表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/81

幸福の分岐(6)

夜遅くに連絡があった。


“明日、18時30分より通夜、明後日、10時より葬儀になります。”

と、LINEであった。


“葬儀は仕事があるので確認して、明日は必ず伺います。”

と、返した。


私のツラいときにはそばにいてくれたのに、彼のツラいときにちゃんと寄り添えてない。

もっとちゃんと向き合って、何か出来たのかも知れない。


あまり寝れず、朝が来た。

喪服や靴や数珠などをまとめて準備し、会社に向かう。


事情を話したが、今日は早めに上がることは出来るが、明日は打ち合わせや新商品に向けてのモニターの方々の来社日で、どうしても時間が取れなかった。


夕方になり、急いで着替え斎場に向かう。

私は何が出来るのだろう。


斎場に着くと、少し早かったのかまだ葬儀社の方とユウくん達、親戚の方が数名忙しく準備をしている。


「リナさん、今日はありがとうございます。母が喜びます。少し早いので待合室で待っていてもらえますか?」

ユウくんは少しだけ目が赤くなっていた。


「私にも手伝わせて。」

私は彼の目をみてそう言った。


雑務が主ではあったものの会場の準備、通夜の後に振る舞う食事や飲み物などの準備をした。


通夜そのものはご近所の方やお母さんが生前勤めていたパート先の方、ご友人などが足しげくお別れをしにいらしていた。


親族席に背筋を伸ばし、気丈にユウくんは振る舞っていた。

彼は涙が溢れないように、時々、顔を上にあげた。


通夜が終わり、その後の手伝いも申し出たが、


「明日も仕事ですよね。大丈夫ですから、気をつけて帰ってください。送れなくてすみません。」

と、ユウくんは悲しそうに笑った。


「私にも頼って。」

一言伝えたが、今の彼に届いたのかわからなかった。


夜はすっかり肌寒さを増し、ひとりでいることがつらかった。

私は彼に何が出来るのだろう。

もしかしたらそう思うのもおこがましい事なのかもしれない。

日に日に疲れた彼を見るのがツラくて、彼のためにと理由をつけて、距離を開けたのは私だ。


一番辛かった時に離れたのは私だから…。

後悔する資格はないのだと思った。


次の日、仕事から帰って少しするとユウくんが私の家を訪ねた。

いつもとは違い、本当に頼りない身体を私はしっかり抱きしめた。


「…ユウくん、大丈夫?」

私が声をかけると、小さく“大丈夫じゃないです。”と呟いた。

少し身体を離して彼の顔を見ようとしたら、阻止するように身体を引き寄せられた。


彼が落ち着くまで背中に腕を回し、ゆっくりさする。

彼は頭に顔を埋め、


「母が幸せだと言ってくれて良かった…。でも、早く病気に気づけていれば…って自分を責めずにはいられないんです。」

そう言った。


私を抱きしめる腕に少しだけ力が加わった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ