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#036「オックウ」

@キッチン

不動「いいか。異臭、小火騒ぎ、器物破損、その他に何かしらのエマージェンシーが発生した時点で、厨房に立つことを禁ずるから、その覚悟で臨むように」

真理「ハイ。了解です、シェフ。(これまで、相当な苦労で教えてそうだわ)」

  *

真理「研ぎ終わりましたよ、シェフ。あとは、炊飯器にお任せですね?」

不動「そうだ。――よし、第一ステップクリア。支配人なら、ここで砥石を投げ込んでしまうところだ」

真理「そんな馬鹿な。包丁や鋏じゃないんですから」

不動「そんな馬鹿な、ということを澄ました顔でやってのけてしまうのが、支配人の恐ろしいところなんだ」

真理、お釜を炊飯器にセットする。

真理「どうせなら、無洗米を用意してくれれば良かったのになぁ」

不動「甘えたことをぬかすな。薪割りをさせたり、火吹き竹を渡したりしないだけ、ありがたいと思え」

  *

真理「蒟蒻(こんにゃく)、お豆腐、長葱。すべて、一口大に切って鍋にいれました。あとは、お味噌を加えて煮込んでいけば良いんですよね?」

不動「そうそう。――よし、第二ステップクリア。修羅なら、こんな均等には切れなかったし、弥勒は逆に、大きさを揃えようとして、細かく切りすぎてしまっていた」

真理「初心者が陥りがちなミスですね。大日さんは、どうだったんですか?」

不動「豆腐が赤く染まったから、途中退場させた。まさか、包丁を引いて切るとは思わなかったんだ」

真理「アララ。一大事ではありませんか」

不動「失血で命を落とすような怪我ではなかったが、傷を見た大日が泡を吹いて倒れたから、続行不可能になった」

真理「お味噌がお出汁入りの物なら、昆布と削り節を茹でる必要が無かったんですけどねぇ」

不動「横着しようとするな。ちゃんとイチから出汁を取ることに意味があるんだ。何なら、煮干しで出汁を取らせても良かったんだぞ? 頭と(はらわた)を取り除いて、根気強く灰汁(あく)を取る必要があるけどな」

真理「鰹と昆布の合わせ出汁が一番ですよ。ハハハ」

  *

不動「いままでのは、ホンの小手調べ。ここからが本番だから、気合を入れるように」

真理「ハイ、シェフ。頑張ります」

不動、俎板に魚を寝かせて置く。

不動「これから、この(あじ)を三枚に卸していく。実演しながら教えていくから、よく観察して、あとで真似するように」

真理「こちらに下処理済みの魚が、という流れではないんですね」

不動「料理は、手間暇だ」

真理「ハーイ。それにしても、目が濁ってない、新鮮そうなお魚ですね」

不動「よし、第三ステップクリア。弥勒は、ギョロッとした魚の目が怖いといって、ここで目を覆ってしまった。――まずは、こうして包丁の背で鱗を剥がしていく」

不動、包丁で魚の鱗を剥ぐ。

不動「こんなもので良いだろう。ちょっと触ってみろ」

真理「ハイ。アッ、ツルツルになりましたね」

不動「よし、第四ステップクリア。修羅は、ヌメヌメした生魚の触感が気持ち悪いといって、ここで逃げ出した。――今度は、こうして鰓蓋(えらぶた)に切り込みを入れ、そこから尻尾のほうに向かって腹を開き、中を水洗いする」

不動、包丁で鰓蓋に切り込みを入れ、腹を割き、内臓を取り出しながら水洗い。

真理「ハワワ。おなかの中が綺麗になりましたね」

不動「第五ステップクリア。支配人は、切れ目から出てきた血や内臓を見て貧血を起こした。――あとは、胸鰭(むなびれ)の後ろを、こう向きに(たすき)切りにして頭を落として、腹のほうから骨と身を切り離せば」

不動、言った通りに卸していく。

不動「この通りだ」

真理「見てる分には、割と簡単そうですね」

不動「それなら、やってみせろ」


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