#018「ヨクボウ」
@別館二階
帝釈「シューとミーか。リーダーとフドーは、どうした?」
修羅「ダイさんはフロント、フーさんはキッチン」
弥勒「そして僕たちは、お客様を大浴場へご案内した帰りです」
川添「マァ。お客様がお見えだったんですね」
帝釈「あたいたちは、これからひとっ風呂浴びるところだ。覗くなよ、出歯亀ども」
修羅「誰が覗くか。ツルペタ賊はペチャパイ山に帰れ」
弥勒「帝釈さんは、鬼子お姉さんと違って俎板だものね」
帝釈「ナッ! 言うに事欠いて、コノヤロウ」
川添「二人とも。帝釈さんに失礼ですよ」
修羅「オォ、くわばらくわばら。一旦、安全地帯に避難しよう。三十六計」
弥勒「逃げるに如かず、ですね。そうしましょう」
修羅・弥勒、男湯に逃げる。
帝釈「アッ、コラ。待ちやがれ、卑怯者!」
川添「ドウドウドウ。二人には、あとでわたしからキツクキツク言っておきますから」
*
@大浴場
帝釈「まぁ、あたいとシューは、昔から、よくつるんでた腐れ縁仲間なんだ」
川添「帝釈さん。そこは、幼馴染って言っておきましょうよ」
帝釈「そんな綺麗なもんじゃないんだよ。お互い、ワガママだし、強情だし、図々しいし。姉さんには、何度も仲裁させてしまった。あたいは、姉さんと違って捻くれてるし、何をやってもうまくいかないんだ」
川添「そんなことないと思いますよ。自分に素直すぎて、衝突してるだけだと思います。それから」
帝釈「それから?」
川添「恋に関しては、不器用ですね。本当は大好きなのに、傷付くのが怖くて、素直になれない」
帝釈「バッ。何を馬鹿なことを。あたいは、シューのことなんか、これっぽっちも」
川添「そうかしら? 変ね。わたし、好きな相手が修羅さんだとは、ひとことも言ってませんよ?」
帝釈「手前、鎌を掛けたな!」
帝釈、シャワーで川添に水を掛ける。
川添「キャー。照れ隠しにしても、方法を選びなさいよ。心臓に悪いわ」
水走『お嬢さんがた。仲がよろしくて結構だが、あんまりキャンキャン叫ばないでくれ』
川添「あっ、ごめんなさい。――向こうにお客様がいらっしゃること、すっかり忘れてたわ」
帝釈「怒られてしまったな。湯船に浸かって、気持ちを鎮めよう」
*
帝釈「ミーは、あたいみたいなギャルより、あたいの姉さんやマリーみたいに、包容力ある姉ちゃんが好きなんだ。マリーだって、ミーのことを弟のように思ってる口だろう?」
真理「そうですね。スタンスは、妹に接するときと大して変わりませんね」
帝釈「姉さんと一緒だな。それで、マリー。フドーのことは、どう思ってんだい?」
真理「不動さんですか? そうねぇ。強面だし、怒りっぽすぎるところがありますけど、理想が高くて、仲間思いですね」
帝釈「誰が、真面目に人物評しろと言った。そういうことじゃなくて、フドーに気があるのかどうかを訊いてんだ」
真理「えっ! わたしが、不動さんに?」
帝釈「それは、素のリアクションだろうな? もし、カマトトぶった演技だったんなら、あたいのサウスポーが黙っちゃいない」
帝釈、右手を左肩に添え、左腕を回す。
真理「本当にビックリしたのよ。だから、乱暴は、よして」
帝釈「まぁ、信じてやろう。さっきマリーは、あたいのことを鈍感だと言ったが、あたいにすれば、マリーだって充分ニブチンだと思うね。疎すぎるにも程がある」
真理「何で、そうなるのよ?」
帝釈「胸に手を当てて、よーく考えてみろ。その立派な胸にな! 寄せて溝、走れば揺れる、たわわな実」
真理「一句詠めましたね。でも、谷間を溝とするのは、いかがなものかと」
帝釈「所詮、お子様は乳のデカさで判断するんだよ。あたいに半分寄越せ」
帝釈、真理の胸を鷲掴みにする。
真理「イヤー」
水走『ちょいと、お嬢さんがた』