↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
才能屋  作者: ハル
1章 迷子の営業マン
PR
3/41

消耗とため息の日々

午後のフロアは、どこか重たい。


同じ空気、同じ光、同じ姿勢。

目の前には今日のアポリストが並び、そのすぐ下には"未接続件数"というセルが赤く光っている。


「……はあ」


何度目か分からないため息を、小さく吐いた。

誰にも聞かれないように。自分にさえも、聞こえないように。


受話器を取り、電話番号を押す。

コール音。2回。3回。


「はい、○○社です」


「お忙しいところ失礼いたします。私、株式会社C-GATEの高峰と申しまし——」


「間に合ってるんで。結構です」

プツッ。


一瞬の応答。通話時間は10秒にも満たなかった。

次の番号へ。通話。切断。次、また次。


この繰り返しを、もう何年続けているだろう。

何かを"届けている"実感はない。

"断られる"ことだけが、確実に積み上がっていく。


—


15時を過ぎた頃、隣の席の同期・吉田が小さくガッツポーズをした。


「よっしゃー! 課長、本日6件目のアポ取りました!」


田嶋課長が笑いながら肩をたたく。


「おー、やるじゃん吉田! 今月トップ行けるぞ」


「いえいえ、まだまだっす!」


フロアに一瞬だけ、軽い空気が流れる。


誰かの成功は、誰かの失敗である。

この会社の空気は、そういう仕組みでできている。


数字を出せる者が、笑う。

出せない者は、見えない存在になる。


「高峰、お前は?」


突然、名前を呼ばれた。


「……すみません、まだです」


「まだ? 午後もかけてんだろ? 何件いった?」


「0件です」


「この時間で0か……逆にすげぇな。1件くらい取れんだろ、普通」


笑い声。誰かの鼻で笑う音。


——また、バカにされた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。