↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二輪の騎士  作者: 小町
第二章
49/84

第48話 頭痛の種

「随分と悠長に放置しているようだな、オーディリック。貴様ほどの男でも手を焼くような娘とは、実に興味深い」

 パリスは、正面に座る男のニタリとした笑みに、わずかに隠されたものを垣間見た。娘に対する興味の下に、パリスへの嘲りがある。

 爵位を持たない人間をバカにし、己の小さな矜持を保とうとしているのだ。この男にすれば、相手を持ち上げたつもりかもしれないが、そんなもので気分を良くするとでも思っているのか。阿呆が。

 ヴァノーラ子爵リダ・ヴァノーラ・ボルコフ卿。父が与えたリダという名が、いかにも女のようで気に入らないと平然と豪語する阿呆な男だ。領地名ヴァノーラが自身の名に付いたというのに、受け継いだ男爵位にも満足せず、武勲を挙げたと同時に直ぐさまそれを放棄し、領地と同じ響きの子爵位を所望した傲岸不遜な男でもある。

 たったの一度の武勲で言われるままに爵位を与えた王都も阿呆だが、齢五十を迎えるこの男は、未だその爵位にも満足している様子はない。武にしか取り柄のない低脳な人間である。

 それに加え無類の“若い”女好き。第一王子が囲う娘にさえ興味を示し、下卑た笑みを浮かべる始末。なんでも若い娘は、独特の手触りと味がするらしく、ついつい触れて味見をしたくなるのだそうだ。名家の年若い娘を後妻にもらっていながら、それでも飽き足らず、愛人も多く、その数は片手で足りないと聞く。盛りのついた犬とも言えなくもないが、それにしても五十の男に、その表現は適していないようにも思える。

 だがまぁどちらにしろ、阿呆である事には変わりない。

 本来なら、こんな阿呆に構いたくない所ではあるが、これは必要な事なのだと自分に言い聞かせ、パリスは表面上、それはそれは穏やかに笑んで見せた。

「お褒めにあずかり光栄です、閣下。ですが、おっしゃる通り少々手を焼いておりまして、こうして閣下に助力を願い出ている次第です。どうぞお力添えを、閣下」

 閣下、閣下と連呼すれば、阿呆は取り繕いもせず上機嫌になった。ボルコフ卿と呼ばれるよりも、閣下という響きを好むのだ。

 既にパリスは、娘の排除など考えてさえおらず、むしろディクシードの妃にと望んでいる。しかしこの阿呆は、パリスが心変わりしているとは思いもせず、先ほどまで交わした会話の裏に何かあると考えようともしない。

 好都合ではあるが、何故このような低脳な人間に爵位が与えられ、要人の中に含まねばならないのか、どうにも王都の馬鹿さ加減にも嫌気がさす。

「よし、オーディリック。貴様を助けてやろう」

「感謝します、閣下」

「だが――」

「むろん心得ていますよ」

 最後まで言わせず口を挟んだ。野心深い男は見返りを求めるものだ。

「この度の閣下の武勲は、必ず王都の耳にも入るでしょう」

 付け加えるとボルコフ卿は満足そうに頷いた。それに対してパリスは内心を隠しながら、私も満足なのだと頷き返した。

 事実、この阿呆の反応には満足だった。頭の回転が早い人間――ランバートや主君のような人間であれば、パリスの申し出に裏があると気付き、探りを入れてきただろう。好ましい反応だが、今の状況では不都合だ。

 どんな出方をするのか全く予想がつかない娘を相手に、打てるだけの手を打っておかなければならないからだ。馬鹿な娘であれば良かったが、パリスが好む頭のいい娘であるからタチが悪い。気付かれないように外堀から埋める必要があった。この阿呆には、せいぜいアホぶりを発揮してもらわねばならない。

「して、オーディリック。その娘の器量はどうだ?」

 ずいと身を乗り出す姿は、なんとも下品極まりない。下劣としか言いようのない笑みも、パリスにとっては不快なものだった。

「清楚の一言で表現できる容姿です」

「なるほど、器量良しというわけか」

「ですが、閣下の好むような体つきではありません。豊満とはかけ離れた長身痩躯と申し上げておきます」

「なんと残念な……だが、一目見ておく必要もあろう。貴様が殿下可愛さに偽りを申している可能性もある」

「私が虚偽を申し上げていると?」

「違うのか?」

 阿呆でも、女が絡むと多少の知恵が回るらしい。

「確かに常々、殿下の妃を探しておりますが、あの娘は情婦ですよ、閣下。そのような娘を妃になど推せましょうか?」

 胸中とは裏腹なセリフをもっともらしく言いながら、パリスは小さく笑んでみせた。

「一理あるな」

「ですから、閣下のご助力が必要というわけです。花冠をも手の内に収めるような娘なのですから」

「花冠とな? それはまさか、あのダリアではあるまいな?」

「そのダリアですよ、閣下。差し向けましたが懐柔されたのです。女に甘いのがダリアの性分ですが、口を割らなくなってしまいまして、次の手をどうしたものかと考えあぐねている次第です。ご納得いただけましたか?」

「うむ、納得だ、オーディリック」

 そう言ってボルコフ卿は、更に身を乗り出した。

「ならばその娘、わしの目に叶えば、貰い受けても構うまいな? ダリアをも手中にしたともなれば、その痩せた肢体の他にも、さぞや有意義な使い道があろう」

「殿下がお許しならば、どうぞご自由に」

「むろん口添えは貴様がするのだろうな?」

「異論はありませんよ、閣下」

 阿呆とて第一王子は恐ろしいようだ。阿呆に限らず、他の人間もしかり。

 ボルコフ卿は乗り出していた身を引き、パリスの反応にまた満足したように頷いていた。そうしておいて、今度はパリス個人に対する興味を示して見せた。

「しかし不思議なものだな、オーディリック。なぜ王都は貴様のような有能な男に地位を与えようとしないのか。見るにお前も欲しがる様子はない。それで満足か?」

 貴様と一緒にするなと口から出そうになった。地位などに興味はない。腐りきった王都が与える地位や名誉に、いったい何の価値を見い出せというのか。

 実を言えば、随分と前から爵位の話しは来ており、全て退けているだけなのだ。しかし、この阿呆にそれを教えてやる義理はない。

「名声だけで十分ですよ、閣下」

「確かに貴様の名は他国にまで知れるところではある……さて、オーディリック。このわしが知らんと思うているのか? 幾度となく打診があったのであろう?」

 なるほど、カマをかけていたらしい。卑屈に笑んだパリスは、長い足を組み替えた。

 態度は不遜にも貴様と同等だとモノ申しているが、ボルコフ卿はたしなめる事がない。今だけに限らず、この男がパリスの部屋に足を踏み込んでからというもの、ずっと不遜な態度を取り続けている。にも関わらず、この男はパリス以上に不遜に振る舞うだけだった。

 不遜な男は不遜を好み、パリスの口から出る謙虚な言葉を好むきらいにある。そうして、不遜極まりないパリスが、自分にへりくだっていると信じ、お山の大将を気取りたいというわけだ。だから阿呆というのだ。

「ご存知でしたか」

「むろんな。何せ王都から直々に、このわしが、相談を受けておるのだ」

 このわしがという言葉に力を入れるあたり、小物としか思えないパリスである。

 いかにも王都の相談役だと言わんばかりの口調だが、どうせ自らが進んで口を挟んでいるのだろう。

「なにゆえ拒んでいるのか、どうにも不思議なのだが……この機に受けてみてはどうだな?」

「閣下が直々に推して下さっているとは思ってもいませんでした」

「うむ」

「ありがたいお話ですが、私が受けるには若すぎます」

「そうは思えんが――」

「閣下。私はまだ二十六です」

 遠慮もなく言いきってやる。

 年若い男に爵位の授与などと王都も何を考えているのか。打診を受ける度にそう思っていたが、この阿呆が絡んでいたと知り、それに関しては納得せざるを得なかった。

 だが目の前の阿呆はパリスの言いように納得しようとはせず、あろう事か、パリスの父の名を口にした。途端にパリスのこめかみがピクリと動くも、ボルコフ卿は気付きもせず、尚も話し続けている。

「あやつが爵位を継いだのは、今のお前よりも二つは若かったはずだ」

「…………」

 その口を閉じろ、下劣な阿呆が。

「それに見たところ、あやつよりもお前は有能ではないか」

「有能かどうかは自分で計れるものではありません、閣下」

「お前のその控えめなところは好んでいるがな、だからこそ、このわしが有能だと申しているのだ。地位を持て、オーディリック。しからば、その恩恵を一身に受ける事ができるぞ。家の復興も遂げよう」

 家の復興だと? 馬鹿馬鹿しい。

 阿呆の戯言に辟易としつつも、パリスは疑問にも感じていた。

 例えオーディリック家が復興を遂げたとしても、この阿呆とは何の関係もない話なのだ。それなのに王都にまで口を挟むというのは、いささか行き過ぎている。

 いったいこの男は、なぜ赤の他人のパリスに爵位を与えたがっているのか。どうでもいいが疑問にも感じ、一つ尋ねてみることにした。

「閣下、私には閣下が事を急いているように見受けられますが……私が見誤っているでしょうか?」

「うむ……なかなかに鋭い。だから有能だと言うておる」

「戯言は結構。何を急いておられるのですか?」

「いや、実はな――」

 そう言って阿呆な男は、いくらも年下の若造に顛末を話し始めた。とはいえパリスは、最初の一言を聞いた時点で着地点に到着する事となった。

「来月、十六になるわしの娘の事だ」

「………」

 結婚適齢期を迎えた娘だと言っているようなものだった。つまるところ、この野心家の男は、娘の嫁ぎ先にとパリスに目を付けているらしい。有能な男に爵位があれば、この先を見据えた時、自分にもその恩恵があると考えているに違いない。

 それでなくともパリスには、ディクシードという最高位の身分を持つ存在が付いてくる。嫁ぎ先としては申し分ない話だろう。

 将来の恩恵を受けるのはパリスではなく、ボルコフ卿というわけだ。阿呆の中の阿呆である。

「お前のような男が――」

「閣下」

 ピシャリとボルコフ卿の言葉を遮った。

 この申し出はパリスが最も忌避するものだった。爵位を受けたが最後、行く先々で娘を紹介されるハメになる。安易に想像できる顛末で、だからこそ、その話を退けてきた。

「実を言えば、このお話を持ってこられたのは、閣下だけではありません」

「なんと!?」

 適齢期を迎えた娘を持つ野心家は、何もボルコフ卿だけではないのだ。その程度の事も予想できなかったらしい。

「朝に一人、昼に一人。閣下は、本日三番目の申し出というわけです」

 うんざりである。

 パリスの内心など知る由もなく、出遅れたと知ったボルコフ卿は、見苦しいほど慌てている。

「して、貴様は何と答えた!?」

「そんなもの、決まっているではありませんか」

「もったいつけるな、オーディリック! 何と答えたのだ!?」

 怒鳴られても、パリスはたっぷりの間を取った。ゆったりと座り直し、また脚を組み換え、そこでようやく口を開く。

「相手を間違っている、と」

「っ! 何と不敬な!」

 不敬ときたか。自分は偉いと奢りきった阿呆のセリフである。

 パリスは小さく笑い声を上げていた。だが内心は、怒りに火がつき始めていた。父の話で薪がくべられ、不敬発言で移し火が燃え移る。どちらが不敬か思い知ればいい。

「私からすれば、こんな話を持ってくる方々が不敬ですよ」

「貴様っ!」

「言っておきます、閣下。年頃の娘の縁談先――それも良縁を望まれるのであれば、私ではなく、まず先に殿下に申し出るべきです。あの方に申し出もせず私の元へなどと、どちらが不敬であるとお考えか」

「っ!」

「同じ事を他の二名の方々にも申し上げ、丁重に断りを入れました。それほどまでに確固とした地位をお望みなら、殿下以上にそれを持たれている方はいないではありませんか? これ以上ない嫁ぎ先のはずです。何せ、王家との繋がりが持てるのですから」

 何よりもそれをお望みなのでは? と皮肉たっぷりに続けてやった。そうしたくとも、相手がそうしない理由を知っていながら。

「なぜ黙っておられるのですか、閣下? 殿下では、あなたの御息女には不相応だとお考えですか?」

 この問いは他の二名の要人達にも投げたものだ。二名は答えず、悪かったと小さく詫びをして、この部屋を去って行った。

 だがしかし、この阿呆な男は、またしてもパリスのこめかみが微動する発言を、それはそれは大声で放ったのである。

「当たり前ではないかっ!! 最愛の娘を“化け物”に差し出すわけがなかろうがっ!」

 この“化け物”発言は、ランバートとするような言葉遊びの延長にあるものではなかった。ディクシード第一主義のパリスにとっては、主君を愚弄されたようなものであり、怒りを爆発させるに足る当然の発言である。

 それでもパリスは自分を抑えた方だった。

「リダ・ヴァノーラ・ボルコフ」

 うめくような低い声が喉奥から吐き出される。

「閣下と呼べなくなる発言は控えて頂きたい。さもなくば、あなたの嫌がるリダという響きで罵って差し上げましょう」

「貴様っ!」

「まだ続けるおつもりか? ならばあなたを殿下への不敬罪に問うことになりますが?」

「っ!!」

「領地の取り上げどころか、お家の取り潰しという結果が待っています。せっかく揃えたあなた好みの愛人たちは、寄り付きもしないでしょうね。由緒ある奥方の家とも、むろん断絶ですよ」

 先を読んだ発言ができない阿呆に、パリスは親切にも先を示してやった。いくら阿呆でも、その光景がありありと想像できた事だろう。ぐうの音も出ない様子である。

「お引き取りください、閣下」

「……オーディリック!」

「御息女の件で頭にきているからと、助力の約束を反故にするというのは、はっきり申し上げて幼稚で阿呆のする事です。利口な方なら、必ず見返りをもたらせと、私との新たな約束を取り付けてはどうです?」

「…………」

 射殺さんぞといわんばかりの鋭い眼光は、気弱な兵なら竦み上がっていただろう。しかし生憎と、ディクシード以外に畏れを感じないパリスにとって、その眼光を見返す事は造作ない話しである。

「いかがなさいますか、閣下」

 この男は知るべきなのだ。相手にしている男が、己にへりくだっているわけではないという事を。

「見返りを約束しろ、オーディリック」

「むろんです、ボルコフ閣下」

 獣のような鼻息の男によくできましたと笑みを返し、パリスは立ち上がって扉へと歩いた。鋭い視線が追って来るのを感じながら、ノブに手を掛け押し開く。

「お引き取りください、閣下」

「…………」

 無言のボルコフ卿が立ち上がるのを見届け、パリスは柔らかな笑みを浮かべて見せた。

「あなたがおっしゃる通り、私は有能なのです。それは認めましょう。ですが、爵位を賜る気などありません。ご理解ください。殿下が嫁をとれと言うなら、私は自ら進んで嫁をとります」

 自分に命令を下すのは第一王子だけだ。自分が受け入れるのは第一王子の指示だけだ。言外にそう言ったつもりだが、果たして阿呆に通じただろうか。

 どこまでも見下したパリスの懸念をよそに、ボルコフ卿はパリスの前を通り過ぎた。そこでパリスは、もう一度、嫌味のように同じセリフを口にした。

 阿呆には同じ言葉を何度も浴びせ、教え込む必要がある。

「私は有能です、閣下。有能な私は、御息女の嫁ぎ先を探して差し上げましょう。殿下以外の相応しい嫁ぎ先をね」

 ギロリとした一瞥を向け、ボルコフ卿はパリスの部屋を後にした。

 閣下、閣下と連呼したにも関わらず、阿呆の機嫌は上向きにはならなかったようである。


 ◇◇◇◇◇◇


 パリスは扉を閉め、二度、三度と肩をほぐして執務机に向かった。阿呆の相手は疲れて仕方がないが、それでも残る要人はあと三名となった。

 ゆっくり昼食をとる時間こそなかったものの、必要な手はこれで打ち終えたと言える。それに加え、残る三名に関しては、どちらかといえばまともな思考回路を持ち合わせている要人達で、パリスの思惑に乗せるには知恵が回りすぎていた。ボルコフ卿のような阿呆の方が、より使い勝手はいいのである。今のパリスにとってこの三名との会談は、差し迫ってする必要がないものだった。ランバートに任せておけばいい。

 となると、あとは逃げているふりをするだけである。だがその前に、ジニアスに伝令を走らせねばならない。それと避難の受け入れ状況の確認も必要だ。どちらの要件もランバートに会えば解決するだろう。

 そしてその後はダリアの元にでも赴き、明日の段取りを確かめるのもよし。手頃な胡蝶と恋愛遊戯を楽しむのもよし。会議までの時間は、ほどよく潰れる事となる。

 わずか三秒ほどで今後の予定を立てたパリスは、歩きながら外套に手をかけた。

 机の上くらいは片付けて行こうか。そう思い、散らばる書類を整理し始めたのだが、直ぐに馴染んだ声が耳に届いた。

 パリスは否応なく笑んでいた。これでやっと、まともな人間と話しができる。

「なぜ阿呆閣下がお前の部屋から出てきた」

 阿呆閣下か。この男らしい表現だ。

 しかしながら、常より一層低い声が警戒を表している。

「入室の合図ぐらいしたらどうです、ランバート」

 問いにも答えず、見向きもせず、パリスは書類の端をトントンと揃えながら言った。見計らったような頃合いの登場に、内心では、ほくそ笑みさえしているのだが。

「答えろ、パリス。ボルコフ卿がテメェの部屋から出てきた理由は何だ」

「会議前の常時の会談ですよ」

「ぬかせっ。常時のものは済んだはずだ。あの阿呆との会話をテメェが何度もするはずがねぇ。何をまた企んでやがる」

「人聞きが悪いですね。必要とあらば応じますよ、私は」

「とぼけやがって……。阿呆閣下だけじゃねぇだろうが。朝のうちに顔を合わせた要人はな、揃いも揃ってパリスはどこだと尋ねて来た。それも、コマチの話が出るよりも先にだ。テメェの所在が気になって仕方がねぇと言ってるようなもんだった。おおかた、前もって話しがあると伝令を走らせていたんじゃねぇのか? あぁ?」

「…………」

 ご名答とはこの事だ。これだからこの男と話すのは楽しい。たとえ今は、娘側についているのだとしても。

「よくもまぁ揃えたと言いたくなる阿呆ばかりだったが、そんな阿呆どもがなぜ朝のうちに顔を出したか考えるまでもねぇ。テメェの差し金だ、パリス」

 厳めしい顔をして腕を組み、ランバートはパリスを睨み付けていた。

「御仁に関しちゃテメェの検討違いだろう。あの方を阿呆に含めるような阿呆な人間じゃねぇからな、お前は。あんな早朝に城に上がるとは予想していなかったはずだ。違うか?」

「あなたは私の良き理解者です、ランバート。感服します」

「はぐらかすな。使い勝手のいい阿呆を呼びつけて何をさせようとしている? 何を吹き込んだ?」

「阿呆阿呆と口が過ぎますね。誰の耳に入るか分かったものではないでしょうに」

「今更だ。だがまぁ、テメェが吐くなら、多少はこの口もマシにはなるだろうな」

「それで……私が答えると本気で思っているのですか?」

 つと視線を投げれば、利口な男は黙り込んだ。

 吐かないと知りながら、それでもこうして絡んでくるのは、よほど娘に肩入れをしているからだろう。完全に取り込まれたようだ。

 それもまた好都合な話である。パリスが対立すればするほど、あの娘は意地になる。そうして表に顔を出し、あの達者な口を使って欲しいものを取りに来る。

 望むところだ。舞台なら整えてやろう。

「逆に、あなたこそ娘の動きを私に吐いてはどうです?」

 何せ同じ目的を持ったのだから。そう思いはしても口にはしなかった。

「ふざけた事をぬかすな」

「命令してもいいのですよ。あなたは拒める立場にないのです。お分かりのはずでは?」

「テメェとの取り決めはディクシードに従う事だ。テメェに従う事じゃねぇ」

「痛いところを突きますね、あなたも」

「テメェの毒を間近で浴びてきた賜物だ。ありがたく受け取れや」

 一言返せば即座の切り返し。この軽快なやり取りが、パリスにとってはたまらなく心地がいい。もう少し掛け合いを楽しみたいところではあるが、楽しみ過ぎて良からぬ事を口走ってしまう可能性がある。

 見切りをつけたパリスは、さっさと話を切り上げる事にした。

「ならば、それはそれで結構。報告を聞きましょう」

「…………」

「受け入れの進捗を聞きたいと言っているのです。報告を、ランバート」

 催促すれば、有能な男は渋々ながらも、おおむね良好だと答えた。

「“おおむね”とはどういう意味です?」

「その事だが、テメェに聞いておきたい事がある。胡蝶だけでなく、教会が積極的に動いているようだが、心当たりがあるんじゃねぇのか?」

「むろんです。ダリアに協力を頼みました」

「やっぱりかっ」

「今回の避難には、大聖堂の開放が必須であると判断したまでです。何の問題もないでしょう?」

「んのっ……問題ないだと? 聖騎士まで動いてんだぞっ! それでも問題ないと言い切るつもりか!?」

 声を荒げる男の言葉に、パリスは、あってはならないものを聞き咎めた。

「怒鳴らないで下さい。今……聖騎士と言いましたか?」

「あぁ、言った」

「どうして彼らが……」

「知るかっ、こっちが聞きたいぐらいだっ」

「その話はどこから?」

「ガッセだ。目撃したと聞いた。間違いないだろう」

 ガッセ……ガサン・オズイクか。

 パリスの脳裏に、近衛騎士の一人が浮かぶ。ランバートに負けず劣らず大柄な男で、血の気の多さも似たり寄ったりの人物だ。そして何より、有能でもある。

 ガッセに限らず、主君の近衛騎士は皆が揃って有能だった。というのも、有能な人材を選りすぐり、ランバートに預けているからでもある。

「座ってください、ランバート。詳細を」

 これはまた厄介な一件が持ち込まれた。まさか、あの連中が出しゃばってくるとは。

 ドカドカと不機嫌そうに腰を下ろした男に続き、パリスも思案に暮れながら向かいに腰かけ、外套を傍らへ置いた。

「目撃したのはガッセだけだと聞いている」

 そう前置きをして、ランバートはリディオから受けた報告を話して聞かせた。胡蝶と教会の動きについても簡潔に話した。

 そうして一通りの話を聞き終えると、パリスはすかさず問いかけた。

「何名ほど聖騎士がいたと?」

「人数までは分からん。リディオの話しぶりからして、その場に数名いたとは考えにくいが、あの臆病な連中が一人だけで動くわけがねぇ」

「同感ですね。十名、いや、それ以上かもしれません」

「今の段階で動いているなら、明日になりゃ、もっと増えるだろうよ」

 まったくもってその通りだと思う。鷹揚に頷くと、なぜか咎めるような目を向けられた。

「何です、その目は?」

「これはテメェの失態だ。ダリアに教会との繋ぎを頼むのはいいとしても、教会側への牽制をしておけと添えておくべきだった。あいつなら、それができる。そうだろ、パリス?」

 確かに。

 聖騎士が出しゃばって来ないよう釘を刺しておけと、ダリアに頼む際に一言添えるべきだった。根回しを欠いてしまっていたのだ。今思えば、小町という娘に気を取られ過ぎていたとも思うが、それは言い訳に過ぎない。認めたくはないが、失態には違いなかった。

 だが、小さな喜びも感じている。

 この男は、聖騎士の登場に、直接パリスが関わっていると微塵も疑っていないのだ。間接的な結果として咎めているに過ぎない。それが妙に嬉しい。

「何を笑ってやがる」

「いえ……殿下に対する忠義を、本物だと言われたような気がしたものですから」

 ほら見た事か。良からぬ事を口走っている。

 途端にランバートは眉間にしわを寄せた。

「あぁ? わけが分からん事を言うなっ」

 いかにも馬鹿にしたようにふんぞり返り、辟易とした表情を浮かべている。

「複雑な心理ですから、忘れて下さい」

「んなもん、忘れようにも身に染みてんだよ、こっちは。本モンじゃなくて何モンだってんだ、バカタレが」

 これにはパリスも、声を上げて笑っていた。

「笑いどころか、たわけっ。さっさと指示を寄越せ」

「これは失礼しました。まずは……そうですね。聖騎士の動きを把握したいところです。各所の教会にあなたの部下を走らせて下さい。大聖堂には私が向かいます」

「……お前がか?」

「明日は殿下が足を運びますから、根回しをしておかなくては。ジニアスへの伝令もあるので、ちょうどいいでしょう。残る御三方の対応は、あなたに任せておきます。あの書類を其々に渡しておいてください。作戦の概要を記してありますので、あなたも目を通しておきなさい」

 胡蝶との恋愛遊戯はお預けとなるが、対面的な口実ができたというわけだ。

 執務机の上に揃えてある書類を指すと、ランバートはそれを一瞥して頷いた。

「仔細に書いてあるのか?」

「今朝方、殿下から聞いたものを時系列で纏めてあります。細かな内容は、追ってあなたにも話すと言っておられましたので、早急に確認した方がいいでしょう」

「分かった。このあと報告に向かうつもりだ。直接聞いてみる」

「そうして下さい。他に何か質問は?」

「いや、ない……待て、ある」

「…………。どっちですか」

「だから、あるっつってんだろっ。ジニアスへの指示だ」

 ないだのあるだの言ったのはあなただろうと口を突いたが、それは無視される形となった。何はともあれ、その内容が知りたいらしい。

「ディクシードからの指示か?」

「むろんです。コマチの車の周囲を、ジニアスの隊で固めるそうです」

「……懸命だな」

 ジニアス・サンドラ。

 ディクシードの近衛騎士に志願している騎士である。若くして既に一個大隊――およそ八百の兵を率いながら、少数での任務をも完璧にこなし、皆が嫌う辺境等の視察にも積極的に起用される人物でもある。武にも知にも優れており、近衛への昇格も秒読みだと噂に名高い青年だ。

「あいつなら適任だな、さすが我が主君――」

 言葉を切ったランバートは、しばらく押し黙り、ジニアスへの帰還指示がいつ頃だったかと問うてきた。ジニアスがディクシードの指示で視察から戻ってきたのは、ちょうど五日前である。

 つまりこの男は、パリスと同じところに着目したという事だ。

「五日前に戻っていますので、逆算してみてはいかがですか?」

「うるせぇっ、さっさと答えろ。数字は嫌いだ!」

「帰還の伝令を走らせたのは、そうですね……かれこれ二週間ほど前になります」

 しれっと答えると、ランバートは妙な顔をした。

「そりゃ、おかしいだろうが?」

 やはり気付いたのだ。

「おかしいですか?」

「……バカにすんなよ、パリス。気づかねぇと思ってんのか、あぁ?」

 クスクスと笑い、パリスはこれ見よがしに頷いた。

「確かに、おかしい話しですね。あの時点では取り急いでジニアスを帰還させる必要はなかったですから。ですが、こうして討伐に間に合う態勢が整っています」

「…………」

「察しの通りです、ランバート。殿下は帰還指示を出した時点で、こうなる可能性を見出していた事になります」

 小町の護りを磐石にする必要性を、あの時の主君は既に見出していた事になる。二週間前といえば、未だ自分達は小町という娘の存在を知らなかった頃である。

「二週間だぞ、パリス。コマチはここに――」

「居たんですよ、ここに。殿下の傍に」

 我々に悟られないよう、息を潜めて。

「あなたに今一度忠告をしておきましょう。……あの娘は魔女です、ランバート。肩入れをするのは結構ですが、呑まれてはなりません。お忘れなく」

 主君の言動全てが、それを裏付けるものとなっていた。疑念は現実となりつつある。

 姿を消すなどあり得ないとは思うが、もしかすると国守に力を借りずとも、己の力を使って姿を隠していたかもしれない。何せあの娘は魔女なのだから。

 パリスは既に、その謎を――娘の正体を解明する事を目下の目的としていた。同行を阻もうとは考えていない。

 当初はそればかりを考えていたが、主君の立てた作戦に新たな項目が加わる事で潰えてしまった。娘の同行を必要不可欠とする完璧な作戦となったのだ。

 あの阿呆な要人達は、武勲を挙げる事しか考えておらず、とてもではないが切り崩しができるとは考えられない。頼みの綱はまともな方の要人達だが、なにぶん使い勝手が悪く、主君への礼儀を弁えている。パリスにしてみればジレンマだった。

 あれやこれやと思案した結果、この作戦が通るだろうと予想された。抜け目の無さも、剣の腕も、頭の回転の速さも……全てに抜きんでている主君が相手では、こうなると太刀打ちできるとは思えない。二週間も前から先を読み、備えに徹するなどと、並みの人間であるパリスには不可能な話なのだ。

 だがしかし、小町の存在を諦める必要はない。国さえ分かれば、王都と連携して身柄を拘束する事ができる。娘の正体を暴けば、それが可能となる。魔女の出現と聞いた王都が、どんな反応を見せるのか安易に想像できた。

 まずその為には娘の国を特定すること、そして正体を暴くこと。この二つを同時に進めなければならない。水面下で、誰にも悟られぬように、着々と。

「確かに、コマチは魔女かもしれん。いや、魔女だろう。だがあの娘は、俺達が思うような性悪な魔女じゃねぇような気がする」

「恐るるに足りないと?」

「そうじゃねぇよ。やたらめったら力を行使する魔女じゃねぇかもしれんと言ってんだ。テメェだってそう感じたから、ディクシードの妃にと考えてんじゃねぇのか?」

「…………」

「ほらみろ、当たってんだろうが」

「何も言っていませんが?」

「顔が言ってんだ、その顔が。まぁ、なんだ、俺が言いたのはだな……呑まれてもいいんじゃねぇかって事だ」

「…………」

「…………」

 しばしの沈黙のあと、パリスは口火を切った。

「呑まれるにしろ、その逆にしろ、あの娘がここに居ないのであれば見極めようがありません」

「まぁ、一理あるわな。んで、テメェは何を企んでんだ?」

 いかにも軽い調子の問いかけである。あの阿呆なボルコフ卿であれば、まんまとこの手にはまり、口を割っていただろう。だが、阿呆と一緒にされたくはない。

「生憎と私は口が堅いんですよ。他を当たって下さい」

「ほう。他を当たってもいいってのか?」

「どうせそのつもりでしょうに。都合よく私が不在になるのですから」

「さすがオーディリック殿。よくお分かりで」

「ふざけていないで、さっさと部下を走らせてはどうです、レイゼン隊長。会議までの時間は限られているのですから、やるべき事はきっちりこなしてもらいますよ」

「言われなくてもそうするさ。テメェも定刻の前には戻って来いよ。聖騎士の動きを知りたいならな」

 年寄り地味た掛け声と共に腰を上げ、ランバートは面倒臭そうにパリスの外套に視線を投げた。何やら物言いたげな目をしている。この男の目は、口ほどにものを言うのである。

「油を売って来るなと言いたいのですか?」

「分かってんなら聞くなや」

 フンっと顎をしゃくり、ランバートは退室した。

 外套を手にしたパリスは、それをシゲシゲと眺め、やがて薄い笑みを刻んでいた。まったく、ランバートの洞察力には感服ものである。勘の良さと嗅覚は、動物並みと言える。

「さて、ランバート。その獣のような鋭さを存分に発揮してもらいますよ」

 “会議”という名の舞台は整い、役者も揃いつつある。

 ランバートとて、その役者の一人だった。主役である娘を舞台に引き摺り出す為に、あの男にも袖口で一役買ってもらうつもりでいる。パリスの動きを逐一娘に伝え、娘の負けん気を奮い立たせてもらおう。何なら、娘と共に踊ってもらってもいい。どのように踊るのか、今から楽しみで仕方ない。

 柔和な顔立ちに不釣り合いな笑みを浮かべ、パリスは自室を後にした。

 この数時間後、パリスは思い知る事になる。相手にしている娘に、いっさいの常識が通用しないという事を。

 整えたはずの舞台に、主役である娘は終始顔を出さなかったのである。パリスの目論見は、予測不可能な娘の行動のおかげで今一度振り出しに戻り、更なる策を思案するために頭を痛める事となった。


 ◇◇◇◇◇◇


 パリスよりも一足早く、娘が要因となる頭痛を抱えた男がいた。誰よりも自分は常識人だと自負している男、ランバートである。

 部下を走らせる為に再び兵舎に戻って指示を出し、リディオに頼んだ握り飯も食べずに城内にトンボ帰り。その間に作戦の詳細を記した書類を眺めながら脳内に叩き込む。そうして主君の執務室に向かうも不在を食らわされ、消去法の結果に従い小町の部屋へと向かう。そこに主君が居るだろうと、ほぼ確信を持って。

 既にその時、嫌な予感がして頭痛を覚えていた。

「コマチのやつ……まさか、会議に同席する気じゃねぇだろうな……」

 リディオから、小町が要人達の情報収集をしていたと聞き、まさかなと訝ったのだが、小町の部屋に近付くに連れ、懸念が確信に変わっていた。

 女が作戦会議に顔を出す……それは……言うまでもなく、前代未聞の大珍事である。非常識極まりない話で、討伐の同行とは、全くもって別問題。一癖も二癖もある要人達が黙認するはずもない。

 同行に関しては反発の声は上がるだろうが、被害の大きさを考えれば納得せざるを得ない内容となっている。叩き込んだ作戦の詳細は完璧で、それを知り得た今なら、阿呆どもを抑え込むのは容易いとさえ思う。

 が、会議への同席は、男としての矜持がモノを言い、阿呆どもだけでなく、常識人のランバートとて例外ではない。剣の稽古場に顔を出された時には心底腹が立ったものだ。選ばれた騎士のみに与えられた領域に、女ごときに踏み込んでほしくはなかった。小町の人となりを知った今だからこそ受けて入れているが、あの狭量な要人共だとそうはいかないだろう。

 融通のきかない、自尊心の塊共の会議に……情婦と噂の娘が同席する……

 あの淑やかぶった顔で、パリス以上の猛毒を撒き散らすつもりなのか……

「有り得ねぇ……」

 これが頭を痛めずにおけようか。何としてでも阻止せねばと考えれば考えるほど、頭痛はどんどん増していき、遂に小町の部屋にたどり着いた。

 開けたくはないが、開けねばなるまい。なんとも重たい腕を持ち上げ、扉を二度叩く。程なくして娘の声がした。

「ランバートね?」

 声を掛けてはいないというのに、誰が廊下に立っているのか知っているらしい。これは、間違いなく主君も居る。

「そうだ、俺だ。ディクシードを出してくれ」

「ちょうどいい所に来てくれたわね。どうぞ、入って。報告なら中で聞くそうよ」

「…………」

 ちょうどいい所だと?

 数秒悩んだランバートは、嫌々ながら部屋へと入った。

 二人は、ソファーに腰掛けていた。そして、テーブルに広げられている物を目にして、ランバートは足を止めた。

「聞くが……その地図を広げて何をしている。ガーデルードの地図だろうが?」

 問い掛けに反応したのは小町である。数度瞬き、ヒョイと肩を竦め、ランバートには理解できない言葉を口にした。

「ミーティング」

「あ? 何だ、そりゃ?」

「小さな会議よ。ご覧の通りのね」

 全く悪びれずにそう言うのだ。夕刻の会議の予行演習とでも言いたいのだろうか。

「タイミングが良かったわ、ランバート。ここに座って」

「…………」

 娘が指したのは、彼女の真横である。それも、主君の対面ではないか。

「突っ立ってないで座ってよ。遠慮しないで、はい、どうぞ」

 いやいやいや……遠慮したい。

 回れ右をして主君を連れ去り、この部屋に錠前を付けて娘を閉じ込めてやりたい。

「そこに座らせて俺に何をさせようってんだ、お嬢ちゃん?」

「そう呼ぶなって言わなかったかしら?」

 何とも好戦的な目付きである。

「いいわ、ランバート。率直に言えば、デイックスを説得してほしいの」

「何の説得だよ?」

「夕刻の会議よ。私の同席を認めないって言うのよ。理由もなく認めないの一点張り」

 聞いた途端、ランバートは己が座る場所を悟り、行動に移した。主君の隣――娘の対面に腰を下ろしたのである。

 説得するのはディクシードではなく、あんただ。

「…………」

「…………」

「まぁ……あなたも反対? ……困ったわね、二対一だなんて」

「ご覧の通りな。俺も認めねぇ」

 すかさず切り返してやれば、娘は目に見えてブスくれた。

「これに関しちゃ譲歩はなしだからな」

「どうして?」

「パリスが動いてやがる。みすみすあんたを送り込む気はねぇ。枷をはめる好機だと思ってるかもしれんが、あいつの側に数名の要人共がついたと考えれば、あんたの同席は危険すぎる」

「あら? あなたもディックスも腕は立つじゃない? しっかり守ってもらうわよ。間に挟んでくれれば言うことないわね」

 そんな問題ではないと分かっているだろうに……

 ああ言えばこう言う娘を、どう説得すりゃぁいいのか。

「それから理由はもう一つある。聞きたいか?」

「是非」

 身を乗り出してくる娘をこれでもかと睨み付けた。

 頭痛は増々ひどくなる一方だ。

「俺は、さっきからずっと……耳鳴りがしてるからだっ!」

 猛然と吐き捨てたが、娘はキョトン顔である。

「それって、怒鳴るからだと思うわよ?」

 クソッタレ。

 この娘を誰か止めてくれ……

 こうして、頭痛の種は蒔かれていくのであった。

ご覧いただきありがとうございます。それと、更新が遅くなり申し訳ありません。

遅くなった経緯については、言い訳など致しません。体調のせいにする気もありません。はっきり申し上げまして、motoGPのシーズンが終わってしまい、呆けておりました。脱力であります、はい。腑抜けておりました、はい。

どうぞ、阿呆めと罵ってください。阿呆と言われようが、作者はお付き合い下さった皆様に感謝します。愛の鞭、大歓迎!


さて、今回の『頭痛の種』はいかがだったでしょうか? ランバートの心の声は、皆様に届いたでしょうか? 困ったちゃんな主人公で、作者も手が負えません。

重くなりすぎないように小ネタも入れたつもりですが、なかなか難しいものです。個々が好き勝手に動き回るし……

世に出られている作家様方は、うまい具合に収拾をつけられていて、本当にすごいなと感心し通しの作者であります。


では、次話の予告を一つ。

討伐作戦本会議の模様を中継する予定であります。どうぞ、お楽しみに。

(たぶん、また重いんだよ、きっと。笑)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。