表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/63

#020「セイソウ」

@キッチン

真理「ポテトサラダ、フライドポテト、じゃがバター、コロッケ、肉じゃが、ポテトチップス、芋餅、ビシソワーズ。芋尽くしですね、デンプンの錬金術師」

不動「お望みなら、金塊に変えてやろう」

大日「耳が驢馬(ろば)になりますよ、ミダス王」

真理「不動さんの耳は、驢馬の耳」

不動「いつから理髪師になったんだか。――それにしても、相変わらず、凄い力持ちだよな、あの爺さん。五、六貫といえば、結構な重さだぜ?」

大日「そうですね。一(もんめ)が三・七五グラムで、一貫は千匁ですから、およそ二十キログラムといったところですね。ちなみに、一斤は百六十匁で」

真理「あっ、そうそう。どんぶり勘定の語源って、わかりますか? 水走さんから出題されたんですけど」

不動「(ちなみに、が始まると夜が明けてしまうものな。)クイズは得意だよな、支配人?」

大日「択一式の問題なら、外さない自信がありますけど、選択肢が無いとなると難しいですよ」

真理「そうですか。大日さんでも、分からないことがあるんですね」

不動「(答えを知ってそうだけど、考えさせたいのかもしれないから、言わないでおいてやろう。)そういえば、修羅と弥勒は、いま何してるんだ? 揚げ物が萎びてしまう」

大日「ご予約の駿河夫妻がお見えになったので、燕の間へご案内するように言ってきました。そのうち来ますよ」

真理「アッ。噂をすれば。――お先に、いただいてます」

修羅「ヨッ、マリちゃん。――いやぁ、大変だった。いただきます!」

不動「手を洗ったんだろうな、二人とも」

弥勒「ちゃんと洗いましたよ。どれもこれも、ジャガイモ料理ですね。よく、これだけの数のメニューを思い付きましたね、不動さん」

大日「お二人とも、ご苦労さまです。――その風呂敷包みは何ですか?」

真理「わたしも気になってるんです。中に何が入ってるんですか?」

修羅「ヘヘッ。食べ終わってから、ゆっくり説明するよ。ナッ、ミーくん」

弥勒「そうですね。話せば長くなりそうなので」

不動「また、好からぬことを企んでるのではあるまいな?」

大日「(どうして、物事を悪いほうに考えてしまうんでしょうねぇ。)不動くん、そちらのポテトサラダとビシソワーズを入れてください」

不動、大日から取り皿と小鉢を受け取る。

真理「好いか悪いかは、聞いてから判断しましょうよ。――わたしにも、ポテトサラダをください」

  *

大日「手を合わせてください。尊い命に祈りを捧げ」

従業員五人「「「「「ごちそうさまでした」」」」」

修羅「アー、満腹満腹。明日の朝あたり、臍から芋の芽が出てくるかもしれない」

弥勒「僕も、お腹いっぱいです」

真理、調理台の上の食器を流しに置く。

真理「あれだけあったのに、全部なくなりましたね」

不動、調理台を布巾で拭く。

不動「吸引力の強い掃除機が、二台もあるからな」

大日「二人は機械じゃありませんし、食べ物をゴミと一緒にしてはいけませんよ、不動くん。――そろそろ、その荷物の説明をしてください」

修羅「オー、そうだった」

弥勒「忘れるところでしたね」

修羅・弥勒、背中の風呂敷包みを下ろし、調理台の上に広げる。

真理「アラ。真っ白で綺麗な着物ね。白無垢かしら?」

不動「こっちは、紋付羽織袴か」

大日「どちらも婚礼用のお召し物ですけど、これをどうすれば良いのですか?」

修羅「あの二人、太平洋戦争が終わったあとすぐに出逢って、とりあえず籍だけ入れて、のちのち落ち着いたら式を挙げようと考えてたらしいんだけどさ」

弥勒「細かい経緯は端折りますけど、何だかんだあって生前には挙式できなかったそうなんです」

真理「なるほど。それじゃあ、ここで改めて式を挙げたいということなんですね?」

不動「たしかに。そういうことなら、ココは、もってこいの場所だな」

大日「わかりました。そうなりますと、ロビーから大階段のあたりを片付けなければいけませんね。水走様は、明日の朝にはお帰りになりますから、そのあと、お昼前までに済ませることにしましょう。良いですね?」

従業員四人「「「「ハーイ」」」」


※どんぶり勘定は、職人の前垂れにあるポケットが語源です。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ