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木曜の問い
木曜の昼過ぎ。
「外回りに行ってきます」と告げると、田嶋課長は、画面から目を上げた。
「木曜日だな」
「……はい」
「先週も、その前の週も木曜だ。毎週木曜に、どこへ行っている」
低い声だった。
机の上には、先週出した報告書が、印刷して置いてある。
『新規先、ヒアリング』。たった一行だ。
「ヒアリング先の社名は」
「……新規の、見込み先で」
「それは聞いた。社名を言え」
答えられなかった。
才能屋、と口にした瞬間に、何が起きるのか。想像もつかない。
田嶋課長は、ゆっくりと椅子から立ち上がった。
「わかった。今日は、俺が同行する」
「えっ」
「文句があるのか。やましいことがないなら、問題ないだろう」
——連れて行けるわけがない。
あんな場所に、田嶋課長を。
頭の中が、白くなった。
気がつくと、口が動いていた。
「今日、必ず契約を取ってきます」
フロアの空気が、一瞬止まった。
どこかの席で、息をのむ気配がした。
「……ほう」
田嶋課長は、座り直した。
「ろくに契約も取れないお前が、今日、契約を取ってくる。そう言ったな」
「はい」
「いいだろう。夕方までに、結果を持って戻れ」
電車に揺られながら、スマホのメモ帳を開く。
才能屋の住所の下には、吉田の言葉が、そのまま残っていた。
——今日は、これを見せている場合じゃない。
契約が先だ。
画面を閉じた。




