#055「ユウヤケ」
@ツクヨミ神社
真理「(だるま落とし、剣玉、こけし。そして十箱以上のキャラメル。)誰に渡せばいいのかしら?」
不動「あとで集まった時に、好きに選んでもらえば良いじゃないか」
不動、筒にコルクを詰める。
真理「まだ続けるんですか? 的中率の高さは、充分、伝わりました。百発百中じゃありませんか」
不動「いいや、この程度ではない。今度は、一回で二箱落としてやる」
――どこぞの冴羽さん並みの名スナイパーだわ。いや、キャラクター的には東郷さんかしら。あの漫画は、よく理髪店やラーメン店に置かれてるそうだけど、たしか、まだ完結してないのよね。全部で何巻あるのかしら? 常春の国の十歳の国王が活躍する漫画は、百巻まで出てて、派出所のお巡りさんが活躍する漫画は、二百巻で完結したから、軽く百五十巻は超えてそうね。
真理「どれも、一冊丸ごと読んだことない本ばかりだけど」
不動「ん? 何か言ったか?」
真理「ううん。何でもないわ。(ワァ、本当に二箱同時にゲットしてる。あとで、みんなに配らなきゃ)」
*
帝釈「和金に、琉金に、出目金。イヤァ、大漁、大漁」
修羅「こっちは四匹で、そっちが五匹。全部で九匹か。あの破れかけのポイで、これだけ掬えるとはなぁ」
帝釈「ストップが掛からなきゃ、その倍は救えたんだけどな。――なぁ、シュー」
修羅「何だい、タイ?」
帝釈「金魚たちも、仲間が多いほうが良いと思うし、ひんどうやの裏庭に池があるのは知ってるだろう? あそこで飼ったらどうかと思うんだ」
修羅「それは良いね。――良かったな、お前たち。もう少しで、広いところに出られるからな」
帝釈「それで、その。金魚たちの世話を、シューにも頼みたいんだが、良いだろうか?」
修羅「もちろん。これだけ居たら、面倒を見るのが大変だもんな。一緒に育てようじゃないか」
帝釈「……ありがとう」
修羅「イヤだな、改まって。オイラとタイの仲じゃないか。堅いことは抜きだよ」
修羅、帝釈の背中を叩く。
帝釈「そうだな。ハハッ」
*
弥勒「ごちそうさまです、茨木さん」
弥勒、綿菓子を食べる。
茨木「なぁに、綿菓子は協力費や。優しゅうしておくんは、将来的な交渉を見据えた強かな打算でしかないんや。優良株には、稚魚のうちに飼い慣らして唾を付けとかんとな。餌付け、囲い込み、マーキング」
茨木、焼き玉蜀黍を齧る。
弥勒「三組とも、うまくいってると、いいんですけどね」
茨木「せやね。でも、周囲からお膳立て出来るんは、ここまでや。あとのことは、本人たち次第でしかないわ。馬を水辺まで連れて行くことは出来ても、無理に水を飲ませる訳にはいかへんし、子供に本を与えることは出来ても、無理に読ませる訳にはいかへん。事を急いては、嫌悪感を植えつけるだけや」
弥勒「気長に待つしかないんですね」
茨木「何や、丁稚。寂しなったんか? 心配せんでも、そのうちエエ子が現れるわ。アッ、先に言うとくけど、うちはアカンで。酒呑兄さん一筋やからな」
弥勒「誰も、茨木さんを狙いませんよ」
茨木「それはそれで、哀しいもんがあるけど。――せやなぁ。賀茂は、どうや?」
弥勒「エッ。賀茂さんは男性でしょう?」
茨木「それ、ホンマに言うてるんか?」
弥勒「だって、そうでしょう?」
茨木、腹を抱える。
茨木「カッカッカ。コイツは傑作やな。そうか、そうか。自分は、賀茂の正体を知らんのか」
弥勒「ムッ。何なんです。ヒトを馬鹿にして」
茨木「スマン、スマン。そう、むくれんといてや。マジックに騙されて、トリックを見破れなかったみたいやな。あんな、口調と格好は男でも、ひと皮剥いたら女やで。懐に鳩を入れてるのは、胸を誤魔化すためやし、ドタ靴や手袋も、手足の小ささを気付かれんようにするためや。どうや? そういう目で見たら、ストイックな色香があるように思えてきたやろう?」
弥勒、俯き、綿菓子で顔を隠す。
茨木「キシシ。訊くまでも無さそうやな。顔が、赤茄子みたいになっとるもんな」
賀茂、石燈籠の裏から登場。
賀茂「完熟トマトと言おうか、地平線に消える夕陽と言おうか、たしかに赤々としているね」
弥勒「ワッ。賀茂さん」
賀茂「先程から小生の名前が、幾度となく聞こえていたが、呼んだかね?」




