと俺の脇腹へと忍び寄る。


そ〜……


「……神崎さん。その手……なにするつもり……かな?

同性でもセクハラは成立するのよ?」


「えっ?ええ?!」


神崎さんの手が触れる寸前。

俺の背後から、白石さんがギュッと抱きつくようにして覆い被さってきた!


「……別に……?

白石さんこそ……また、私を悪者にして上手いこと『からめ取る』気かな……?」


「いいえ……? 私は、裕香さんを守ろうとしてるだけよ……」


「ふーん。それなら、『言葉で注意するだけ』でいいはずなんだけどね?」


バチバチバチバチ……!!


目に見えない火花が、二人の間で激しく散っている。


「へ? へへ? ……な、なんですかこれ……?」


「とにかく、私はアスリートとして、腸の働きを良くするマッサージをするだけだから!」


ガッ!


神崎さんが、有無を言わさず俺のお腹をムニッと掴んだ。


「ひゃいっ!?」


「だ、だからそういうのがダメって言ってるのよ! もう!」


白石さんも負けじと、俺を後ろからギュッと抱きしめながら、神崎さんの手を引っこ抜こうとする。


結果的に、俺は二人から凄まじい密着と刺激を受けることに。


「へぇっ!? ちょ、お腹! 背中! あひゃぁ!!」


その様子を、湯船の反対側で見ていた野次馬二人がニヤニヤと笑う。


「おお、レイと天音の『ゆかっち争奪戦』が始まったぞ」


「ゆかっちは一応、まだ誰のものでもないよ〜?」


お……俺の争奪戦!?


「ちょ、二人とも……! 落ち着い……ああっ!」





温泉……終わり……


実は、あの直後の記憶があんまり、ない。


「う、うーん……」


気がつけば俺は、またまた限界突破してのぼせ上がり、ラブホのふかふかベッドで身体を休めていた。


「あちゃ〜。結局こうなっちゃったか」


「なはは! あの2人がかりじゃ、ゆかっちには刺激が強すぎたな!」


「わ、私は……悪くないから……守ろうとしただけで……」


「私も、ただアスリートとしてマッサージを……」


なんとか水分を取って回復し、今度こそ念願のご飯とスイーツを注文した。


「すごい……本当にファミレスくらいメニューがある……」


ウェルカムドリンクまであり、サービスがめちゃくちゃいい。


腹ごしらえの後はカラオケ!


真桜さんは、さすがというかめちゃくちゃ歌が上手い。プロ顔負けだ。

桐谷さんはとにかく元気で、合いの手で盛り上げてくれる。

白石さんは普段の清楚なイメージそのままに、透き通るような素敵な歌声。

神崎さんはちょっと照れながら歌っていて、そのギャップが反則級に可愛かった。


ちなみに俺は、とりあえず無難に久我Pの曲を頑張って歌いました。


(白石さんがめちゃくちゃ笑顔で乗ってくれて楽しかった…)



――そして。

時計の針が、夜の10時を回った。


すっかり忘れかけていたけど……ついに、この時間がやってきてしまった。

恋バナの時間だ。

今回は修学旅行の時と違って、巡回してくる先生もいない。

時間は無制限、思う存分、各々が話すことができる。

未成年の夜は、今一度大人の夜へと変わる…


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