↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/34

第22話:-再反転-

 再反転、ということなら【15話】以来のサネヤ視点。

()()()()のよ」


 セーラにキスをされた。

 そのことを理解すると同時に体を縛っていた感覚が消える。


 …………これは……スキル【殲滅】が解けたってこと? なんで?


 キスをしたまま、至近距離でセーラと目が合う。髪と同じ綺麗な藍色の瞳。よく分からない状況のまま、僕は目を奪われた。


「!」


 目に見えてセーラの顔が赤くなって、ドンっと突き放される。コガネとセーラの魔法で支えられてなかったら吹き飛んでたと思えるくらいの勢いだ。


 というか、突き飛ばされなくても立っていられないくらい僕の体はボロボロだ。


「……こ、これは! あんたのスキルを止めるためであって! き、キスとかじゃないから! 人命救助だから! 分かった? 分かったって言いなさい!」


「……わ、分かった」


 すごい剣幕に押されて返事をする。セーラと話していると、よく分からないまま「分かった」と言わされることが多い。いつものやり取りだ。


 だが、セーラはいつもより勢いがない。


「そ、そう。……なら、良いわ」


「…………」


 しばし、沈黙が場を支配した。


 気まずい。


 キスをされたのもあるけど。僕としては、色々全部諦めて、スキル【殲滅】を起動したのだ。


 僕なんかを仲間だと思ってくれたセーラ達を助けることが出来れば、それで満足だった。


 それなのに、気が付いたらセーラとキスをしてたし。何故かスキル【殲滅】も解除されている。今まで、どれだけ解除しようとしても途中で終わることはなかったんだけど。


 ……僕、どんな顔してればいいの? あと、体中が痛い。


「と、とりあえず、ヒスイ! サネヤの治療してあげて」


「任せてって言いたいんだけど。……もうサネくんに近づいて大丈夫?」


「大丈夫よ。そうでしょ、サネヤ?」


「えっと、うん。……大丈夫だよ」


 体中が痛いけど、僕の意思で動かすことが出来る。スキル【殲滅】はやはり終わっているのだ。


 そろそろと近づいてきたヒスイに、回復魔法をかけてもらう。その間に、セーラの魔法も解除してくれた。


 スキル【殲滅】も終わり、傷も治ったので、ちゃんと自分の足で地面に立つことができた。


 お礼を言おうと顔を上げると、ヒスイがすごくニヤニヤしながら、僕とセーラを見ていた。


「もう大丈夫ってことは、セーラとのキスの件について掘り下げても良いってことだよね? 良いよね! サネくん、セーラの唇どうだった?」


「い、今そんな話してる場合じゃないから。黙ってて!」


「えー、私はキスの話は大事だと――もがっ」


 セーラが無理やりヒスイを黙らせる。ヒスイもかなり抵抗したけど、大人しくなった。……まぁ「あとで、絶対聞くからね!」と言っていたけど。


 かなり乱暴な止め方だったけど、正直助かった。僕も、どう答えていいのか分からない。


 というか、どの面さげて、みんなと話せば良いのかすら分からないのだ。


 僕が何も出来ずにうじうじしている間に、セーラは何かしら心を決めたらしい。


 まだ若干顔が赤いセーラがこちらを向く。まぁ僕もセーラのことを言えないぐらい顔が赤い気がするけど。


「それじゃ、改めて」


 そして、セーラは目をカッと見開いた。


「サネヤ、あんたバッカじゃないの! 何考えてんのよッ! どうするつもりだったのよッ!」


 それからセーラによる長い長いお説教が始まった。






 ※※※※※






「大体、何で一言も相談しないのよ!」


「……えっと、その……」


「他にもっとやりようがあったかもしれないのに!」


「……いや、僕なりに考えてはいたんだけど……」


「大体、サネヤはいつもいつも――」


「……はい、ごめんなさい。反省してます」


 僕はまともに口を挟むことすら出来ずに、セーラのお説教を拝聴していた。


 僕はほとんど、というか何も説明していなかったのだが、セーラは状況をほぼ完璧に理解している。すごい洞察力と推理力だ。


 たしかに、セーラの言う通り、僕は短慮だった。もっとやりようはあったと思う。だが、僕もいっぱいいっぱいだったのだ。


 スキル【殲滅】の性能を知ったときから、僕はどうして良いか分からなくなった。固有スキルの使えない自分に存在価値を見出せなかったから。


 何にも自信がない僕は異世界に転生しても無力だった。無力な僕をどうにかしてくれるのがスキルのはずだったのに。そのスキルは僕の手には余るものだった。


 共闘なんて出来るはずがないのに、一人でいることが嫌だった。


 無理やり自分を騙して『ざまぁ展開』を目指すという目標を掲げて。僕が役立たずであることを正当化しようとした。


 それなのに、セーラ達と仲良く冒険できることを楽しんでしまった。セーラ達に追放されることを恐れているからこそ。追放されるように動いているんだ、と自分に言い聞かせて。


 でも、追放されないことに安心する。そして、安心した自分に嫌気がさす。そんな矛盾の繰り返し。


 僕の心はぐちゃぐちゃになっていたのだ。


 …………だからといって、全面的に僕が悪いことに変わりはないんだけれど。


 セーラのお説教はまだまだ続いている。僕はひたすら謝りっぱなしだ。



「セーラ、そろそろ落ち着けよ」



 だいぶ経ってから、コガネが仲裁に入ってくれた。ちなみに、コガネはセーラと僕がキスした辺りから気配を殺していた。


 おそらく下手なことを言ったら、セーラが爆発する危険性が高かったからだろう。まぁ、ヒスイは果敢に踏み込んできたけども。

 

「サネの言い分も聞いてやれ、って言いたいとこだけどよ。とりあえず、ここから出ようぜ」


「……そうね」


 流れるようにお説教が始まったので、僕達はまだダンジョンの中にいるのだった。


「たしかに、一旦帰るべきね。まだまだ言いたりないけど!」


 そう言ってセーラは、こちらをジロリと睨んだ。ごめんなさい。


「勘違いすんなよ、サネ。俺もお前に言いたいことは沢山あるんだからな」


 コガネにも睨まれる。


「言っとくけど、私もだからね。キスの件だけじゃなくて、聞きたいことも言いたいこともあるんだよ」


 続けてヒスイにも睨まれた……んだけど、その目は好奇の色で溢れていた。キスのことを聞く気満々じゃん。


 セーラはお説教中にキスのことについて頑なに触れなかった。最初に言ったように、あのキスはあくまでスキル【殲滅】を解除するために必要な措置だったのだ。


 何でキスでスキルが解けたのかとか聞きたい気持ちはあるけども、自分から聞くのは恥ずかしくて無理だ。もう少し時間をおかなければ。


 だからあまり触れないで欲しいんだけど、ヒスイの目はキラッキラしていた。ダンジョンから出たら、すぐにでも聞いてきそうな雰囲気だ。やめて欲しいなぁ。


 そんなヒスイを嫌そうに見たあとに、セーラは僕の目を真っ直ぐに見据えた。


「とりあえず、これだけは覚えときなさい」


 セーラの真剣な顔に、限界まで伸ばしていた背筋をさらに伸ばして姿勢を良くする。


「あたし達は、とっくの昔から。それこそ、あたしとあんたが出会ったあの日から仲間なの。見捨てるとか、ましてサネヤを殺すなんて選択肢はなんて存在しないのよ」


 セーラの声は厳しいけれど、どこか優しげで。物分かりの悪い小さな子供を諭すかのようだった。


「本当に殺して欲しかったなら、言うのが()()()()わね」


 最後にそう言って、セーラはイタズラっぽく笑った。その笑顔は今までで一番魅力的で、僕は思わず見惚れてしまう。



「じゃ、話の続きは街に帰ってから! こんなとこ、ささっと出なきゃね!」



 そうして、僕達はダンジョンからすぐに脱出…………することは出来なかった。



「もう、どこにあるのよ、魔法陣!」



 結局、僕たちがダンジョンから脱出することが出来たのは、それからたっぷり10分以上も経った後だった。


 魔法陣が入念に隠されていて、スキル【索敵】で見つけることが出来なかったのだ。やはり僕は役立たず……かもしれない。


 だけど、今日も僕は追放されることはない。これからも運命の日は永遠にやってこないのかもしれない。


 そんな単純な事実を、まともに嬉しく思えたのは今日が初めてだった。


 お読みいただきありがとうございます。 


 ようやく再反転しました。



 21時過ぎに投稿したつもりだったのに、投稿出来てなかった。なにゆえ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。