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才能屋  作者: ハル
1章 迷子の営業マン
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彼女からの最後のLINE

まっすぐ帰る気になれず、あてもなく夜の街を歩いていた。

帰宅したのは、23時を回っていた。


心も体も、ヘトヘトだった。

かばんを床に落とし、靴も脱がずにそのまま玄関に座り込む。


ふと、スマホを取り出した。

LINEの通知が1件だけ光っていた。


差出人は、彼女——いや、今となっては元彼女になった人の名前。


『ごめん。もう無理かも。別れよう』


たった一行。

それだけで、すべてが伝わってきた。


指が震える。

返信しようとしたが、何を書けばいいのか分からなかった。


スクロールして、過去のやり取りを見る。


——『最近、全然笑わないよね』

——『私の話、ちゃんと聞いてる?』

——『会っても、スマホばっかり見てるし……』


全部、既読スルーしていた。


——笑えるわけないだろ。仕事で結果出てないのに。

  お前は余裕があっていいよな。安定した仕事してるし。


そう思った自分が、今になって恥ずかしかった。


彼女は心配してくれていただけだった。

それなのに、自分は「攻撃」だと受け取っていた。


——また、俺のせいだ。


『ごめん』


それだけ打って、送信ボタンを押した。

既読はついたが、返信は来なかった。


部屋の隅に、彼女と撮った写真が飾られていた。

笑顔の自分が、今の自分とあまりにも違って見えた。


—


彼女とは、大学3年のときに出会った。


バイト先の居酒屋で、彼女は常連客の一人だった。

ある日、カケルが注文を間違えたとき、彼女は怒るどころか「大丈夫ですよ」と笑ってくれた。

その笑顔に、救われた気がした。


バイトが終わった後、彼女が一人で店に残っていた。

「お疲れさまです」と声をかけたら、「よかったら、少し話しませんか?」と言われた。


それが、始まりだった。


—


付き合って、もうすぐ4年になるはずだった。


就活がうまくいかなくて落ち込んでいたとき、「大丈夫、あなたなら絶対大丈夫」と言ってくれた。

C-GATEに入社が決まったときも、一緒に喜んでくれた。


——あのとき、彼女は本当にうれしそうだった。


でも、入社してから、何かが変わった。


仕事で結果が出ず、自分に余裕がなくなった。

デートの最中もスマホを見て、テレアポの結果を気にしていた。


彼女の優しさを「重荷」だと感じていた。


写真の中の彼女は、笑っていた。

隣にいる自分も、笑っていた。


あの頃の自分は、もういない。

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