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『碧の章』第35話:強くなるための下準備

「おし、続きやるぞ」


 カナカ、ギンコの2人を見送った後、利緒はグウェイの元へ戻った。


 現在、利緒はグウェイ監修のもと、1ヶ月後に向けて強化するべく臨んでいる。

 通常、魔法使いとしての技量は短期間で大幅に伸びることはない。

 伸び代の多い成長期であれば話は別だが、利緒は使える魔法がはっきりしており、魔力量の上昇も望めない以上、別の方向からのアプローチが必要になる。


「お前、得手不得手がきっちり別れてやがんな」


 今は、様々な魔導具を試している。

 しかし、グウェイの言うように使えるもの使えないものがはっきりしており、結果はよくない。


 普通であれば低コストで使えるはずの道具が、魔力1単位を持っていく。

 高威力の魔法が比較的軽く唱えられる場合もあるが、魔力を2も3も使ってしまっては、あまり意味がない。


 あまり思わしくない結果ばかりだが、元より短期間で強くなると言う無茶から始まっている。出来ることは全てやる、そう言って揃えられる限りの魔導具を試しているのである。


「よし次はこいつだ」


 1つダメなら、即座に次の魔導具が手渡される。


「付き合わせてしまって、すみません」

「あ?気にすんな。アルドからの命令ってのもあるが、カンナリオに夢を見たのは本当だからな」


 利緒がつい口にした侘びの言葉に、グウェイのカラカラとした笑い声が返る。

 この老人は、本当に思うままに生きているのだろうと利緒は思う。


 色々な感情が心の中に渦巻くが、これは疲れによるものか。

 首をフルフルと振って、不要な考えを押し流す。


「これもダメですね。次ください」


 試していないことは、いくらでもある。

 時間を無駄にしないように、利緒は再度気を入れた。



「リオくーん、調子はどう?」


 明るい声がして、振り向くとカメラを持った少女が見えた。ニナが、カシャカシャと機械の音を響かせながらやって来た。


 その後ろには、大きな箱を抱えたヴィズィーとアーシャ。

 入口に置き去りの箱があり、ニナは写真を撮るためにほっぽり出して来たようだ。アーシャが溜息を吐きながら、首を振っていた。


 ニナはそんなアーシャを気にしないまま、リオの元へとやって来た。


「リオくんに、お知らせがあります」

「なに?」


 どうやら、利緒に早いうちに伝えたいことがあったようだ。

 利緒は何事かと次の言葉を待つ。


「クーちゃんがぶっ倒れました」


 まさかの展開に、利緒は思い切り咳き込んだ。


「ちょ、え? 倒れた!? どこ、すぐいくよ!?」


 思い切り慌てる利緒を前に、ニナはくっくと笑う。


「ちょっと無茶しちゃっただけで、ネメル先生に診てもらって今は大丈夫ですよ」


 荷物をグウェイに預けたヴィズィーが、ニナの説明に補足する。

 無事であったことに、ほっと胸をなでおろして利緒はニナを睨む。いくらなんでも、ひとの不幸をネタにするのは悪趣味ではないか。


「リオさん、ごめんなさい。実はクーちゃんとと賭けをしてたんですけど……」

「賭け?」

「そうそう、リオくんがどれくらい心配するかって」


 クーネア自身は利緒が心配するので言わないでほしいと言っていたが、いつの間にかそれがどの程度の心配か、という賭けになっていた。

 アーシャの説明を要約するとそういう話だった。


「で、ニナが笑うのはなんでさ」


 笑う要素の見えない利緒の声は少しイライラしている。


「……実は、ストラバリッツ先生がカンナさんのセリフを予想していてですね」


 『倒れたのはどこか、今すぐ向かう』と言った、とアーシャは続ける。


「だって、そのまんまなんだもん」

「だからって、クーちゃんが倒れたことを茶化すような態度は良くなよ」


 ヴィズィーがニナの耳を引っ張って、可愛らしく怒っていた。


「……休憩はそんなもんでいいか?」


 なんとも言えない空気の中で、グウェイの声。少し時間を使い過ぎてしまったようだ。


「クーちゃんは大丈夫だから、リオくんも頑張ってね」


 久しぶりに会えてよかったというニナと、頷く2人。


「頑張るよ。魔導具の追加持って来てくれてありがとう」


 先ほどの件は、引きずっていても仕方ない。利緒も別れの挨拶をして、3人が去っていく。

 後ろ姿を見送って、利緒はまた魔導具の試用へと戻った。



「それにしてもセラヴィ先生が、あんなこと言うなんて意外でした」

「あいつ見た目は堅物だからなぁ」


 セラヴィは思っているより柔軟なやつだぜ、とグウェイが言う。

 曰く、見た目でかなり損をしている。


 それにしたって、賭けだなんだと話しているところにどのように入っていったのか。

 いつの間にか会話に参加して、まじめな顔をして予想を立てているセラヴィを想像して、利緒は苦笑する。


「《魔壊師》ですから、名前だけ知ってるとかだと絶対に怯えますよ」

「そう言うお前はどうだった?」

「最初は驚きましたけど、まじめでいい人だと思いますよ」


 研究者だからか、検査は熾烈を極めたが、内容はしっかりしていたし対応も丁寧だった。と利緒は振り返る。


「そいつは良かった」


 次、と魔導具を渡しながら、グウェイは利緒の回答に応えた。


「あいつ、お前の旅に着いていく再有力候補の1人だからな」

「まじすか」

「実力は申し分ないぜ」


 確かにそうなのかもしれないけれど。

 意外な人物のエントリーに、利緒は未来は予想出来ないことだと思い知った。

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