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第17話:真の仲間への歩み~サネヤとデート~

 【第08話】の反転、という名のヒスイとセーラ視点。


「……ふぁ、ねっむ」


 イガチレスの宿屋で、私、ヒスイは大あくびをかましていた。眠いのだ。とても眠いのだ。


 今日はお休みなので、本当ならもっと寝ているはずだったのに。セーラめ。


 朝から騒がしく準備をして私を叩き起こしやがったセーラは、傍から見てもウッキウキな様子でサネくんを迎えに行った。サネくん、まだ絶対寝てると思うんだけどなぁ。


「……まぁ、もう行っちゃったし。サネくん、どんまい」


 私がもう一度寝ようとしたところで、セーラは帰ってきた。案の定、むすっとした顔している。


「まだ起きてなかった! 昨日、出かけるって言っといたのに!」


 いや、そりゃそうだよ。まだ朝早いもん。


「セーラが楽しみ過ぎて早く起きただけでしょ」


 と、言ってやりたい。というか、普段なら言うのだが、今は眠いからむきになったセーラの相手をするのは面倒くさい。サネくんが良く言ってるけど、お口にチャックだ。


 てか、私まで起こすなよ。昨日の夜、服を選ぶのに夜遅くまで付き合ってあげたじゃん。なんでまた起こされにゃならんのよ。


 そう主張したとて、私の正論はどうせセーラには届かない。恋する乙女は盲目だし、人の話を聞かないのだ。とても厄介な相手だ。


「だいたいサネヤは、いっつも――」


 そこから、文句に見せかけたサネくん好き好きアピールが始まった。


 セーラは、サネくんにメロメロだ。この半年の間で、驚くほどサネくんを好きになっていった。というか、わりと出会ってすぐにメロメロになってた気がする。まぁ、本人は断固として否定しているけども。


 サネくんは、基本暗いけど優しいし気が遣える。そして、セーラはチョロい。親友としては心配になるチョロさだが、まぁサネくんは良い人だから大丈夫だろう。


 どちらかと言えば、心配なのはサネくんの方だ。セーラは優しくないし気も使えない。素直じゃないし、意地っ張りだし、乱暴で強引だ。セーラに付き合うのは大変のなのだ。サネくん、がんば。


 私は、親友同士の仲をふわふわ考えながら、半分以上寝かけていた。その間にもセーラは何かプリプリ文句を言っていたが、よく聞こえない。まぁ、どうせ大したことじゃないし聞かなくてもいいでしょ、と思っていたのに。


「ちょっと、何でもう一回寝ようとしてるのよ! 起きて」


「……んあっ。……もぉ、なに?」


 乱暴に肩をゆすられて起こされる。セーラめ、何てことしてくれるんだ。私は眠いの!


「サネヤに下で待ってるって言ったの。ほら、準備して」


「えー、私まだ寝てたいんだけど。サネくんと2人で食べてくればいいじゃん」


「あんたほっとくと、朝ご飯食べないじゃん。行くわよ」


 コガネだって、絶対起きてないのに。

 サネくんは優しいからコガネを起こさないのだ。ずるい。



 私は、なんとか体を布団から引きはがし食堂のテーブルにたどり着いた。


 乙女なセーラは、好きな人と一緒にご飯が食べたいお年頃。自分がサネくんと一緒に食べたいからって、一緒にご飯を食べるのをパーティの慣習みたいにしないで欲しい。私は、朝は寝たいのだ!


 セーラは素直じゃないので、一緒にいたらいたで文句ばかり言っている。


 対照的に、サネくんは素直でいい子なので、セーラの文句をちゃんと聞いている。そして凹んでいる。もっと聞き流せばいいと思うんだけど。サネくん、根暗だからなぁ。


 いつかセーラが素直になる日を待つしかない。それまで、サネくんには頑張って耐えてもらおう。バランスをとるために、私はサネくんに優しくしなければ。



「サネくん、おはよう」



 私は、なるべく優しくサネくんに話しかけた。あんまり優しくし過ぎるとセーラが拗ねるので注意が必要だ。めんどい。


 その後、3人でご飯を食べ終え、セーラ達はデートに出発だ。デートなんて言ったらセーラは絶対怒るけど、昨日からセーラの様子は完全にデート直前の乙女だ。


 ちなみに、朝ご飯の間には当然のようにコガネは起きてこなかった。なのに、サネくんは食堂のおばちゃんに頼んでコガネの分の朝食をもらっている。


 あの野郎、ずっと寝てるくせに朝ご飯まで準備してもらいやがって。羨ましい。

 サネくんは、コガネを甘やかしすぎだ。てか、セーラがもっと私に甘くなれ。



「じゃあ、大変だと思うけど頑張ってね、サネくん」



 出発直前に、応援だけはしておく。私、優しい。


 サネくんは、付いてきて欲しそうな顔をしていた。けど、私が付いていったらセーラの機嫌が悪くなるに決まっている。セーラはサネくんと2人きりで買い物デートする気なのだ。邪魔しようものなら殺されかねない。


 あと、セーラの買い物は長いから、単純に付き合うのが面倒くさいという理由もある。私の優しさにも限界があるのだ。サネくん、マジがんば☆






 ※※※※※






 今日のあたしは機嫌がいい。


「次は、あっちに行くわよ!」



 自分でも声が弾んでいるのが分かる。これは、久しぶりに買い物が出来て嬉しいからだ。決して、サネヤと2人きりでお出かけしているからではない。


 あと、これはデートなんかではない。楽しいけど、めっちゃウキウキしてるけどデートではない。


 あたしの気のせいかもしれないけど、後ろから道を教えてくれるサネヤも楽しそうに見える。というよりも、サネヤは戦闘しているとき以外は楽しそうだ。


 戦闘の時のサネヤは、いつも死にそうな顔をしている。そんなに心配しなくても、ちゃんとあたしが守るのに。そのくせ、すぐに自分から囮になろうとするのだ。心配だから、無茶はやめて欲しい。



 サネヤの印象は、出会ったころから変わっていない……わけではない。第一印象は、暗くて自信がない男の子。今は、そこに優しくて気が遣える、というのが加わる。


 この半年の間、サネヤは色々頑張っていた。パーティのためにと言って色んなスキルを習得して、雑務もガンガン引き受けてくれた。そして、常にあたし達に気を遣ってくれていた。


 だが、サネヤが自信を持つことはなかった。いつまでも根暗で卑屈。あたし達が何を言っても聞く耳を持たない。


 いつまでたっても背筋は伸びないし、下を向いて歩いてる。そんな自信のないサネヤを見てると、ついイライラして文句ばかり言ってしまう。


 サネヤは、戦闘に参加しないことをすごく気に病んでいる。実際には、スキル【索敵】を中心に様々なスキルでアシストしてくれているのに。それに、荷物を持ってくれていることがどれだけ助かっているかを分かっていない。



 サネヤはもっと胸を張っていいし、張って欲しいと思っている。



 まぁ、サネヤは筋金入りの根暗なのだろう。あたしは、時間をかけてでも心を開かせる作戦を実行中だ。効果が出ているのかは分からないけど。


 サネヤにもっと自然体で話して欲しくて、あたしはいつも自然体で振る舞うようにしている。ただ、自覚はあるけど、あたしの自然体はアレなので、サネヤがさらに委縮してないかが心配。



 今日の買い物は楽しかった。疲れた顔をしているけど、きっとサネヤも楽しかったはずだ。楽しんでくれてたらいいなぁ。


 とにかく、今日はサネヤがあたし達との間に感じている溝(そんなもの本当はないけど)を少しでも埋めることが出来たはずだ。


 あたし達とサネヤが真の仲間になる日は近いに違いない。

 【第08話】ありきで書いたので、良ければ【第08話】もぜひ。


 街の名前は、イガチレス。てけとーです。

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