最終話:「まだ早い」と言えれば割と大丈夫だったりする
時間はかかったけど、無事にダンジョンを脱出した僕達は、フリセノアの街に帰ってきた。
とりあえず、冒険者ギルドに行って、トラップの存在と竜の討伐を報告する。
初めは信じて貰えなかったけど、竜の残骸を見せると信じてくれた。だいぶ度肝を抜かれてたようだけど。
本来ならスキル【殲滅】の餌食になったら、魔力の残滓がなくなるまで攻撃は止まらない。つまり、ミンチが出来上がってしまい竜かどうかの判別は難しかったはずだ。
しかし、今回は途中でスキル【殲滅】が中断されたので、粉々になる前に残骸を手に入れることが出来たのだ。
スキルが途中で解除されなかったら、セーラ達を殲滅したうえで、竜の死骸もミンチになるまで踏み躙っていたんだろうけど。
ともあれ。
極悪なトラップの発見と『竜殺し』の誕生により、フリセノアの冒険者ギルドはお祭り騒ぎになりかけた。
だけど、どうにか僕のことは話を広げない方向で収めてもらえるように頼み込んだ。フリセノアの冒険者ギルドのギルドマスターはいい人そうだったので、たぶん大丈夫だろう。
念のため面倒なことになる前に、なるべく早くフリセノアを出発することにしたけども。
と、ここまでが後処理の話。
ここからが、セーラ達との大事な話し合い、という名の贖罪の時間だ。
※※※※※
「――今まで黙ってて、ごめん」
僕は、セーラ達に全てを打ち明けた。
転生したこと。
スキル【殲滅】のせいで自暴自棄になったこと。
セーラ達に追放されようとしていたこと。
セーラ達を裏切っていたこと。
何もかも全て。思っていたことを吐き出した。
情けなく、みっともない。自分でもよく分かっていない支離滅裂で、矛盾だらけの感情を。全部包み隠さず話した。
ほとんど理解も出来ない、聞くに耐えない独白だっただろうに。セーラ達は最後まで僕の話を聞いてくれた。
僕の話が終わったタイミングで「……はぁっ」とセーラは大きなため息をつく。
「サネヤ、何度でも言うけど、あんたバッカじゃないの。あたし達に相談すれば解決してたじゃない」
セーラはとても不満そうな顔をしてる。
それは……そうかもしれないけど。
たしかに、セーラ達が僕のことを追放する気がないことは、ちゃんと話をすれば分かったことだ。
なにより僕自身も、セーラ達が僕を受け入れてくれてるんじゃないかと思うことはあった。
でも。
「……固有スキルが使えない僕なんかいらないって言われると思い込んでたから」
本当に追放された時に落ち込まないように、無意識のうちに予防線を張って傷を小さくしようとしてたんだろう。
結局、自分勝手に考えて一人で抱え込んでいただけだった。
「あんたは固有スキルを絶対視しすぎなのよ。使えなくたってそんなに困らないわよ」
セーラがあっけらかんと言い放つ。
「そうだよ。私達だって大した固有スキルでもないし、才能もないから解散しかけてたんだよ? それを救ってくれたのは、他でもないサネくんだし」
「固有スキルがなくたって、俺たちはすげぇ助かってるんだってことをいい加減分かれよ」
ヒスイとコガネもまるで当然のことのように言う。
助かっている、気にするな、サネヤのおかげだ、などの優しい言葉の数々。この半年間、3人には何度も言われていた。
だけど、僕はその度に気のせいだ。お世辞だ。なんなら遠回しな嫌味だと思っていた。自分から思い込もうとしていた。
自分の殻に閉じこもって、見聞きすること全てを都合のいいように、『ざまぁ展開』に繋がるように考えていた。
セーラ達は、僕を仲間だと思っている。そんな単純な事実を素直に認めることが出来なかった。認めるのが怖かっのだ。
そこからは、今度はコガネとヒスイによるお説教タイムが始まった。ただ、ヒスイはキスの件を口にしなかった。おそらく横でセーラが睨みを聞かせているからだろう。
「――やっぱりサネくんって自己評価が低すぎるんだよね。それと、私達のことを高く見積りすぎ」
そんなことはない。僕は戦闘で役に立ててなかったのは事実だし、セーラ達が強かったのも事実だ。
だが、僕が何かを言う前に、セーラに釘を刺される。
「あんたにも言い分はあるんでしょうけど、あたし達にもあるの! というか、あたし達の方があるの!」
そのままセーラも参戦して、お説教タイムはさらに長引く。
申し訳ない気持ちでいっぱいだったけど、どこか心地の良い時間だった。3人とも本当に僕のことを役立たずだなんて思ってなかったことを思い知らされたから。
「まぁ、色々言ったけど。最後に私から一つだけ!」
そう言って、ヒスイは満面の……というよりはニヤニヤした笑みを浮かべた。
「サネくんを追放するなんてあり得ないよ。だって! セーラはサネくんのこと大好――もがっ」
何かを言いかけたヒスイをセーラが無理矢理黙らせる。どこかで見たような、光景。……さっき見たばっかりだな。
「あんたは一々、余計なこと言わなくて良いのよ!」
「邪魔しないでよ、セーラ。これを教えてあげたら、サネくんも自信が持てるじゃん!」
「もう言えばいいじゃねぇか。せっかくキスした――」
ヒスイをフォローしかけたっぽいコガネを、セーラが視線だけで黙らせる。
だけど、ヒスイもコガネもジトーっとした目でセーラを睨み返している。
2人の視線を受けたセーラが諦めたように「分かったわよ」と呟いて、僕の方を向いた。
「……あたしがサネヤを連れてきたのよ。だから、追放なんて絶対しないわ。出て行くって言ったって許さない。あんたは、ずっとあたし……達と一緒にいるの!」
ヒスイはセーラの言葉に何故か少し不満そうだったけど、僕には十分、勿体なさすぎるくらいだ。
『追放だ。出て行け、役立たず』
僕は、ずっとこんな台詞を待っていた。
セーラが言ってくれた台詞は、かつて僕が望んだものとは真逆。言うなれば、『追放しない宣言』だ。
だけど、僕はとても嬉しかった。嬉しく思える自分に変われたことに安堵する。
僕は、今日、ようやくセーラとヒスイとコガネと本当の意味で仲間になれた。その事実を認めることが出来たのだ。
※※※※※
異世界転生をしたその日に、楽しい異世界ライフも、仲間も、出会いも、僕は色々と諦めた。
だけど、そんなことはなかった。
僕は、一人でちょっと悩んだだけで結論を出した。だから、間違った道に入り込んだ。自分を騙して、誤魔化して、必死にその道を進み続けようとした。
セーラ達は、僕を正しい道に引きずり戻してくれたのだ。僕は、今日も明日もずっと追放されずに、セーラ達と冒険していく。
これからは、理想の『ざまぁ展開』を目指すためなんかではなく、もっともっとセーラ達の役に立てるように頑張っていこう。
何もかも諦めるには、まだ早かったのだ。
-完-
お読みいただき本当にありがとうございました。
そして、評価、ブックマーク、いいねをしてくださった方々にも最大の感謝を。
というわけで、最終話。ほんの少しでも楽しんでもらえていたら幸いです。
【後日談】を4人の視点(特にヒスイ)で書くつもりです。読んでもらえるとうれしいなぁと思います。ただ、すぐには投稿出来ないので、完結済にしました。
一応、4月中には投稿するつもりです。忙しい&諸事情でPCとWi-Fi環境を失ったので、すぐには書けないのです。数話前からスマホで投稿していて、目が疲れて死にそうなのは内緒。
こんなところまで、読んでくださった方に改めて感謝を。本当にありがとうございました。




