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無能な営業マン
席に座り、受話器を取る。
指が、うまく動かなかった。
「お忙しいところ失礼いたします。私、株式会社C-GATEの——」
プツッ。
次の番号を押す。
プツッ。
吉田の声が、耳に残っていた。
——気にすんなよ、か。
俺の見込み先を、取り上げた口で。
怒られたくなくて、リストの整理やロープレに、時間ばかり使ってきた。
並べ替えたリスト。何度も書き直した台本。
誰もいない会議室で、壁に向かって繰り返した、ロープレ。
準備が足りないから、取れないのだ。
そう言い聞かせて、また準備をした。
それでも、数字は鳴かず飛ばずだった。
あの部屋では、最後まで話を聞いてもらえた。
あれは、何だったのだろう。
電話の向こうでは、誰も聞いてくれない。
——才能?
笑わせるな。まずは現実を見ろよ。
俺は無能で、ダメダメな営業マンだ。
入社して数年、契約は片手で数えるほど。価値のない人間だ。
怒りと後悔が、ぐちゃぐちゃに混ざる。
田嶋課長への怒り。吉田への怒り。
あの部屋で時間を使った自分への、後悔。
そのどれが本当なのか、自分でも分からなかった。




