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『碧の章』第40話:クーネアの気持ち

「初めは、面白い人に出会えたって思ったんだ。生体遺物と思ったから、少し興味の方向性は普通と違っていたと思う。そのあとすぐに私の知らない魔法を使って、そんなリオに出会えた私運がいいな、なんて考えてた」


 クーネアの話は、出会った時の事から始まった。

 独り言のように始まった独白。利緒は黙ってクーネアの話に耳を傾ける。


「遺跡のゴーレムは、リオの魔法のおかげで倒すことができた」


 《巨壁》との戦いは、クーネアがいたから勝つことができたと思っているが、クーネアはそうではなかったようだ。


「ディスティマン先生に認められて凄いと思った。あの魔法の連打は見ていて頭がおかしいんじゃないかって思ったけど、リオは毎日気絶するまで特訓していて、やっぱり凄いんだなぁって」


 毎日鳴り響いていた魔法と、必死に逃げ惑う利緒という格好のつかない日々の事。

 利緒は嫌な思い出に苦い顔をする。もし、クーネアが利緒の表情の変化に気づいていたら、何かが変わっただろうか。

 クーネアは、リオの方を見る事なく、言葉を続ける。


「生体遺物だから作られた時点で能力は高い。それはそうなんだけど、それならなんであんな大変な目にあう必要があるの。初めからなんでも出来るなら、努力はいらないのに、それなのにリオは日々努力していた」


 流されるままに流されていただけだよ、と利緒は心の中で呟く。


 もし、これが元いた世界ならできなかった事だ。

 勉強よりも遊びを優先していたのは、ある種の逃げなのか。

 利緒はあの頃の自分を思い出して、今なら向き合えるだろうかと考える。


「いつの間にか、リオはブレガに認められるほどの実力があった。あいつは気に入らないけれど実力は本物。口だけの私と違って、正面からぶつかって、すこし羨ましかった」


 次々と変わる様々な感情。クーネアは、己の抱く思いの意味がわからない。

 クーネアは勢いのままに言葉にできない自分を吐き出す。


「あの仮面に庇われた時ね、私は何もわからなくなっちゃった。助けてもらえて嬉しかった。でもリオがあの仮面の何かされるんじゃないかと思うと、怖かった。話をしているのを見るのが辛かった。」


あの遭遇は利緒だけでなく、クーネアにとっても機転だった。


「一緒にいたいと思うのに、リオは何処かへ行かないといけない。ただ一緒にいたいと思うけれど、許されない。」


 溜め込んだ感情は、いつまでも留めておくことはできない。


「だったら強くなるしかない! なるしかないのに、進めない!」


 理不尽な現実と折り合いをつけることが少女には出来なかった。


「私は進めないのに、利緒はどんどん先に行っちゃうんだ……」


 一度爆発した感情が、急速に萎んでいく。

 正体のわからない激情を維持できるほど、クーネアは振り切れていなかった。


「無茶をしていたのは分かっている」


 クーネアも頭では分かっている。でも、止まらない、止められない。例えその先が破滅と分かっていても。


「どうしたらいいか、分からないよ」


 その言葉を最後に、クーネアは黙り込んでしまった。

 利緒は、そっとクーネアを見た。

 堪えきれなかったのだろう、拭うこともなく、ただ涙を流していた。



(王の試練に連れて行く?)


 利緒が最初に考えたことは、クーネアが一緒にいたいという思いを言葉通りに受け取った結果だった。


 しかし、クーネアは王の試練に参加できるのか。


(グウェイに相談)


 現状では、拒否されるのは目に見えている。


(なにか説得できる材料はないか?)


 利緒は、頭をフル回転させる。


(目に見えている2つ名は変わらない。賢鬼、これは使えないだろうか)


 例えば、二つ名になるほどの実力を秘めている。その能力を覚醒させるきっかけになるのではないか。

 これをネタにグウェイを言い包められないか。


 言葉にしてはいないが、あれは、これはと考える利緒は側から見ていて分かりやすい。

 眉間にしわを寄せて、何事かを考えていれば誰でも何事かと思うだろう。


 そしてクーネアも、沈黙が続くことでどうしたのかと、利緒の様子を横目で伺っていた。

 そこでその何事かが何事か、察する程度に精神状態が戻っていた。


 利緒は気づいていない。クーネアが根底で求めている事に。


 クーネアは気づいていない。利緒の根底にある思いの正体に。


 果たして2人の歯車は噛み合わないまま、それでも円滑に動いていた。

 機械と違って、それが致命的になることはない。


 誰かが事実に気づくまで。


「クー、一緒に『王の試練』に挑んでみない?グウェイ爺は、どうにかして説得しよう」

「……出来るかな」

「できるさ、一応材料はあるからね」


 それはクーネアの心配とはズレた答えだったが、利緒が笑って言うものだから、クーネアもそれ以上何も言わなかった。

 延々と喋っていただけで、気持ちの整理がついたわけがなかった。

 それでも、自分のために利緒が必死に考えてくれた。自分のために。その事実だけで、クーネアは満足してしまった。


「クー、ひとまずグウェイ爺んとこ行こうか」


 利緒は立ち上がって、クーネアには手を差し出した。

 クーネアは、迷うことなくその手を掴んだ。

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