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『碧の章』第20話:目が覚めて

 アリアが放った攻撃、その脅威から逃れるために【異能】を発現させた後、利緒は強烈な頭痛に襲われて倒れた。

 苦しみ倒れた利緒を見て、アリアは慌てて利緒に駆け寄っていき、息をしていることに安堵した。アリアは急いで利緒を抱き抱えて、部屋へと連れて行った。


 その後、セラヴィへと連絡を取って、寮へ来るように頼んだ。10分ほどしてやって来たセラヴィは利緒を診る。


「魔力欠乏による、拒絶反応のようだ。」

「欠乏……1200超の魔力を持っているカンナさんが、ですか?」

「この時間なら1500はあるかもしれない。実際に測ってみないとわからないが、魔力欠乏で間違いはないと思う。」


 アリアには、利緒をここまで追い詰める意思は無かった。ただ2つのことを確かめようとしただけだ。


 利緒を見るアリアの眼差しはキツイが、それが利緒に向けてではなく、利緒を傷つけた自分自身(アリア)に向かっていることが分かる。


「……私が迂闊なことを言ったのもあるか。」


 回復力を考えれば、10分ないし20分くらいで目を覚ますと思う、そう言ってセラヴィは立ち上がる。カンナ君が目を覚ましたら呼んでくれ、そう言って部屋を出ていった。


 部屋に残された、利緒とアリア。利緒が離れてしまわないように、アリアは利緒の手を握った。



 利緒が目を覚ましたのは、それから15分後のことだった。目を覚ましてから天井を見上げて、それから視界に影が入り、誰かの顔が見えた。


 それがアリアだと気づくと、利緒は驚いて跳ね起きる。


 起き上がると同時にアリアが体を引いたようで、頭がぶつかることは無かった。状況確認のため、キョロキョロとあたりを見回す利緒をみて、大事なさそうだと、アリアはホッとする。


「ストラバリッツ先生をお呼びいたします。」


 利緒の無事を確認したアリアはそう言って、部屋から出て言った。残された利緒は、アリアを見送ってバタりと後ろに倒れ込んだ。


「一体、何があった……。」


 利緒が呼び起こすのは、最後の記憶。アリアの異能に対して利緒が使った異能のこと。


「護る物、汝は不変なり」


 コスト3で生体遺物に一度だけ「破壊不能」を付与するスキルカード。デメリットとして、そのターン、効果を使用できず、強化を打ち消す。

 無我夢中だったが、その時の感覚は覚えている。


 利緒はあの時、確かに「破壊不能」を得ていた。その異能は、間違いなく利緒を 生体遺物(・・・・)と認めていた。


「マジかー……人間じゃないかー……。」


 事あるごとに生体遺物と言われて来たが、それを身をもって知るというのは、どうして心にくる。

 現実をどう受け止めたものか、利緒は目を瞑って考える。


 少しして、コンコンと部屋のドアが叩かれた。利緒が返事をすると、セラヴィとアリアが入って来た。


「カンナ君、いきなりで悪いが、君に聞きたいことがある。」


 挨拶もなしに、セラヴィは検査に使用したアクセサリを一式、利緒に渡した。利緒は言われる通りに、装着する。

 セラヴィがマギアを叩いて、質疑応答が始まった。


「さて、君とアリア君の立会いでなにが起こったか話してほしい。」

「なにが?」

「そうだ。どうして君は倒れることになったか。」


ーーどうして、君は「虚無より出る漆の砲塔」に過剰な反応を示したのか?


「1つずつ、きいていこう。まずは、君が使った力について。」

「力……。ストラバリッツ先生は「護る物、汝は不変なり」って知ってる?」

「「護る物、汝は不変なり」……ああ、君が見つかった遺跡で発見された資料にあった。」


 《巨壁》に与えられた、魔法とは異なる力だと、利緒は知っている。


「ちなみに、それはいま使えるか?」

「ちょっと待ってください。そう、ですね。アリアさんと……僕に使えます。」

「アリア君、いいだろうか?」

「はい、構いません。」


 アリアからの承認を得て、利緒が異能を行使する。どういう感覚なのだろうか、アリアは特に表情も変えないまま、自分の手を見ていた。


【「虚無より出る漆の砲塔」】


 アリアが、目を見開くと同時に、自身の手の甲へと手刀を振り下ろした。ダン、と音がなるだけで、その他には特になにも起こらなかった。


「……なるほど。」


 アリアの異能を知っているであろう、セラヴィはその結果を見て頷いた。


「さて、カンナ君、次の質問だ。どうしてアリア君を前に今の異能を使った?聞いた話では、デコピンを構えていたとか。それがどうしてあそこまで過剰な異能を使うことになるのか?」

「……知っていたから。」

「なぜ?」


 セラヴィの間髪を容れない台詞に、利緒はごくりと唾を飲んだ。なんと答えるのが正解なのか、利緒には分からない。


「……覚えていたんだ(・・・・・・・)。」


 利緒はあやふやなまま誤魔化すことにした。

 仮に本当のことを言って、信じてもらえるか分からなかったし、それが知られて良いことなのかも分からなかったから。


「そうか。」


 セラヴィは利緒の気持ちをしってか知らずか、それ以上聞くことは無かった。


「この件は、特にアリア君が強く興味を持っている。」


 マギニアには数体の生体遺物がいるが、それぞれ様々な特色を持っている。実はアリアのように、人間と見紛う程の生体遺物はこれまで発見されていなかった。


 ならばこそ、自身を人間と言い張るほど良くできた(・・・・・)利緒は、アリアとなにかしらの関連があるかもしれない。


 利緒は、想像とは違う深みに嵌っているような気がしてならなかった。

評価指摘感想等々頂けると励みになります。 

また、誤字脱字などありましたら宜しくお願いします。


2017/08/26 すみません、話数を間違えていました。 21話から、20話へ修

2017/09/04 レイアウトの調整

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