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改札の白井
改札の前に、白井は立っていた。
休日の駅前。人の流れの中で、白いシャツに黒いベストの姿だけが、どこか浮いて見えた。
「こんにちは、高峰さま」
「……どうも」
「歩いて数分です。こちらへ」
並んで歩き出す。
白井は、前を向いたまま歩いていた。
会社のことも、先週のことも、何も聞いてこない。
沈黙が気まずくて、営業の癖で、天気の話が口をついて出た。
「……今日は、いい天気ですね」
「そうですね。歩くには、ちょうどいいです」
それで、会話は終わった。
しばらく歩いたところで、白井が言った。
「今日のお代は、事前に済ませてあります」
「えっ。いや、それは——」
「お気になさらず。私がお誘いしたので」
その言葉に、吉田の声が重なった。
——今度、飯でも行こうぜ。おごるからさ。
それだけだった。
断る言葉を探したが、やはり見つからなかった。
「……ごちそうに、なります」
白井は、うなずいただけだった。




