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 閑話:【索敵】かくれんぼ

 閑話という名の後日談。だけどやっぱり閑話②


 私は悩んでいた。

 最近、私、役に立ってなくない?


 思い出してみると、フリセノアの街以来、私は基本的にセーラをからかってるだけだ。

 まぁ、セーラをからかうことは私の義務でもあるので、それは良いんだけど。からかっているだけなのはまずい。


 私は回復術師だ。一応、結界も張れるけど、役割はあくまで後衛。誰かが怪我をしたときに、始めて役割が生まれる。しかし、小金持ちになった私たちはのんびり冒険をしているので、あんまり私の出番がこない。まぁ、平和なのは良いことなんだけど。


 戦闘では私は基本役に立てない。そういう意味では私はサネくんにシンパシーを感じている。というか、サネくんが怪我をすれば、(決して喜ばしくはないけど)私の役割が出来る。それに、荷物を持ってくれているサネくんを守るのは私の結界だ。そして、サネくんが【索敵】で守るべき方向を教えてくれる。


 これって、私とサネくんって相性抜群ってことじゃない?

 気持ちも分かるし、役割も補完しあっている。


「うーむ、セーラに教えてあげねば」


 どんな顔するのか、反応が楽しみだなぁ。

 って、ダメだ。またセーラをからかうこと考えてるじゃん。


「集中しないと、見つかっちゃう」


 私は、今、街の片隅で全神経を注いで魔力を絞って隠れていた。


 からかいすぎて怒ったセーラから。ではなく、スキル【索敵】を使うサネくんから。

 もちろん、普段優しいサネくんがキレたわけでもない。


 私たちは、絶賛かくれんぼの真っ最中なのだ。



 【索敵】かくれんぼ。


 それは、珍しいことにサネくんが強く推奨した遊びだ。勝てばお風呂に入れるという事もあり、コガネはいつも本気だ。セーラは普通に負けず嫌いなので本気。


 私も、わりと本気だった。普通に役に立つし、楽しいから気に入っていた。…………まぁ、ほんの少しだけ、毎回見つけれるのが悔しいという思いもある。


 だが、今ならサネくんが【索敵】かくれんぼを推奨した本当の理由が分かる。


 スキル【殲滅】の対策をさせるためだ。

 あのスキルは魔力に反応して殲滅するらしいから、隠れきることが出来たらスキルの対象にはならなくなる。実に、効果的な訓練だと言える。


 ただ、サネくんは、私たちに追放される気だったと言っていた。そして、私たちに復讐をするつもりだったとも。その私たちの身を案じた遊びを提案している。


「…………サネくんらしいなぁ」


 サネくんの真意を知った後、【索敵】かくれんぼは回を重ねるごとに本気度を増している。


 しかし、戦績はサネくんの全勝。


 ちなみに、私たち3人の中では、誠に遺憾ながら私が一番弱い。コガネは単純に魔力を絞るのが上手く、セーラは魔法を駆使することで隠れている。私は魔力を絞るのが上手くないし、隠蔽系の魔法も使えない。


 でも、今日こそは。


 私に、秘策がある。

 最近、役に立っていないけど、私だってやればできる子だって証明してみせる!






 ※※※※※






 【索敵】かくれんぼ。

 それは、女々しくて矛盾だらけの僕が、少しでも追放されない可能性をあげるために考えた遊びだ。


 コガネをやる気にさせるために出した条件と、セーラの負けず嫌いの性格によって毎回盛り上がっていた。フリセノアの街以降、さらにやる気になってくれている。本当にいい仲間たちだ。


 ………………迷子になったセーラを探しているときに思い付いたというのは内緒にしているけど。



 さておき。



「スキル【索敵】っと」


 範囲を最大に広げて、全力で集中する。みんなのレベルも上がっているが、僕だって負けていられない。スキル【殲滅】を起動しているときは、恐らくより精度の高い魔力探知が行われている。


 みんなには、少なくとも僕レベルの索敵からは完璧に隠れれるようになってもらわないと困るのだ。


 スキル【殲滅】を起動しなければいいだけの話ではあるんだけど。セーラの言うように、僕の性格的に使う可能性は残っている。まだ、制御できない以上、セーラ達にも頑張ってもらわないといけない。


 そんなことを考えながら、スキル【索敵】を起動し続ける。街中に大量にある魔力の中から、セーラたちの魔力反応を見つけるのは大変な作業だ。



 時間はかかったけど、どうにか見つけることが出来た。

 一番近くに反応があるのは………………ヒスイなんだけど。


「………………なんだこれ?」


 僕は、違和感というか異変を感じながらも、ヒスイの魔力反応がある場所に向かった。

 だが、そこにヒスイはいない。ただ魔力反応は、そこにヒスイがいることを示している。


「……これは…………やられたかも」


 改めて、スキル【索敵】を起動。

 やはり、ヒスイの反応が一番近くにある。


 けど、これは。

 セーラの方に先に行くべきだな。


 僕は、ヒスイの反応を無視して、セーラの反応がある所に急いで向かう。


 そして、ローブを頭まで被り、路地裏で膝を抱えて小さくなっているセーラを発見した。魔力で探してるから、そこまで隠れてもあんま意味はないんだけど。セーラは、毎回こんな感じで全力でかくれんぼをしている。


「セーラ、見っけ」


「ちぇっ。見つかったか。って、あたしが最初なの⁉ ヒスイは?」


「……まだ、見つけれてないんだよね」


 これは、ちょっとマズイかもしれない。


「セーラ、ちゃんと着いてきてね」


 そのまま、コガネのもとに急行。


 コガネは一応隅っこの方にはいたけど、広場で吞気に串焼きを食べていた。いや、セーラが本気すぎるんだけど。もうちょっと隠れればいいのに。かくれんぼしてる自覚ある?


「コガネ、見っけ」


「こんだけ人ごみにいてもダメなのかよ。俺が最後か?」


「いや、ヒスイがまだなんだ」


「おっ、珍しいな。でも、がんばれ、ヒスイ」


 口ではそう言っているけど、コガネはあまり期待していなさそうだった。まぁ、ヒスイはそんなに隠れるの上手くなかったからね。だけど、今回は…………。



 その後、僕はスキル【索敵】を駆使して、ヒスイを探し続けた。


 だけど。


「さっきから、何してるの? ヒスイ、いないじゃない」


 セーラの言うように僕は、ヒスイを見つけられていなかった。

 何度も魔力反応がある位置には来ている。けど、未だにヒスイは見つからない。


「……これ、間に合わないかも」


「マジで?」


 コガネが嬉しそうに聞いてくる。そうだね、ヒスイを見つけられなかったら、僕の奢りでお風呂に行けるからだね。


「ちょっと、頑張りなさいよ。いつもすぐ見つけれてるじゃない」


 対照的に、セーラは悔しそう。たぶん自分が勝てなかったのに、ヒスイが勝つのが悔しいのだろう。


 というか、僕も普通に悔しい。スキル【索敵】には自信があったんだけど。こんな形で、出し抜かれるとは。がんばれ、僕。



 だが、僕とセーラの想いが届くことはなく、あえなく時間切れになった。

 僕は【索敵】かくれんぼに、初めて負けた。悔しい。



 制限時間内に僕が見つけられなかった時の集合場所は冒険者ギルドだ。

 セーラ達と待っていると、意気揚々とヒスイがやってきた。


「これ、私の勝ちだよね? ね?」


 そう聞いてくるヒスイは実に嬉しそうだ。実に悔しい。


「…………完敗だよ。でも、次は見つけるよ」


「次も、私が勝てるように工夫するから、覚悟しててね!」


 からくりは分かったけど、勝負には勝てなかった。でも、何度も負けるわけにはいかない。


 ………………これ、スキル【殲滅】対策というより、かくれんぼとして本気になっているな。まぁ、楽しいからいいんだけど。


「おい、とりあえず、風呂行こうぜ! 話はそれからだ。今日はサネの奢りだろ?」


「そうだね。もちろん、約束は守るよ」


 ちゃんとお金はある………………追放された時のために貯めていたのだ。こんな貯金は早く仲間のために使うに限る。


 嬉しそうなヒスイとコガネ。悔しがっている僕とセーラ。

 僕たちは対照的な様子で、お風呂屋に向かうのだった。もちろん、コガネ一押しのお風呂屋に。






 ※※※※※






 私は、上機嫌で湯船につかっていた。作戦は大成功。見事、サネくんに勝利することが出来たのだ。

 うーむ、やっぱり私はやればできる子だったみたい。うれしい。


「ちょっと、ヒスイ。そろそろ、どうやったのか教えなさいよ」


 横で仏頂面をしているセーラが聞いてきた。何度かはぐらかしたんだけど、諦める気はなさそうだ。サネくんに、私が勝ったのが余程悔しいらしい。


「……しょうがないなぁ。でも、セーラには出来ないよ?」


「それでも良いから。気になるのよ」


 私の考えた作戦は単純なものだ。


「言うなれば、結界ダミー、だね。移動してるときに、持続時間を重視した結界を何個も張っておいたの」


「? それだけ?」


「そうだよ。サネくんの【索敵】の精度なら、私が張った結界の魔力にも反応すると思ったんだよね」


「……なるほど。だから、サネヤは何回も何もない場所に行ってたのね」


「そゆこと。私の作戦勝ちだね!」


 サネくんからしてみれば、街中に私がいるように思えたはずだ。


「……じゃあ、今回勝ったのは偶々よね? サネヤの回る順番によってはヒスイ本体が先に見つかってたんだし」


「……まぁ、そうだけど」


 負けず嫌いだなぁ。素直に私を褒めてくれればいいのに。


 今回の成果は、スキル【殲滅】対策としても有効だと思うんだけど。事前に結界をいくつか張っておけば、殲滅対象が増えて時間稼ぎとか出来ると思うし。


 だが、セーラは先ほどとは打って変わって満足げな表情をしてやがる。どうやら、私は偶々勝っただけという結論に落ち着いたようだ。


 ……そんなセーラには良いことを教えてあげねば。


「ねぇ、知ってる? 私とサネくんって、相性抜群なんだよ?」




 その後、私がのぼせてしまう寸前まで、セーラに問い詰められた。

 ………………からかうなら宿に帰ってからにするべきだったか。

 ヒスイ視点が多めなのは、サネヤとセーラの両方を俯瞰出来る便利なポジションだから。

 同じポジションいるはずのコガネ視点が少ないのは、コガネが基本的に風呂のことしか考えてないから。

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