表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/83

『碧の章』第58話:暗闇の日、碧の終わり。

 もしこの結末を知っていたら、利緒達の選択は変わったのだろうか。

 あるいは、知っていたとしても結果は変わらなかったのかもしれないけれど。


 1つ、事実として言えることは、ニーアムナイクロティープの元へ向かった7人は、彼女と会った後に消息をたったと言うこと。

 もっといえば、ニーア自身も行方不明者の1人だった。


 この日、世界を暗闇が覆った。

 それは蒼の荒野から、マギニア、果ては黄葉の里を超えて、文字通り世界である。


 異様な光景に何事かと騒ぐもの。

 世界の終わりだと嘆くもの。

 魔法による一過的なものだと気にも留めないもの。


 それぞれ、一定数いたが、本当の脅威を感じ取ったものは少ない。


「……アルドグラシアリアス、久しぶりだね」

「……ああ、生きていらしたのですか」


 アルドは、己の執務室に訪れた男を見て、感嘆する。


 白髪と右目を抉る深い傷の男。遠く昔の記憶と寸分変わらない姿。

 左右には、青い髪の仮面の少女と、黒い肌に覆われた長身の男がいた。


「ハイネインプシュケも元気そうで何より。ニーアムナイクロティープはご一緒ではないので?」

「ニーアには役目がある。兄上殿の用事だ」

「なるほど。それで私は、何をすればよろしいか、我が主人ロガン」

「ひとまず、扉の向こうの彼女を呼ぼう。他にこの町の偉い人を呼んで欲しいんだけど、誰かな?」


 ロガンが口にするがはやいか、仮面の少女は入り口を超えて、聞き耳を立てていたネメルの首を抑える。

 乱暴しないように、というロガンの言葉を受けて力こそ抜いたものの、ネメルはその圧力に身動きが取れなかった。


「……2人ほど。1人は大魔道グウェイ・キ・ディスティマン。もう1人はクルエルポーフィンが都市の管理運営をしておりますので、この場へお呼びします」

「クルエはいいや。グウェイだけ頼む」


 アルドは、ロガンに一礼し、雷に魔法を起動する。

 現れた精霊は、即座に光の筋となってグウェイの元へと飛ぶ。暗い空に一筋の雷光が走った。


 到着を待つ間、部屋は静かになる。

 元々アルドはあまり喋る質ではなかったし、仮面の少女は無言を貫いていた。

 ハイネインプシュケもどうようであり、ロガンは何か思案しているようだった。

 ネメルは恐怖に口がきけず、結局誰1人喋ることがない。


 しばらくして、扉が勢いよく開かれた。

 そこにはグウェイの姿があった。


「……ちっ、おいアルド、詳しい説明頼むわ」


 目は血走っていたが、中の諸々を見て状況のまずさを理解すると、グウェイは舌打ちした。

 表面だけは落ち着いて、状況確認をアルドに求める。


「主人殿、良いですか?」

「ああ、それじゃあ始めようか。ただもう少しだけ待ってくれ」


 ロガンは目を瞑り、何かを感じ取るように手を伸ばす。

 パチン、と指がはじけて、空を覆っていた暗闇が消え去った。


「……これは、お前がやったって言いたいのか?」

「いいや、兄上殿が頑張ってくれているんだ。さて、空も晴れたことだし話を始めよう」


 果たして、世界は大きく動き始めた。


 クーネアとともに、利緒の姿を消して。

ブクマ感想頂けると励みになります。よろしくお願いします。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ