幸福の分岐(6)
夜遅くに連絡があった。
“明日、18時30分より通夜、明後日、10時より葬儀になります。”
と、LINEであった。
“葬儀は仕事があるので確認して、明日は必ず伺います。”
と、返した。
私のツラいときにはそばにいてくれたのに、彼のツラいときにちゃんと寄り添えてない。
もっとちゃんと向き合って、何か出来たのかも知れない。
あまり寝れず、朝が来た。
喪服や靴や数珠などをまとめて準備し、会社に向かう。
事情を話したが、今日は早めに上がることは出来るが、明日は打ち合わせや新商品に向けてのモニターの方々の来社日で、どうしても時間が取れなかった。
夕方になり、急いで着替え斎場に向かう。
私は何が出来るのだろう。
斎場に着くと、少し早かったのかまだ葬儀社の方とユウくん達、親戚の方が数名忙しく準備をしている。
「リナさん、今日はありがとうございます。母が喜びます。少し早いので待合室で待っていてもらえますか?」
ユウくんは少しだけ目が赤くなっていた。
「私にも手伝わせて。」
私は彼の目をみてそう言った。
雑務が主ではあったものの会場の準備、通夜の後に振る舞う食事や飲み物などの準備をした。
通夜そのものはご近所の方やお母さんが生前勤めていたパート先の方、ご友人などが足しげくお別れをしにいらしていた。
親族席に背筋を伸ばし、気丈にユウくんは振る舞っていた。
彼は涙が溢れないように、時々、顔を上にあげた。
通夜が終わり、その後の手伝いも申し出たが、
「明日も仕事ですよね。大丈夫ですから、気をつけて帰ってください。送れなくてすみません。」
と、ユウくんは悲しそうに笑った。
「私にも頼って。」
一言伝えたが、今の彼に届いたのかわからなかった。
夜はすっかり肌寒さを増し、ひとりでいることがつらかった。
私は彼に何が出来るのだろう。
もしかしたらそう思うのもおこがましい事なのかもしれない。
日に日に疲れた彼を見るのがツラくて、彼のためにと理由をつけて、距離を開けたのは私だ。
一番辛かった時に離れたのは私だから…。
後悔する資格はないのだと思った。
次の日、仕事から帰って少しするとユウくんが私の家を訪ねた。
いつもとは違い、本当に頼りない身体を私はしっかり抱きしめた。
「…ユウくん、大丈夫?」
私が声をかけると、小さく“大丈夫じゃないです。”と呟いた。
少し身体を離して彼の顔を見ようとしたら、阻止するように身体を引き寄せられた。
彼が落ち着くまで背中に腕を回し、ゆっくりさする。
彼は頭に顔を埋め、
「母が幸せだと言ってくれて良かった…。でも、早く病気に気づけていれば…って自分を責めずにはいられないんです。」
そう言った。
私を抱きしめる腕に少しだけ力が加わった。




