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帰り道の宿題
帰り際、白井が言った。
「次回までに、一つだけ、お願いがあります」
「何ですか」
「今週、誰かに言われて引っかかった言葉を、書き留めておいてください。覚えているままで構いません。意味は、考えなくて結構です」
「……わかりました」
「次回は、来週の木曜日に」
外に出ると、日が傾きはじめていた。
駅へ向かう道の途中で、振り返った。
グレーの壁の小さなビルは、そこにあった。
けれど、入口の表札は、もう光の加減で見えなかった。
——引っかかった言葉、か。
歩きながら、スマホのメモ帳を開く。
才能屋の住所の下に、空白の行を作る。
まだ、何も書けなかった。
今週、誰に、何を言われるのだろう。
そして自分は、それを何と受け取るのだろう。
点滅するカーソルだけが、画面の上で、次の言葉を待っていた。




