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認められたかった相手
「三つ目です」
白井が、静かに言った。
誰かに褒められて、うれしくなかったことはありますか。
おかしな質問だと思った。
褒められてうれしくないなんて、あるはずがない。
そう思ったのに、口が先に動いていた。
「……あります」
「聞かせていただけますか」
「同期に、励まされたことがあって」
吉田の顔が浮かぶ。
「焦らんでいいって。俺も去年までは全然だったし」
あの声と、満足そうな笑顔。
「励ましてもらった、はずなんですけど……」
言葉が、続かない。
「はずなんですけど」
白井が、同じ言葉を静かに返した。それ以上は促さず、待っている。
「……バカにされたような、気がして。いや、あいつは、そんなつもりじゃ、ないんでしょうけど」
言いながら、声が小さくなっていく。
白井は、少し間を置いてから尋ねた。
「その方は、あなたを認めないと、言いましたか」
「……言ってないです。でも、そう聞こえたんです、俺には」
思ったより、強い声が出た。
「そうですか。そう聞こえたのですね」
白井は、表情を変えなかった。
責められた気がしていた胸の奥が、少しだけゆるんだ。
——どこから、そう聞こえたのだろう。
白井は、答えを言わなかった。
「今日、答えが出なくて構いません」
窓の外で、風が一度だけ、ガラスを鳴らした。




