『碧の章』第13話:検査開始
利緒は、本格的な検査のために、一通りの情報を提供することとなった。
唾液、尿を専用の容器に入れ、研究員に渡した後、さらに血液の採取を行う。
高度に発展した魔法ゆえか、指先を切って血を流した後、治癒するというあまりに乱暴な方式。ナイフを見せられた時はどうしたものかと思ったが、結局されるがまま、利緒は血液採取を終えた。
ナイフで指先を切り専用の容器に血を流し、ある程度溜まってから治癒魔法を使う。切れ味は鋭く、痛みはそれほど感じなかったが、ドクドクと流れる血に、顔が青くなっていた。
文化の違いといえば、文化の違いか。空気が混ざった血でも良いのかしら、などと思いながら、利緒は綺麗に治った指先を眺めていた。
「カンナ君、検査を始めるにあたって、こちらを装着してもらえるか。」
セラヴィから声がかかり、なにやらカゴが利緒に手渡された。中を覗くと、大小の金属製の輪が2つずつと、薄い金属の紐が2本入っている。
「リングは、両腕と、薬指にはめてほしい。そして紐は、首と腰に巻いてくれ。そう、首を回してから端を近づけると繋がるようになっている。」
言われる通りに、腕輪、指輪を装着し、首輪、ベルトを巻きつける。紐は端を繋げたところ、それぞれ首、腰の長さに合うよう自動で調整された。
(これ、逆らったら首を切断したりとかないよな?)
利緒は、首の締まり方にほんの少し恐怖を感じた。
「さて、今つけてもらったのは、魔法の使用に関する魔力の流れ、量を記録するためのものだ。これからカンナ君には、各種魔法を使用してもらい、その性能を調査させてもらう。」
「えっと、言われた通りに魔法を使えば良いんですか?」
「そうだな、ルナフィア君から彼女の知らない魔法を使用した、との報告を聞いている。なにが使えるのか、それはどれ程の効果を発揮するのか、それぞれ検証を行なっていきたい。」
どれ程の魔法を使えるのか、というのは利緒も知っておきたいことだ。
魔法が使えるサイクルが分かれば、もっと効率よく使えるし、発揮される効果を知って入れば、合わせてより堅実な選択肢を選ぶことができる。少なくとも、《巨壁》相手にもっと安定した立ち回りも出来たはずなのだ。
(と、なんか戦う前提みたいになってるけど、あんなの、もう2度とごめんだ)
知っておくことに損はない、戦うかどうかは別として。しばらくセラヴィと質疑応答を続けながら、専用の部屋へと移動することとなった。
◇
「リオー、がんばれー!」
「せっかくの古代遺物、リオくんの良いとこみせてー!」
「クー、ニナ。せっかくストラバリッツ先生から見学を許可してもらったんだから、邪魔をしちゃだめだろう。」
「そうだよ、アーちゃんのいう通り。クーちゃんもニナちゃんも静かにしよう?」
部屋の端から、黄色い声が聞こえる。
「あの、こういう検査って、ああいうのって良いんですか?こう、秘密的な?」
「カンナ君の言いたいこともわかるが、学園は許可すると、上が判断した。気になるだろうが受け入れてもらえるとありがたい。」
セラヴィは相変わらず表情が読めないが、利緒に対して申し訳なく思っているだろうことは感じられた。
「ルナフィア君は、第一発見者だ。それに成績も優秀であり、当人が学ぶことを望んでいる以上、学園としても止める理由は無い。」
「他の3人は?」
「ハバティ君、フルーエリィ君も優秀だ。特にハバティ君は将来、遺物の調整者を目指していることもあって、かなり強い希望があった。」
「ニナ、えーとアスターさんは優秀というくくりではないんでしょうか?」
「アスター君は、広報部から取材の要請があったからだ。君が発見されたことはかなり話題になっていて、ルナフィア君と付き合いのあるアスター君が来たようだ。君の選択次第ではあるが、当学園で生活するかもしれないことを考慮すれば、広報誌を利用するのは悪く無い選択だ。」
みなそれなりに理由があり、学園側が許可した、というのであれば、利緒としても受け入れる他ない。
「ところで、僕はこの学園で生活できるんですか?」
「聞いていなかったか。学園では君の他にも何体か生体遺物が仕事をしている。研究に協力する、という形でこの学園に在籍して貰おうという話が上がっている。」
クーネアがこの学園で暮らしている以上、利緒としてもここ以外の場所で暮らす選択肢はない。学園側が良いというのであれば、お世話になることはやぶさかではない。
「では、まず使える魔法から確認していこう。」
セラヴィが質疑応答に区切りを打って、検査へと移る。
「わかりました。」
深呼吸をして、魔法を心の中に思い浮かべる。
なんの魔法が使えるか、どれくらいの魔法が使えるのか。
こうして利緒の検査が始まったのだった。
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