聞き耳を立てる一週間
月曜の朝礼が終わると、田嶋課長に呼ばれた。
「高峰。先週の外回りの報告、まだ上がってないぞ」
「……すみません」
「どこで、誰と会って、何が決まった。それを書いて出せ」
「今日中に出します」
「結果が出ないなら、外回りは減らすからな」
席に戻り、報告書のフォーマットを開く。
訪問先の欄で、カーソルが止まった。
才能屋、とは書けない。
書いたところで、何と説明すればいいのか。
30分ほど考えて、『新規先、ヒアリング』とだけ打ち、送信した。
数秒後、田嶋課長の席から、小さく舌打ちが聞こえた。
画面を見たのだろう。それ以上、何も言われなかった。
言われないほうが、かえって落ち着かなかった。
その日から、カケルは、言葉に耳を澄ますようになった。
宿題のせいだ。
今週、誰かに言われて引っかかった言葉。
電話の向こうで、いくつもの声が言った。
「間に合ってるんで」
「結構です」
「二度とかけてこないで」
どれも、胸に刺さった。
けれど、「引っかかった」と「傷ついた」は、どう違うのだろう。
その区別が、カケルには分からなかった。
火曜の午後には、こんなこともあった。
「お電話ありがとうございます。担当に伝えておきますね」
受付の女性は、やわらかい声でそう言った。
親切なのか、体のいい断り文句なのか。
カケルは、受話器を置いたまま、答えを出せなかった。
メモ帳の空白の行は、火曜の夜になっても、空白のままだった。




