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才能屋  作者: ハル
2章 才能屋との巡り会い
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33/41

一方的な売り込み

グレーの壁の小さなビルは、今日も同じ場所に建っていた。

表札を確かめる余裕もなく、インターホンを押す。


扉が開く。


「お待ちしておりました、高峰さま」


「白井さん。今日は、契約のお話をさせてください」


挨拶もそこそこに、そう切り出していた。

白井は、一瞬だけ目を見開いて、それから静かに応接室へ案内した。


椅子に座るなり、かばんから資料を出す。


「弊社は、中小企業の皆さまに、広告掲載のご提案をしております」


何度も繰り返してきた言葉だ。

口が、勝手に動く。

掲載の費用。反響の見込み。他社との違い。

台本どおりの言葉が、次々と並んでいく。


「今なら、初回の掲載枠を、特別なお値段で——」


白井は、うなずきもせず、さえぎりもしなかった。

ただ、まっすぐこちらを見て、聞いている。


その静けさが、怖かった。

反応がない。

何を言えば、動くのか。


早口になる。

声が、上ずる。

言葉だけが、自分の口から離れて、空回りしていく。


「いかがでしょうか。ぜひ、ご検討を」


最後まで言い切ったとき、息が上がっていた。

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