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『碧の章』第41話:アルドの執務室で

 夕暮れ時、利緒とクーネアの2人はアルドの執務室にいた。

 用件は、クーネアの試練への同伴願いである。


 グウェイに話をしたところ、利緒の予想に反してお咎めはなく、アルドから許可が下りるようなら問題ない、と言われた。


 そのままアルドのところへ向かうも事前に面会の予約が必要と言われた。

 ちなみに次の予定は3日後と、とても間に合わなかったため、明日に控えた試練に関すること、と言って無理をして時間を作ってもらった。

 利緒は特別扱いさせることに若干の心苦しさを感じたものの、クーネアのためと割り切った。


「さて、カンナリオ。君が来たのは試練について、と言うことであったが……」


 相変わらず抑揚のない響く声で語るアルド。利緒は思わず身構える。


「横にいるルナフィアを試練に連れて行きたい、という申請で相違ないか」

「ええ、間際になってのお願いで申し訳ないですけど、許可を頂きたく」


 圧力は相当だが、命までは取られまいと、利緒は毅然とした態度で臨む。


「カンナリオは、この申請にどの程度の承認作業が必要か知っているか」

「僕の場合、2日でしたよね。特例で優先していただいたとも聞いています」

「そう、緊急対応で2日、本来であれば1週間は必要だ」


 机の上には書類の束があり、さらにその上にアルドが組んだ手を置いている。

 その姿勢に、無茶をしている自覚がある分、利緒は押され気味だった。


「無理を言っているのは承知しています。そこを押してお願いしたいんです」


 利緒はお願いします、と頭を下げる。慌てて、クーネアも続いた。


「規則は規則。願って叶うものではない」

「分かっています。でもこれしか出来ることはないので」


 頭を下げたまま、利緒は答える。


 クーネアの成長のため、など考えていた理由は色々とあったが、この場面でそれを持ち出すことはしなかった。

 これはグウェイからのアドバイスでもある。


 まずは愚直に願え。足りなければその後に考えろ。

 横紙破りである以上、誠意を見せろ。下手な交渉をするよりも可能性は高い。


 目を瞑って、アルドの答えを待つ。

 短い時間も何倍にも感じる緊張。静かな部屋が余計に際立たせた。


「頭を上げろ。カンナリオに1つ聞きたい」

「……何でしょうか」


 正面に座すアルドと視線が交差し、一層強くなる重圧に気合いを入れる。


「君がこれから向かう『覇王の試練』強さこそを必要とする試練に、ルナフィアは耐えられるか」


 この問いに、クーネアが息を飲む。

 利緒について行きたい気持ちは強く何者にも負けないと思っているが、それだけでどうにかなれば、そもそも苦労していないからだ。


 しかし、そんなクーネアの心配を知ってか知らずか、利緒は胸を張って答える。


「ええ。当たり前です」


 利緒は《巨壁》を前に一歩も引くことなく挑んだ姿を思い起こす。

 彼女なら間違いなく耐えられる、試練を超えられる。


「そうか」


 躊躇うことなく帰ってきた回答に、張り詰めていた空気が緩んだ。

 アルドの表情は何一つ変わっていないが、なにかしら納得したようだ。


「ここに試練への参加申請書がある。さて、ここには誰の名前もないがすでに許可印が押してある」


 アルドは手元の書類から1枚の紙を抜き出して、利緒に渡した。

 それはアルドの言う通り、申請者名以外の処理が全て完了していた。


「これって不正ですよね」

「カンナリオがここに来なければ、そこにはアリアの名が書かれていた」


 その台詞は、利緒とクーネアが黙っていれば、何も問題ではないと言外に語っていた。

 利緒は、クーネアに書類を渡すと改めてアルドに礼を言った。


「感謝するのなら、アリアにするがいい」


 もし、他の誰かが来るようであればその人に譲る、という話を前もってしていたらしい。

 そして、グウェイもその話を知っていたようだ。


「正直に言えば、ルナフィアよりもアリアの方が適任である。しかしカンナリオがルナフィアを選んだ以上、それが正しいことであったことを願う」


 クーネアの署名入りの申請書を受け取ったアルドは時間だと言って、利緒とクーネアを退室させた。


 退室してからしばらく歩いたあたり、周囲に誰もいない場所で足を止めた。

 今更になって、利緒とクーネアは心臓の鼓動が強くなっていることを感じた。


「最初から渡してくれたらいいのに」


 あそこまで追い詰めなくても良かったじゃないかと、廊下の壁を背に、ズルズルと崩れ落ちた利緒は愚痴る。

 クーネアは、そんな利緒を笑って見ていた。


(まぁ、この顔が見られたならいいか)


 嬉しそうなクーネアに、利緒は独りごちる。


「リオ、何か言った?」

「……ああ、アリアに感謝しないとなって」

「そうだね。アリアさんにはちょっと悪いことしちゃった」


 クーネアの手に捕まって、利緒は立ち上がる。

 2人はそのまま、アリアの元へ向かった。

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