彼女からの最後のLINE
まっすぐ帰る気になれず、あてもなく夜の街を歩いていた。
帰宅したのは、23時を回っていた。
心も体も、ヘトヘトだった。
かばんを床に落とし、靴も脱がずにそのまま玄関に座り込む。
ふと、スマホを取り出した。
LINEの通知が1件だけ光っていた。
差出人は、彼女——いや、今となっては元彼女になった人の名前。
『ごめん。もう無理かも。別れよう』
たった一行。
それだけで、すべてが伝わってきた。
指が震える。
返信しようとしたが、何を書けばいいのか分からなかった。
スクロールして、過去のやり取りを見る。
——『最近、全然笑わないよね』
——『私の話、ちゃんと聞いてる?』
——『会っても、スマホばっかり見てるし……』
全部、既読スルーしていた。
——笑えるわけないだろ。仕事で結果出てないのに。
お前は余裕があっていいよな。安定した仕事してるし。
そう思った自分が、今になって恥ずかしかった。
彼女は心配してくれていただけだった。
それなのに、自分は「攻撃」だと受け取っていた。
——また、俺のせいだ。
『ごめん』
それだけ打って、送信ボタンを押した。
既読はついたが、返信は来なかった。
部屋の隅に、彼女と撮った写真が飾られていた。
笑顔の自分が、今の自分とあまりにも違って見えた。
—
彼女とは、大学3年のときに出会った。
バイト先の居酒屋で、彼女は常連客の一人だった。
ある日、カケルが注文を間違えたとき、彼女は怒るどころか「大丈夫ですよ」と笑ってくれた。
その笑顔に、救われた気がした。
バイトが終わった後、彼女が一人で店に残っていた。
「お疲れさまです」と声をかけたら、「よかったら、少し話しませんか?」と言われた。
それが、始まりだった。
—
付き合って、もうすぐ4年になるはずだった。
就活がうまくいかなくて落ち込んでいたとき、「大丈夫、あなたなら絶対大丈夫」と言ってくれた。
C-GATEに入社が決まったときも、一緒に喜んでくれた。
——あのとき、彼女は本当にうれしそうだった。
でも、入社してから、何かが変わった。
仕事で結果が出ず、自分に余裕がなくなった。
デートの最中もスマホを見て、テレアポの結果を気にしていた。
彼女の優しさを「重荷」だと感じていた。
写真の中の彼女は、笑っていた。
隣にいる自分も、笑っていた。
あの頃の自分は、もういない。




