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#013「オハナシ」

@フロントエントランス

真理「予約名は、現世と同じなんですね」

弥勒「稀に、戒名や法号で予約されるお客様もいらっしゃいます。でも、たいていは使い慣れてる俗名を名乗られますね」

真理「戒名の意味が無いわね。坊主丸儲けじゃない」

弥勒「お寺を敵に回すような発言ですね。苦心されてるんですよ、戒名を考えるのに」

真理「生前の情報を入力したら、瞬時に候補が出てくるソフトがあるって、小耳に挟んだことがあるわ。あと、卒塔婆を印刷するプリンターもあるそうじゃない。オートメーション化が進んでると思った覚えがあるわ」

弥勒「オートメーション化は、仏教業界だけでなく、社会全体に言えることだと思いますけどね」

真理「まぁ、そうね。フアー」

弥勒「退屈ですか? 面白い話の一つでも出来ると良いんですけど、あいにく、レパートリーが無くて。受付のイロハを学ぶなら、支配人さんのほうが適任なんですけどねぇ」

真理「暇を持て余してるのは確かですけど、弥勒さんが責任を感じる必要はないですよ。ご謙遜は結構ですけど、もっと自信を持ってください」

弥勒「すみません」

真理「そこは『ありがとう』だと思いますよ。――ところで、向こうのロビーでは、いま何をしてるんですか? 大日さんが、何かお話してるみたいですけど」

弥勒「座談会ですよ。要望に応じて、不定期で開催してるんです」

真理「へー。今日の話題は、何なんですか?」

弥勒「今日は、ですね。えーっと」

弥勒、懐からメモを出し、一枚捲る。

弥勒「今回の座談会は、ウィリアム・シェークスピアと天王星の衛星軌道にまつわる幾つかの共通点、曾宮紀子における繋がった沢庵と焼き餅について幾つかの有機的考察、マイクロフト・ホームズとディオゲネスの哲学的思考に関する幾つかの思弁的私論の三本です」

真理「紹介の仕方が、某国民的長寿アニメに似てるような」

弥勒「偶然ですよ。お饅頭や銅鑼焼きを投げ食いしたり、ジャンケンしたりしませんから」

真理「よく知ってるわね。このホテル、テレビもインターネット回線も無いのに」

弥勒「以前、ロビーに置いてた時期があったんですけど、一度視聴し始めると、そのまま画面の前から離れられなくなってしまうものですから。チャンネルを巡って、イザコザも起きますし」

真理「なるほど。――さっきのメモを、わたしにも見せてください」

弥勒「エッ。いえ、これは、その。他人にお見せできるようなものではなくて」

真理「見せてくださいよ。隠されると、余計に気になります」

弥勒「修羅さんと同じようなことを言いますね」

真理「そういうものよ。それで結局、昨日の夜に何があったんですか?」

弥勒「今日は、い、良い天気ですね」

真理、視線を逸らした弥勒の顔を両手で挟み、自分の方へ向ける。

真理「これ以上とぼけたら、大声で悲鳴を上げて大日さんを呼びます」

弥勒「わ、わかりました。話しますから、離してください」

真理、両手を離す。

真理「離したわ。さぁ、話してください」


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