表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

60/63

#059「コクハク」

@ロビーラウンジ

真理「ねぇ、不動さん。あんまり大きな声では言えないんですけど」

不動「何だ、川添。言ってみろ」

不動、川添に耳を近づける。

真理「片想いのままのヒト、いや鬼が、もう一人残ってませんか?」

真理、茨木のほうを見る。

不動「ん? アァ、忘れるところだった。たっぷり御礼をしないといけないな」

不動、おもむろに立ち上がる。

  *

酒呑「ご馳走さん。アー、ちょっと食休みしよう」

酒呑、ソファーに横になる。

茨木「酒呑兄さん。食べてすぐ横になったら、霜降りサーロインになってまうで?」

酒呑「ワイらは、半分、牛みたいなモンやないか。いや、茨木は一角やから(さい)やな」

茨木「誰が犀や。どうせなら、ユニコーンに譬えてや」

不動「茨木。取り込み中、済まないが、ちょっと、こっちへ」

茨木、不動の手招きに応じ、近くへ駆け寄る。

茨木「何やの、番頭。まだ、うちに頼み事があるんか?」

不動「まったく違う。向かってるベクトルが逆だ、と言えば、勘の良い茨木のことだから、思い当たる節があるだろう?」

茨木「はてさて、何のことやろうなぁ」

不動「他人の恋路を散々焚きつけておいて、自分だけ現状維持するつもりか? ステイしてないでアタックしろよ。レシーブ、トス、スパイク」

茨木「うちに、当たって砕けてこいっちゅうんか?」

不動「そうさせたのは、どこの誰だっけなぁ。体当たりして、砕け散れ!」

茨木「待ってや。玉砕が前提なん?」

不動「俺だって捨て身だったし、大日だって、帝釈だって、相応の覚悟をしてたはずだ。腹を括れ! それとも、鬼の副将は、総大将にくっ付いてるだけのコバンザメなのか?」

茨木「言うたな、番頭。酒呑の右腕っちゅう称号は、伊達やない。うちが腰巾着やないってトコを、しかと見せたろうやないか!」

茨木・不動、酒呑のそばへ駆け寄る。

  *

酒呑「寝言は布団に入ってから言え、このド阿呆」

茨木、不動のほうを向く。

茨木「ほらな、アカンかったやろう。言わんこっちゃない」

不動「言ってみなけりゃ、判らなっただろうが。曖昧なままにするより、ハッキリさせたほうがスッキリするものだ。違うか?」

茨木「そら、そうやけど、それにしたってアレやないの」

酒呑「何をコソコソ言うてるんか知らんけど、ワイらは、もう帰らしてもらうで。食休みも済んだことやし、夕方の放送までに、赤鬼と青鬼の(けつ)を叩いて、録った音源を撮った映像と合わして、いろいろ編集させなアカンからな。ホラ、機材を持ちや、茨木」

茨木、荷物を持つ。

茨木「夕方の放送を楽しみにしとってな。ほな、さいなら」

  *

帝釈「このあとは、五人は忙しいのか?」

不動「アァ、そこそこな」

弥勒「浴室を掃除したり、客室を準備したり、厨房で仕込みをしたり」

修羅「朝の乱入者のせいで、午前中の仕事が、何も出来なかったからな」

大日「次のお客様がお見えになるのは、明日の夕方ですから、すぐに誰かとまるというわけでは無いのですが、アポイントメント無しでいらっしゃるお客様を、お待たせする訳にはまいりませんからね」

鬼子「アラアラ、それは大変ですわね。何でしたら、あたしたちも何かお手伝いいたしましょうか?」

真理「嬉しいお言葉ですけど、そういう訳にはいきませんよ。――ねぇ?」

帝釈「遠慮すること無い。祭りが終わって、店は臨時休業ってことにしてるんだ。暇なら、いくらでもある」

不動「どうする、支配人。俺は、支配人の一存に従う」

弥勒「正直、猫の手も借りたいところですけど」

修羅「怪力お化けが一体いるから、力仕事は捗りそうだけどな。――イタッ。暴力反対!」

帝釈「他人を怪物や化け物扱いするからだ。殴る拳だって痛いんだからな?」

大日「せっかくのご好意を無にするのも、かえって失礼かもしれませんから、お任せしましょう。――それでは、よろしくお願いします」

鬼子「こちらこそ。それで、まずは何から始めましょうか?」

真理「ここは効率を考えて、分業することにしませんか?」

弥勒「良いですね」

不動「俺も、川添の意見に賛成だな。――それで良いか、支配人?」

大日「そうですね。分担を決めましょう」

修羅「何で決めるんだ? 阿弥陀籤か? ――グオッ。平和に話し合おうぜ、タイ。拳じゃなくてさ」

帝釈「悪い、悪い。あたいは、口より先に手が動いてしまう性質(たち)なんだ」

鬼子、懐から紙と矢立(やたて)を取り出す。

鬼子「七人も居ますから、全員が全体が把握できるように、紙に書き出して、役割を振っていくことにいたしましょう」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ