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幸せの分岐(2)

仕事が終わり連絡を入れた。


デスクを片付け、会社を出る。

少しだけ待つとユウくんが走って近づいてきた。


「お疲れ様です。行きましょうか?」

少し息を切らせて、笑顔で私を見た。


彼の家に入る前に、


「リナさん、大丈夫ですか?」

私の顔を彼は覗き込んだ。

私は頷き、少し背筋を伸ばした。


玄関を開けると、ユウくんのおばあちゃんが小走りに私達を迎えて、


「おかえり、ユウくん。そちらがリナさんね。わざわざ来ていただいて、ありがとう。」

と、優しく微笑んだ。


「よろしくお願いいたします。こちらお口に合うと良いのですが…。」

パウンドケーキの入った手提げを渡そうとすると、


「リナさん、作ったんですか?」

私をユウくんは見て驚いていた。


「…朝、少し早く目が覚めたから。喜んでもらえたら…。」

私が答えていると、


「嬉しいです。ばあちゃん、リナさんは本当に料理が上手いんだよ。家族わりと甘いもの好きなんで。」

彼は嬉しそうに笑った。


「リナさん、ありがとう。ユウくん、早く上がってもらって。」

優しい顔はユウくんの面影が少しあった。


リビングに通されると、ユウくんのお母さんとおじいちゃんがキッチンに立っていた。


「いらっしゃい、リナさん。ゆっくりしていってね。」

ユウくんのお母さんは可愛らしいキレイな人で、笑うと本当にユウくんにそっくりだと思った。


「こちらへどうぞ。」

おじいちゃんが座るように促してくれた。


とても暖かい家族なんだと思った。


ひとしきり食事を終えた頃、ユウくんのお母さんは私とユウくんに、


「リナさん、お話したいのでこちらへ移動しても大丈夫ですか?ユウもお願い。」

と、優しく微笑んだ。


ユウくんのお母さんの寝室に通され、ユウくんのお母さんはベッドに腰掛け、私達はソファーに座るように言われた。


「リナさん、今日はありがとうね。ユウが大学生の頃からリナさんの名前はよく聞いていて、会ってみたかったの。」

ゆっくり優しく彼女は微笑んだ。


「ユウからは聞いているかも知れないけど、私はもうそんなに長くなくて、少し動けるうちにわがままをしておこうと思って。ユウは私のせいでなかなか本音を言えない子になってしまって、申し訳ないと思っているの。リナさんにも迷惑かけてるんじゃないかな?」

私達を見て可愛らしく首をかしげる。


私は“今は全然…”と答えた。


「前は大変だったのかな?想像は出来る。私とユウがユウの父親に暴力を受けていたのは知っているとユウから聞いてる…。私が知っている限り、ユウ自身から小さい頃の話をしたのはリナさんが初めてだと思うんです。」

優しく微笑みながら私達に話しかけた。


「確かにあの頃は私が母親としても、人としてもダメな時期で、ユウには大変な思いをさせてしまっていたと思うんです。ただ、辛いことばかりではなくて、それはユウにはわかって欲しいな…って、最近になって思ったから。いつも、私の顔を見てつらそうにしていたけど、私はあなたのお父さんに出会えた時も、あなたを妊娠したとわかった時も、結婚してあなたが生まれて少しずつ成長していくのを見てる時も、本当に幸せでたまらなかった。結果的に辛いことも嫌なこともあって、少し私は人よりうまく生きていけなかったかもしれない。ユウに心配もかけたし、私の両親にも苦労させてしまった。それでも、私はわりと幸せだと思えたのはユウがいてくれたことが大きいから。」

一気に気持ちを何か思い出しながら、ゆっくり私達に伝えた。


「私はいなくなってしまうけど、ユウがちゃんと向き合えて大事にしたいと思える人がいるんだなと思って…。だから、会ってみたかった。」

私を見て彼女は本当にかわいらしく笑った。


「託したいわけでも、約束して欲しいわけでもないの。ただ、会ってありがとうを言いたかった。今日は会えて良かった。」

彼女は嬉しそうに話した。

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