消耗とため息の日々
午後のフロアは、どこか重たい。
同じ空気、同じ光、同じ姿勢。
目の前には今日のアポリストが並び、そのすぐ下には"未接続件数"というセルが赤く光っている。
「……はあ」
何度目か分からないため息を、小さく吐いた。
誰にも聞かれないように。自分にさえも、聞こえないように。
受話器を取り、電話番号を押す。
コール音。2回。3回。
「はい、○○社です」
「お忙しいところ失礼いたします。私、株式会社C-GATEの高峰と申しまし——」
「間に合ってるんで。結構です」
プツッ。
一瞬の応答。通話時間は10秒にも満たなかった。
次の番号へ。通話。切断。次、また次。
この繰り返しを、もう何年続けているだろう。
何かを"届けている"実感はない。
"断られる"ことだけが、確実に積み上がっていく。
—
15時を過ぎた頃、隣の席の同期・吉田が小さくガッツポーズをした。
「よっしゃー! 課長、本日6件目のアポ取りました!」
田嶋課長が笑いながら肩をたたく。
「おー、やるじゃん吉田! 今月トップ行けるぞ」
「いえいえ、まだまだっす!」
フロアに一瞬だけ、軽い空気が流れる。
誰かの成功は、誰かの失敗である。
この会社の空気は、そういう仕組みでできている。
数字を出せる者が、笑う。
出せない者は、見えない存在になる。
「高峰、お前は?」
突然、名前を呼ばれた。
「……すみません、まだです」
「まだ? 午後もかけてんだろ? 何件いった?」
「0件です」
「この時間で0か……逆にすげぇな。1件くらい取れんだろ、普通」
笑い声。誰かの鼻で笑う音。
——また、バカにされた。




