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後日談:真の仲間への奇跡~コガネの風呂談義~

 

 コガネ視点の【後日談】

 最近、サネと2人で行動することが少なくなった。

 理由は言うまでもない。セーラだ。


 俺がサネと出かけようとすると、ほぼ確実にセーラもついてくる。サネの秘書かよってレベルだ。まぁ、力関係的にも、立場的にも、行動的にも、完全にサネの方がセーラの秘書っぽいが。


 とにかく、セーラがサネに付いて回るのだ。


 出かけるとき以外でもサネに関わることが増えてきた。まぁ、元からセーラはサネのことが大好きだから、絡むことは多かったけど。目を離すとサネがどこかに行ってしまうとでも思っているのだろうか?


 確かに、俺たちが思っていた以上にサネは色々抱え込んでいた。だが、フリセノアの一件以来、色々打ち明けた後のサネはスッキリした顔している。だから、勝手にどこかに行ったりはしないと思うんだが。


 あと、ヒスイが余計なチョッカイをかけたせいもある。俺と出かける予定なのに、こっそりヒスイと出かけるんじゃないかと勘繰っているのだ。


 ヒスイめ。厄介なことをしてくれやがる。


 サネは、セーラの気持ちに気付いているのかどうかは分からない。セーラにどやされるのはご免なので、下手に指摘も出来ないし。


 流石のヒスイもその一線は超えないようにしているようだ。あいつの場合、セーラの気持ちを伝えたらそれ以上からかえなくなるから、とか思ってそうだが。


 さておき。


「……どうすっかなぁ」


 別に付いてくるだけなら構わないんだが、セーラはすぐにどこかに行こうとするし、かと思えば長時間同じ店に留まろうともする。つまり、めんどくせぇのだ。


 セーラと出掛けたら、結局セーラの買い物に付き合う羽目になる。かなり前からセーラの買い物はサネに押し付けていたのに。サネに悪いという気持ちもあるけど、そこだけは譲る気はない。がんばってくれ、サネ。


 だというのに、最近また付き合わされることが増えてきた。


 ちなみに、サネは基本的にセーラの言うことは聞くので、セーラが付いてきても気にした様子はない。セーラの買い物に付き合うのに慣れ過ぎている。


「……よっし」


 決めた。ヒスイに押し付けよう!

 俺ばかり、セーラに付き合わされるのは不公平だ。俺たちは仲良しパーティ。平等にいかなければ。


 

 夕飯の後、俺はヒスイを呼び出した。

 サネと話しているときのセーラは基本的に油断していて隙だらけ。なので、セーラにバレないようにヒスイと話すのは簡単だ。


「なに、急に?」


「お前のせいで、セーラがめんどくせぇんだよ。協力してくれ」


「いや、セーラがめんどくさいのは元からじゃん。私のせいじゃなくない?」


 ヒスイも、セーラがめんどくさいという点には何の疑問も抱かない。さすがに付き合いが長いだけあって、分かってるな。


「お前のせいで、よりめんどくさくなってんだよ」


 ヒスイが余計なことをしなかったら、セーラも付き纏いはしなかったはず。…………いや、するかもな。


 ともあれ。


「サネと2人で出かけたいんだけど、このままだとセーラも付いてきそうなんだよ」


「あーね。なるほど、それは私のせいと言えなくもないかもしれないね」


「だろ? だから、お前がセーラと買い物にでも行ってくれ」


「えー、セーラと2人で買い物ぉ?」


 そんな露骨に嫌そうな顔するなよ。少しだけセーラが可哀想だろ。

 まぁ俺もセーラの買い物に付き合うのが嫌だから、こうしてヒスイに頼んでるわけだが。


「いや、別に買い物はしなくても良んだけどよ。とりあえず、俺たちに付いてくるのを阻止してくれ」


「どっちにしろセーラと出かけたら、お守りしなきゃじゃん」


 そうだな。そのお守りを任せてぇんだよ。


 ヒスイはしばらく悩んでいたが、諦めたようにため息をつく。


「………………はぁ。まぁ仕方ない、最近サネくんに任せっぱなしだったしね」


 ………………もしかして、サネが思い詰めた原因って、俺たちがセーラのお守りを押し付けすぎたからか?






 ※※※※※






「――スイ、ヒスイ!」


 遠くからぼんやりとセーラの声が聞こえる。朝からうるさい。私はまだ寝たいのだ。


「さっさと、起きなさいよ!」


 無視しようと思ったのに、強引に布団を引き剝がされた。なんてことするんだ。


「……なにぃ? 布団、かえして」


「あんたが、明日は絶対に起こしてって言ったんでしょうが!」


 そんな大きい声出さないでよ。てか、私そんなこと言ったっけ?


「……んあ? ………………ああ!」


 思い出した。昨日のうちに話すのがめんどくさかったから、朝になってから言おうと思ったんだった。


 しょーじき、めんどくさいけど、コガネと約束したからね。


「セーラ。今日は、私と買い物行くよ」


「なんでよ。あたし、用事あるんだけど」


 用事って。どうせサネくんに付き纏うだけじゃん。


「どこ行くの?」


「知らない。サネヤがコガネと出かけるって言うから、付いて行こうと思って」


 やっぱり。

 このままじゃ、コガネの危惧した通りになってしまう。


 説得するために、私はセーラに効きそうな言い方をする。


「セーラ、良い事教えてあげる。あんまり、しつこいと嫌われるよ?」


「何の話?」


 心底キョトンとした顔。そういう素直な態度をサネくんの前でも取った方が良いと思うな。


「だーかーら、あんま付き纏ってると、サネくんに嫌われちゃうよ?」


「!」


 そう言った瞬間、セーラが固まった。中々に面白い顔をしてくれる。

 効果は抜群だったようだ。てか、そんな衝撃だったの?


 セーラはしばらく固まった後、すっごく不自然に切り出した。


「き、今日は、あんたと出かけることにするわ。べ、別に、サネヤは全然、これっぽちも関係ないけど」


 うーむ、それで取り繕えてるつもりなのかな?

 まぁいいや。せっかくだし、今日はセーラをからかいつつ、久しぶりの買い物を楽しもう。



「一応、聞くけど。あたしを適当に撒いて、サネヤと出かけるつもりじゃないわよね?」


 出発の直前、セーラがジトーっとした目で聞いてきた。


 セーラの目には私がどう見えてるんだろうか。私、そんなにサネくんと密会しそうなの?

 ……まぁ前科はあるんだけど。そんで、今後もサネくんと甘いものは食べに行くつもりだけど。もちろん、こっそり!


「……そう思うなら、しっかり私を見張ってたら?」


 買い物してる間、セーラは『サネくんに嫌われる件』について、遠回し(そう思ってるのはセーラだけだけど)に聞いてきた。それも、かなりしつこく。そうゆうところじゃない?


 あと、ほんとに私のことを見張ってた気がする。全く失礼しちゃうね。


 とりあえず、セーラはもっとサネくんに優しくした方が良いと思う。あと、私にも優しくして欲しい。特に、朝起こす時。






 ※※※※※






 約束通り、ヒスイはセーラを連れ出してくれた。だが、下手したら戻ってくるかもしれないので、俺は迅速にサネを連れ出す。


「今日の目的地は、ここだ!」


「ここって………………お風呂屋じゃん。ロフの街に来てから、行きすぎじゃない?」


 この街に来てから、すでにパーティで5回行っている。サネは小金持ちになっても、毎日風呂屋には行かせてくれなかった。あくまで一時的な小金持ちに過ぎないので、サネの対応は正しい。


 ただ、せっかく金があってデカい街にいるのに、風呂に行けないのは悲しすぎる。


 そこで、俺は自分の小遣いで風呂屋に行くことにした。今まで、小遣いで風呂屋に行くのは自重していた。歯止めが効かなくなるの分かっていたからだ。


「金があるうちに贅沢しとかなきゃな。この街にいる間だけだから見逃してくれ」


 俺はサネとじっくり話をしようと思っていたのだ。フリセノア以来、色々(主にセーラ)あってサネとゆっくり話せていない。そして、話をするなら風呂が一番だ。



 サネは、あまり変わっていない。基本的に暗いままだし、セーラには尻に引かれっぱなしだ。だが、それでも少しずつ変わろうとしているのが分かった。


 というか、変わる前から、サネはすごいやつなのだ。心の中で、あんだけ色々抱え込んでいたのに、パーティには散々貢献してくれていた。抱えるものの減ったサネの今後の活躍には期待しかない。


 俺も負けてはいられない。サネのスキル【殲滅】には、正直ビビらされた。けど、俺だって成長しているはずだ。


 そんな風なことを思いながら、サネと話していると、結構な時間が経っていた。


「先出ててもいいぞ」


 俺がそう言うと、サネは腰を浮かしかける。だが、思い直したのか湯船から出なかった。


「…………せっかくだし、もう少し付き合うよ」


 普段のサネなら、とっくに風呂から出ている時間だ。

 些細な変化。だが、その変化がサネの心情の変化を表しているようで、無性にうれしかった。


「無理はすんなよ」


 その後も、俺たちは風呂を楽しみながら、のんびりと話を続けた。

 やはり、裸の付き合いは偉大だ。






 ※※※※※






 宿に帰ると、セーラのお出迎えがあった。


「おっそ――ん゛んっ。お、おかえり!」


 なぜか半端に引きつった笑みで。なんだ、その半端な笑顔は。


 てか、今「おっそい!」って言いかけたろ。

 何で言いきらなかったんだ? いつもなら言うくせに。なんか変なもんでも食ったのか?


「さ、サネヤ。これ、買っといてあげたから、飲むでしょ?」


「? ありがとう?」


 そう言って、セーラが冷たい飲み物を渡す。サネに。……俺の分はないんかい。


 謎の出迎え以降も、セーラは妙に優しかった。

 俺に、ではなく。サネに、だが。


 サネも急に優しくされて、不思議そうな顔をしている。


 後ろで、ヒスイがニヤニヤしていたので、何か吹き込んだのだろう。また、めんどくさいことにならねぇと良いけど。

 お読みいただきありがとうございます。

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