ままの夢は夢:話51第
第15話:夢は夢のまま
「反転」感を出したかったけど、読みにくいだけだった。
【第02話】の「色々あった」の「色々」の部分の話。
( 遡ること、半年と少し )
僕は、森で一人迷子になっていた。
現在進行形で街を目指しているのだが、一向にたどり着く気配がない。
僕、異世界転生したんだよね?
何で一人寂しく森を彷徨わなくちゃならないの?
こうゆう時、普通なら誰かと出会うはずだ。
ヒロインと出会ったり、山賊に襲われているところをヒロインに出会ったり、魔物に襲われているところをヒロインに出会ったり。…………そうだね、ヒロインに出会いたい。
せっかく異世界に来たのだから、夢ぐらい見ても良いだろう。
現実世界で彼女どころかまともに話せる女の子の知り合いなんていない僕に、ハーレム展開が出来るとは微塵も思わない。だけど、異世界転生補正で可愛い女の子と出会う可能性はあるはずだ。
そうだ! 何をしたら良いのか分からないんだから、自分で決めよう。
「……決めた。ほのぼのライフを目指そう」
さっきまで、僕が読んでいた殺伐とした追放モノではなく。女の子やモフモフに囲まれた、異世界ほのぼのライフだ。
僕は、追放モノの『ざまぁ展開』が大好きだが、自分で出来るとは思わない。あれは、傍観者の立場で読むから楽しいのだ。たぶん、自分が追放されたら凹んだまま立ち直れない。
とりあえず、第一歩として、女の子と出会って仲良くなろう!
………………なんて思っていた時間が、僕にもありました。
※※※※※
どうやら女の子と出会うなんて、例え異世界であっても僕には高望みだったようだ。
「ここ、さっきと同じ場所…………じゃないよね?」
森を探索すること(体感)数十分、一向に街に着く気配はなかった。
せっかくなら大きな街を目指したかったが、もう町でいい。なんなら村でもいい。
ヒロインに出会いたいなんて言わない。この際、山賊で良いから人に会わせてくれ!
そんな想いが通じたのか、後ろの茂みからガサゴソ音がした。山賊で良いと言ったけど、出来れば可愛い女の子であれ! という思い込めて振り返る。
茂みから出てきたのは、ゴブリンだった。それも、十数体はいそうな群れ。
久しぶりに生物を目にしたが、テンションは驚くほど上がらない。むしろ、気分は最低だ。善悪は問わないから人、せめて意思の疎通が図れそうな相手が良かったなぁ。
「××××!」
何言ってるのか全く分かんないけど、友好的ではないことだけは分かる。
ゴブリンと言えば、雑魚モンスターの筆頭格だろう。だが僕にとって、目の前にいるゴブリン強さは重要ではない。どうせ勝てないからだ。
僕は、喧嘩なんてしたことがない。つまり、僕に出来るのは、全力で逃げつつ誰かに助けてもらうのを待つこと。完全に他力本願だ。
「……ばいばい!」
僕は全力で駆け出した。どうせ迷子なんだから、どの方角に逃げても構わない。
「××××!」
言葉とはいえない叫びを発しながら、ゴブリンは僕を追いかけてくる。
「……はぁはぁ。いや……しんどっ!」
異世界に来たっていうのに、身体能力は驚くほど向上していない。そこは異世界転生補正でなんとかして欲しかった。まだ、数百メートルも走ってないのに。すでに横っ腹が痛い。
そんで、この森広いんだよ! 全然、森抜けないし、行き止まりにも行きつかない。このままじゃすぐに追いつかれる。
かといって、戦える気は全くしない。ただ、僕には、詳細はよく分からないけどスキル【殲滅】がある。
僕はぶっつけ本番は好きじゃない。石橋は叩いたうえで他の誰かが先に渡るのを見届けてから渡りたいタイプの人間だ。
だけど、もうやるしかない。いつまでたっても現れないヒロインに期待するのはあきらめよう。というか、走るの疲れた。何か起これ!
「――す、スキル【殲滅】……き、起動……?」
これで良いのかな? そう思った瞬間、逃げていた足が強制的に止まり、視界に靄がかかったようになる。
――スキル【殲滅】、起動。
何もしていないのに、ゴブリンの数と位置が流れ込んできた。なんだこれ? これがスキル【殲滅】の力なのか? と思っている間に、僕は一番近くにいるゴブリンに向かって突撃した。
そして、殲滅が始まった。
さっきまで僕を追いかけてきていたゴブリンを、今度は僕が追う番だった。逃げ惑うゴブリンを、追撃し頭を打ち砕く。首をへし折る。胴体に風穴を開ける。敵の攻撃は、近くにいるゴブリンを盾にして受ける。
まさに殲滅だった。相手の息の根を確実に摘み取って、亡骸を踏みにじる。
明らかに戦意喪失して、逃げ出したゴブリンに凄まじい跳躍で追いつき、地面に頭を何度も叩きつける。
その間、僕には何も出来なかった。ただ、ゴブリンが無残な血だまりに、肉塊に、ミンチなっていくのをスキルに操られて見ていた。ずいぶん過激なクッキングだ。
そして、殲滅を続けること数分。ゴブリンの反応が消滅したことが分かった。
直後、体を縛っていた感覚が消え、視界にかかっていた靄も消えた。
「……終わった………………のか?」
足から力が抜け、思わず膝をつく。もう体の自由がきくようになっていた。つまり、スキル【殲滅】の発動は終了したという事だろう。
僕の周りには下ごしらえが終わってミンチになったゴブリンが転がっていた。これを、僕がやったのか。
「………………う゛っ」
あまりの光景に吐きそうになるがなんとか堪えた。これが……僕の、固有スキル?
※※※※※
スキル【殲滅】は、想像の倍以上の鬼ヤバスキルだった。穏やかじゃないどころの話ではない。
ただ、どう考えても共闘に向いていない。全く体の自由はきかなかったし、途中でやめようとしても止めれなかった。
『自動的に攻撃し』『発動し続ける』
ステータス画面の説明にあった通りだ。
………………これじゃ、スキル【殲滅】は使えない。危険すぎる。
そして、スキルがなければ、僕はゴブリンからも逃げきれないような雑魚。特技もなければ、コミュニケーション力もない。
「………………」
僕は思い出した。
さっきまで読んでいた追放モノの続きを読んでいないことを。これは続きを自分の手でやってみろ、ということだな。そうだ、そうに違いない。
「……決めた。『ざまぁ展開』を……やろう」
自分の口から出た言葉なのに、自分の声とは思えないほど震えていた。これじゃダメだ。シャキッとしないければ。
思い込め。忘れろ。
僕は、最初から『ざまぁ展開』を目指していたんだ。
その後、森を一人で彷徨っている間に、僕は自己暗示をし続けた。…………自分を騙さないと、やっていけない。
都合の良いことに森は全く抜けられなかったので、時間はたっぷりあった。




