幸福の分岐(7)
どれくらい玄関で彼を抱きしめていたのだろう。
「ユウくん、そばにいるよ。」
私はそう言って、少しだけ身体を離し彼を見上げた。
泣きながら私を見ている彼を放ってはおけなかった。
「…そばにいてください。」
彼は私に顔を寄せキスをする。
私は最初は戸惑っていたが、彼の切ない顔を見る度に胸を締め付けられて受け入れた。
息継ぎが惜しいくらい長い間、私達は何度もキスをした。
私が彼の身体の重さにバランスを崩しよろけた瞬間、彼は優しく支え、私の身体を抱えてゆっくりベッドに沈めた。
「離れないでください。」
不安で壊れてしまいそうな、まるで幼い子供のような彼を見ていると、何も言えなくなった。
彼の唇がゆっくりと首筋に降りてくる。
私は少し身体を強ばらせたが、彼は構わず私の上半身を起き上がらせ、背中のファスナーに手を掛け一気に下ろした。
私の肩からスルリと着ていた服が崩れ落ち、首筋から肩、そして背中にキスを落としていく。
彼に答えたい気持ちとツラい記憶が混ざりあって、泣きそうになる。
悟られないように向き合って、キスをする。
彼の柔らかな髪に指を滑らせ、彼の頬を両手で包んで、何度もキスをする。
私の曖昧な感情を読み取られないように、近すぎてあやふやになって欲しいと願った。
「リナさん、好きです。」
そう彼は言いながら背中にあるホックを外し、服と下着を優しく脱がした。
私に体重を掛け、ゆっくり私の頭を手で支えながら身体を倒した。
その時、私の顔が一瞬彼の目に触れ、
「怖いですか?」
と、泣きそうな声で確認する。
「…大丈夫だよ。」
私は彼をなだめるように顔を引き寄せ、唇を重ねた。
何度か身体が強ばり、その度に彼の名前を呼び、彼の顔を確認した。
彼が疲れ果て横たわっているのを眺めた。
私は何をしているんだろうか…。
彼が触った感覚がまだ身体に残っている。
彼に出来ることはこれくらいの事しかないのだろうか。
「…泣かないでください。すみません。」
後ろから声が聞こえ、私の涙に気付き私を抱きしめる。
「大丈夫、ユウくんは悪くないよ。」
私は彼の背中に腕を伸ばした。
本当に何をしているのだろう。
わからなくて、情けなくなった。
彼のそばにいたくて大事にしたいのに、心のどこかでひどく自己中心的な感情に支配される。
傷つきたくない。
その気持ちが彼を傷つけているはずなのに。
ちゃんと言葉にして、何度も何度も私を受け入れて、きちんと行動してくれていたのに、さっきの事で全てを否定しようとしている。
自分が選び受け入れたのに、彼だけの責任ではないとわかっていても、自分の事ばかりでツラくなる。
幸せになりたいと願っていても、いつも選択を間違える。
あの記憶と私のエゴが狂わせる。




