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吉田の誘い
水曜、仕事が終わる18時。
フロアの隅では、今日も吉田の周りに、人が集まっていた。
カケルは、その輪に背を向けて、パソコンを閉じた。
足音が近づいてきて、声をかけられた。
「高峰、お疲れさん」
吉田だった。
「……ああ」
「今度、飯でも行こうぜ。おごるからさ」
明るい声が、フロアに響いた。
周りの何人かが、こちらを見た気がした。
「駅前に、うまい店見つけてさ。最近、あんま話せてないし。たまには、ゆっくりな」
——おごる、だと。
同期に、飯をおごられる。
持ってる奴の、余裕だ。
財布の中身が、頭をよぎった。
今月も、ぎりぎりだった。
それを、見透かされているような気がした。
机の下で、拳を握っていた。
断る言葉を探した。
見つからなかった。
「……考えとく」
「おう。待ってるわ」
吉田は、満足そうに笑って、自分の席へ戻っていった。
その背中を見ながら、胸の奥が、じわじわと熱くなる。
怒りなのか、恥ずかしさなのか、自分でも分からなかった。




