#036「オックウ」
@キッチン
不動「いいか。異臭、小火騒ぎ、器物破損、その他に何かしらのエマージェンシーが発生した時点で、厨房に立つことを禁ずるから、その覚悟で臨むように」
真理「ハイ。了解です、シェフ。(これまで、相当な苦労で教えてそうだわ)」
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真理「研ぎ終わりましたよ、シェフ。あとは、炊飯器にお任せですね?」
不動「そうだ。――よし、第一ステップクリア。支配人なら、ここで砥石を投げ込んでしまうところだ」
真理「そんな馬鹿な。包丁や鋏じゃないんですから」
不動「そんな馬鹿な、ということを澄ました顔でやってのけてしまうのが、支配人の恐ろしいところなんだ」
真理、お釜を炊飯器にセットする。
真理「どうせなら、無洗米を用意してくれれば良かったのになぁ」
不動「甘えたことをぬかすな。薪割りをさせたり、火吹き竹を渡したりしないだけ、ありがたいと思え」
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真理「蒟蒻、お豆腐、長葱。すべて、一口大に切って鍋にいれました。あとは、お味噌を加えて煮込んでいけば良いんですよね?」
不動「そうそう。――よし、第二ステップクリア。修羅なら、こんな均等には切れなかったし、弥勒は逆に、大きさを揃えようとして、細かく切りすぎてしまっていた」
真理「初心者が陥りがちなミスですね。大日さんは、どうだったんですか?」
不動「豆腐が赤く染まったから、途中退場させた。まさか、包丁を引いて切るとは思わなかったんだ」
真理「アララ。一大事ではありませんか」
不動「失血で命を落とすような怪我ではなかったが、傷を見た大日が泡を吹いて倒れたから、続行不可能になった」
真理「お味噌がお出汁入りの物なら、昆布と削り節を茹でる必要が無かったんですけどねぇ」
不動「横着しようとするな。ちゃんとイチから出汁を取ることに意味があるんだ。何なら、煮干しで出汁を取らせても良かったんだぞ? 頭と腸を取り除いて、根気強く灰汁を取る必要があるけどな」
真理「鰹と昆布の合わせ出汁が一番ですよ。ハハハ」
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不動「いままでのは、ホンの小手調べ。ここからが本番だから、気合を入れるように」
真理「ハイ、シェフ。頑張ります」
不動、俎板に魚を寝かせて置く。
不動「これから、この鯵を三枚に卸していく。実演しながら教えていくから、よく観察して、あとで真似するように」
真理「こちらに下処理済みの魚が、という流れではないんですね」
不動「料理は、手間暇だ」
真理「ハーイ。それにしても、目が濁ってない、新鮮そうなお魚ですね」
不動「よし、第三ステップクリア。弥勒は、ギョロッとした魚の目が怖いといって、ここで目を覆ってしまった。――まずは、こうして包丁の背で鱗を剥がしていく」
不動、包丁で魚の鱗を剥ぐ。
不動「こんなもので良いだろう。ちょっと触ってみろ」
真理「ハイ。アッ、ツルツルになりましたね」
不動「よし、第四ステップクリア。修羅は、ヌメヌメした生魚の触感が気持ち悪いといって、ここで逃げ出した。――今度は、こうして鰓蓋に切り込みを入れ、そこから尻尾のほうに向かって腹を開き、中を水洗いする」
不動、包丁で鰓蓋に切り込みを入れ、腹を割き、内臓を取り出しながら水洗い。
真理「ハワワ。おなかの中が綺麗になりましたね」
不動「第五ステップクリア。支配人は、切れ目から出てきた血や内臓を見て貧血を起こした。――あとは、胸鰭の後ろを、こう向きに襷切りにして頭を落として、腹のほうから骨と身を切り離せば」
不動、言った通りに卸していく。
不動「この通りだ」
真理「見てる分には、割と簡単そうですね」
不動「それなら、やってみせろ」




