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一方的な売り込み
グレーの壁の小さなビルは、今日も同じ場所に建っていた。
表札を確かめる余裕もなく、インターホンを押す。
扉が開く。
「お待ちしておりました、高峰さま」
「白井さん。今日は、契約のお話をさせてください」
挨拶もそこそこに、そう切り出していた。
白井は、一瞬だけ目を見開いて、それから静かに応接室へ案内した。
椅子に座るなり、かばんから資料を出す。
「弊社は、中小企業の皆さまに、広告掲載のご提案をしております」
何度も繰り返してきた言葉だ。
口が、勝手に動く。
掲載の費用。反響の見込み。他社との違い。
台本どおりの言葉が、次々と並んでいく。
「今なら、初回の掲載枠を、特別なお値段で——」
白井は、うなずきもせず、さえぎりもしなかった。
ただ、まっすぐこちらを見て、聞いている。
その静けさが、怖かった。
反応がない。
何を言えば、動くのか。
早口になる。
声が、上ずる。
言葉だけが、自分の口から離れて、空回りしていく。
「いかがでしょうか。ぜひ、ご検討を」
最後まで言い切ったとき、息が上がっていた。




