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#048「ナカミセ」

@本館南側

真理「ひんどうや?」

大日「ハイ。鬼子さんと帝釈さんが経営されてる飴屋さんです」

不動「雨上がりの道は良く滑るから、徐行運転を心掛けるように。それから、服が泥で汚れないよう、なるべく水溜りを避けて走るように。あと、籠の中身をツマミ食いしないように。他には、そうだなぁ」

修羅「心配性だな。それくらいで、もう大丈夫だよ、フーさん。マリちゃんと荷物は、必ず無事に運ぶから」

弥勒「大事にされてますね、真理さん」

真理「そうなのよ、弥勒さん。急に過保護になっちゃって」

大日「何だかんだで、世話焼きで面倒見が良い性格ですからね」

不動「ゴッフォン。昼食を用意して待ってるから、手早く用事を済ませて戻るように」

修羅・真理「ハーイ」

  *

@ひんどうや

帝釈「なんてん、ハーブに、きなこ飴。はちみつ、ニッキに、ミルク飴。さぁ、寄ってけ、買ってけ、持ってけ泥棒」

♪リズミカルに飴を切る音。

修羅、暖簾を手で掻き分け、入店。

修羅「やってる? オッ。良いネタが揃ってるね」

真理、修羅に続き、入店。

真理「お寿司屋さんじゃないんですよ。――こんにちは」

鬼子「いらっしゃいませ。修羅ちゃん、こちらのかたは?」

帝釈「アァ、誰かと思えば、シューとマリーか。マリーを置いて、シューだけ先に帰れ」

修羅「着いて即効で追い返すな、タイ。今日はキー姉ちゃんに用があって来たんだ」

真理「こちらのかたが、鬼子さんなんですね。――はじめまして、川添真理です。帝釈さんから、お噂はかねがね」

鬼子「こちらこそ、はじめまして。いつぞやは、妹の帝釈がお世話になりまして。何か粗相をいたしませんでしたでしょうか?」

真理「いいえ、とんでもない」

修羅「そうそう。とんでもないことをしてくれたんだよな。――ウオッ。危ないな」

帝釈「それで、つまるところ何の用なんだ? その籠は何だ? 何を持ってきたんだ?」

修羅「一度に言わないでくれよ」

真理、修羅が持つ籠の包みを解く。

真理「夏のご挨拶のお返しです」

鬼子「マァ。若草色の瑞々しそうなマスカットですこと」

帝釈「籠の大きさから察するに、元から二房だったようだな。監視役も居るから、中抜き出来なかったというところか」

修羅「タイはオイラのことを何だと思ってるのさ。あんまり悪し様に言うようなら、半分、持って帰っちゃうからな」

真理「(捻くれ者は、ここにも居たわね。)大日さんからも、よろしく御礼をお伝えください、とのことです。このあいだは、結構なお品物をありがとうございました」

鬼子「アラ、そうですか。それは、ご丁寧にありがとうございます。大日さんが、ねぇ」

――ん? もしかして、鬼子さんは、大日さんのことを……。そうだとしたら、大日さんは、それを知らずに居るのかしら? それとも、何か複雑な関係があるのかも。ウーン。過去を知らないと、何も分からないわね。ここは、ホテルに戻ったら、すぐに不動さんに質問しなくっちゃ。

  *

@三途の川、左岸。

修羅「イヤァ、儲かった、儲かった。お駄賃に、ただで飴をもらっちゃった」

真理「あんまり油を売ってると、戻ってから不動さんに怒られますよ?」

修羅「平気、平気。それより、マリちゃん。売り場に並べられてた飴は、全部で何種類だったか覚えてるかい?」

真理「たしか、三個のケースが二段で、六種類でした」

修羅「そう。だけど、さっき貰ったこの袋には、すべて種類が違う七つの飴が入ってる。何が言いたいか、わかるよね?」

真理「店頭に並べない飴が一つだけある、ということですね?」

修羅「ピンポーン。おめでとう。正解したマリちゃんには、そのシークレットをあげよう」

真理、飴を受け取る。

真理「アレ? これは、もしかして」

修羅「そうだよ。初対面であげたのと同じさ。特別だよ? もう、今回限りでオシマイだからね」

真理「それじゃあ、ありがたくいただきますね」

真理、飴を口に含む。

――もしかして、修羅さん。わたしに惚れてたのかしら? だけど、わたしの気持ちは不動さんに向かって行ったし、不動さんのほうも、わたしに好意を持っていたと分かった。だから、身を引くことにしたのね。でも、修羅さん。幼馴染の帝釈さんは、あなたのことを純粋に思っているのよ。その片思いに気付いてあげて。アァ、もう。これも、ホテルに戻ったら、すぐに不動さんに相談しなくっちゃ。ややこしいことになっちゃったなぁ。


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