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才能屋  作者: ハル
1章 迷子の営業マン
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見返すために選んだ道

4年前。


当時、大学生だった。


奨学金で大学に通っていた。

金銭的に余裕がなく、バイトと授業の掛け持ちで毎日が終わる。

友達は少なかった。


周りは部活やサークルで充実した毎日を送っている。

楽しそうに笑い合い、恋愛をして、仲間と遊んでいる。


自分だけが、疎外されているような感覚だった。


——何のために生きてるんだろう。


そんな問いが、いつも頭の奥にあった。


就活が始まると、その差はさらに広がった。


周りはインターンに参加して、業界研究をして、自己分析をしていた。

カケルは、バイトに追われてそんな余裕はなかった。


友人たちは次々と内定をもらい、「第一志望、受かった!」と笑顔で報告する。

SNSには、内定報告の投稿があふれていた。


——俺だけ、何も決まってない。


毎日が惨めだった。

周りが輝いているように見えて、自分だけが取り残されている気がした。


——俺は、何も持っていない。


昔から、そうだった。

片親で、お金もなくて、ご飯を食べられない日もあった。

母親はいつも疲れていて、余裕がなかった。


「泣きたいのはこっちだ」

「男のくせにいちいち泣くな」


そう言われて育った。

感情を出すことは、許されなかった。

弱さを見せることは、恥だった。


——俺には、価値がない。


その思いが、ずっと心の奥にこびりついていた。


だから、証明したかった。

お金を稼いで、出世して、誰もが羨む状態になれば、

自分にも価値があると証明できる。


周りを見返せる。

母親にも、自分にも。


そう信じていた。


だから、カケルは「成果主義」「実力主義」を掲げる営業会社ばかりを受けた。


C-GATEの面接で、面接官はこう言った。


「君なら稼げるよ。うちは実力次第でいくらでも稼げる。やる気があれば、年収1,000万も夢じゃない」


その言葉を聞いたとき、胸が熱くなった。


——やっと、認められた。


誰も自分を見てくれなかった大学時代。

何の取り柄もないと思っていた自分を、初めて「稼げる」と言ってくれた。


——これで変われる。


希望があった。

ここで結果を出せば、自分の価値を証明できる。

周りを見返せる。


そう信じて、カケルはC-GATEに入社した。


—


でも、現実は違った。


入社してすぐ、気づいた。

「君なら稼げる」は、誰にでも言っている言葉だった。


成果主義は、確かに成果主義だった。

でも、それは「結果を出せなければ、存在価値がない」という意味だった。


数字が出ない者は、笑われる。

見えない存在になる。


4年間、カケルはずっとその「見えない存在」だった。


——何も変わらなかった。


大学時代と同じ。

いや、もっと惨めかもしれない。


あのとき、「君なら稼げる」と言ってくれた面接官の顔を、もう思い出せなかった。

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