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後日談:真の仲間への輝跡~セーラへの贈り物~①

 サネヤ視点の【後日談】

 最近、セーラが妙に優しい。

 理由はまるで分からない。僕なんかしたっけ?


 セーラは、出会ったころからずっと優しい…………わけではない。少なくとも、路地裏で僕を助けてくれたときは優しかった。だが、それ以降、付き合いの長さに反比例して、セーラの優しさが減衰していったような気がする。


 当時の僕は、追放される前兆だと喜んでいた。というか、無理やり喜ぶようにしていた。


 だが、今となっては、セーラは僕のことを疎んでいたわけでも、追放したがっていたわけでもないことは分かっている。つまり、あの優しさ(の無さ)がセーラの素なんだろう。


 素を出してくれているということは気を許してくれた証拠だ。だから、僕はわりと普段のセーラの態度は好きなのだ。相手をするのが大変なこともあるけど、それがセーラのいい所でもある。


 ………………まぁ、コガネとヒスイは普通に相手をするのをめんどくさがっている節はある。未だにセーラの買い物に付き合うのは僕の役目だし。


 さておき。


 そのセーラが、何故か優しくなった。まるで、出会ったばかりの頃のように。つい先日、スキル【殲滅】のトレーニングに駆り出されたばかりだけど、いつもよりも強引じゃなかったし。


「…………僕、何もやってないよね?」


 怒らせるようなことなら心当たりがないわけじゃない。でも、セーラが急に優しくなるようなことをした覚えはない。


 セーラが優しくても困ることはなくて、むしろ、良いことではあるんだけど。

 理由が分からないと不安だ。嵐の前の静けさみたいな感じで、これから何か起こるんだろうか?


 だから、というわけではないが、僕はセーラに何かプレゼントを贈ることにした。


 これまで迷惑をかけてきたし、これからも迷惑をかけることは避けられない。いくら気持ちを切り替えても、戦闘力的に僕が雑魚だという事実は消えない。


 だから、日ごろのお礼とお詫びの気持ちを込めたプレゼントを贈るのだ。さすがのセーラもプレゼントを貰って、機嫌が悪くなることはないと思いたい。まぁ、念のためプレゼント選びは慎重を期すつもりだけど。


 ちなみに、コガネとヒスイにもプレゼントを贈る予定。ただ、ヒスイには甘いもの、コガネにはお風呂屋の情報とあげるものが決まっているので、簡単なのだ。


 セーラもダンジョンの情報をあげれば喜ぶだろうけど。セーラが喜ぶようなダンジョンには、僕が進んで行きたい場所ではない。そして、情報を得たセーラを止めることは僕には出来ない。


 というわけで、セーラへのプレゼント選びが問題なのだ。


 セーラは変なものが好きな傾向にある。

 街に立ち寄るたびに、よく分からない生き物の置物とか変なお土産ばかり買っていた。スキル【収納】のおかげで、簡単に持ち運べるので、セーラも遠慮なく色々買ってる気がする。


 セーラの買ってくるお土産に一貫性はない。なので、そこから好みとかは分からない。どうしよう。


「………………うん、無理だ。僕一人じゃ決められないや」


 僕は学んでいる。困ったときは仲間に頼ればいい。


 というわけで、僕は、ヒスイに相談を持ち掛けることにした。盛大なサプライズをするつもりはないけど、折角ならセーラにはバレないようにしたいので、一応こっそりと。


「サネくんが相談なんて珍しいね。どうしたの? あっ、セーラに隠れて甘いもの食べに行く話?」


「それは、また今度にしようよ」


「おっ、サネくんもだいぶ言うようになってきたね。絶対、行こうね」


 まぁ、僕もセーラに…………慣れてきたのだ。甘いものは普通に好きだしね。

 ただ、行ったことがバレるとめんどくさいのは事実だ。なので。


「今度は、セーラにはバレないようにして欲しいなぁ」


「えー、それじゃ面白くないじゃん」


 いや、ヒスイは面白いかもしれないけど、僕は大変なのだ。ツーイスの街でも、仲間外れにされたことに怒ったセーラをなだめるのは大変だった。


 というか、それ以降、どちらかと言えばセーラの当たりは強くなっていたのだが。なぜか、急に優しくなったのだ。ほんとに、なんで?


 よく分からないけど、とりあえずプレゼントだ。


「まぁ、甘いものは今度にするとして。セーラに何かプレゼントしたいんだけど。何が良いと思う?」


「セーラにプレゼント? ……うーん、何でも喜ぶような気がするけど」


 そんなことなくない? 僕、セーラに飲み物とか買ってくるたびに文句言われてる気がするよ。セーラは、変なものが好きなうえに拘りが強いのだ。


 というか、改めてプレゼントを渡すとなると、何が良いのか全く分からないのだ。


「具体的なアドバイスがもらえる嬉しいなぁ」


「セーラが喜ぶもの、ねぇ………………あっ!」


 ヒスイが何か思いついたような笑みを浮かべた。


「じゃあ、一緒に買い物に行こうよ! 行くよね? 行くの決定ね。ちょっとコガネに、セーラのお守り押し付けてくる!」


「えっ、あっ。ちょ……」


 止める間もなく、ヒスイはコガネの方へ行ってしまう。

 そして、ヒスイを追いかけようとする前に、なぜかセーラがこっちに来た。


 その後ろで、ヒスイとコガネが話し始めたのが見える。ヒスイ、コガネと話すために、僕にセーラを押し付けたんだね。


 近づいてきたセーラはジトーっとした目で聞いてくる。


「……ヒスイとなに話してたのよ?」


「大した話じゃないんだけど、えっと……買い出しの相談だよ」


 嘘はついていない。ちゃんと(セーラのプレゼントの)買い出しの相談をしていたのだ。


「…………ふーん、まぁ良いけど」


 それ以上、セーラが追及してくることはなく、すぐに別の話が始まった。


 セーラの話を聞きながら、僕は思う。やっぱりセーラ、なんか優しいよね? いつもならもっと追及してくるのに。セーラは仲間外れにされるのをなにより嫌がるのだ。



 結局、明日ヒスイとこっそりプレゼント選びに行くことになった。セーラはコガネがどうにかしてくれるらしい。コガネ、疲れたような顔してたけど大丈夫だろうか?


 …………てか、こっそり出かけたのがバレたら、セーラの機嫌悪くなりそうだな。ちゃんとセーラの機嫌がよくなるようなプレゼントを買わないと。






 ※※※※※






 珍しいことに、サネくんから相談を受けた。本当に珍しい。前のサネくんなら、相談なんてせずに一人で抱え込んでいたはずだ。うん、サネくんも良い方向に変わってきたね。


 せっかく頼られたんだから、全力で真摯に答えなければ。…………まぁ、セーラをからかいたいという気持ちも顔を出してしまったけど。


 ただ、問題なのは相談内容だ。

 セーラへのプレゼントに何をあげるべきか。


 その答えは、悩むまでもない。何でもいい、だ。

 セーラは、サネくんからのプレゼントだったら例えゴミでも喜ぶよ。


 ………………いや、流石にゴミだと喜ばないかな? でも、てけとーにそれっぽいことを言えば、セーラはたぶん納得する気がするなぁ。それくらいセーラはチョロいし、サネくんにメロメロなのだ。


 私が力になりにくい相談内容な気もするけど、できる限り協力しよう。

 というか、そもそも。


「ねぇ、なんで急にセーラにプレゼント? なんか怒らせたの?」


「いや、日ごろのお礼とお詫びを兼ねて何かあげようと思って。それに、どっちかと言えば、最近セーラ優しいんだよね。……理由は分からないけど」


 ああ、それは私が優しくしたほうが良いって言ったからだね。嫌われるかもしれない、という言葉が余程効いたらしい。


 にしても露骨すぎみたいだよ、セーラ。サネくん、ちょっと不審がってるじゃん。まぁ、傍から見てる私でも分かるくらいの変わりようだったしね。面白かったからほっといたけど。

 あとで、やりすぎに注意しとこう。


「てか、日ごろのお礼なら、私たちにはないの?」


「もちろん、あげるつもりだよ。ヒスイは甘いもので良いでしょ?」


「おっ、分かってるね、サネくん。セーラに内緒で、カフェ巡りとかだともっとポイント高いよ」


「有名で美味しいお店、探しておくよ」


「楽しみにしてるよ。よろしくね!」


 サネくんのこーゆー真面目ながらノリが良いところは嫌いじゃない。セーラがあんまりノロノロしてると、私がサネくん貰っちゃうよ?


 なんて下らないことを考えながらも、プレゼント探しを続けた。まぁ、私もセーラの好みってあんまり分かんないんだけどね。セーラの好きな人なら、嫌というほど知ってるけど。


 サネくんに聞かれるたびに「それは、あんま好きじゃないと思う、たぶん」「そっちはわりと好きそう、かも」などという曖昧なアドバイスをしていく。役に立てなくて、ごめんね。


 私たちは色んなお店を巡っては、セーラの好きそうなものを吟味した。ちなみに、サネくんはすごい真剣な顔をしている。


 セーラは素直じゃないだけで、サネくんから貰ったものなら何でも喜ぶんだって。ていうか、自分のために真剣に悩んでいるサネくんの姿を見るだけで狂喜乱舞すると思うよ? セーラはチョロいのだ。




 その後、時間はかかったけど、どうにかプレゼントを決めることが出来た。


「私、あんま役に立てなかったなぁ。ごめんね」


「そんなことないよ。手伝ってくれて、ありがとう」


 ちゃんとお礼を言われると、逆に申し訳ない。


 あんまりアドバイス出来なかったのに、サネくんはプレゼントをちゃんと自分で決めたのだ。まぁ、サネくんが自分で選んだ方が、セーラは喜ぶから良いってことにしよう。


 セーラの喜ぶ顔が容易に思い描ける。……そして、その後、幸せオーラ前回のセーラの惚気を聞かされる私の姿も想像できてしまった。めんどくさっ。


 私のためにも、プレゼントをその辺で買えるお饅頭とかに変えた方がいいんじゃないかな? ………………お饅頭でもセーラは喜ぶし、惚気てきそうだなぁ。セーラ、めんどくさい。

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