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聞き続ける人
沈黙が落ちた。
窓の外で、車が一台、通り過ぎる音がした。
「ありがとうございます」
白井が、静かに言った。
「最後まで、うかがいました」
「……では」
「契約は、いたしません」
予想していた。
それでも、胸の奥が、すとんと落ちた。
「今の私は、それを欲しいとは思っていません。ですので、お受けできません」
「……そう、ですよね」
「ですが」
白井は、少しだけ間を置いた。
「高峰さまが、本気でお話しくださったことは、伝わりました」
「……え」
「お気持ちは、伝わりました」
何か言い返そうとして、言葉が出なかった。
営業の電話では、最後まで話を聞いてもらえることなんて、ほとんどない。
途中で切られ、さえぎられ、ため息をつかれる。
売り込みを最後まで聞いてもらえたのは、初めてだった。
胸の奥が、じんわりと温かくなる。
目の奥が、わずかに熱を持った。
けれど、すぐに現実が戻ってきた。
——契約は、取れていない。
取れなかったら、会社に戻れない。
温かさは、冷たい焦りの上に、薄く乗っているだけだった。




