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才能屋  作者: ハル
1章 迷子の営業マン
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カップラーメンと孤独

昼休みは、毎日同じ場所で、同じように始まる。

給湯室の奥、段ボールが積まれた隅のスペース。誰にも見つかりたくないという気持ちが、無意識にそこを選ばせる。


カップラーメンのふたを開け、お湯を注ぐ。

時計の針が正午をわずかに越えたことを確認しながら、スマホを取り出す。


LINEの通知はゼロ。未読のままのメッセージだけが、スクリーンに沈んでいる。

ついでに開いたSNSのタイムラインには、大学時代の同級生が"人生の進捗"を投稿していた。


——『新しい職場、刺激的で最高です!』

——『プロポーズ、成功しました』

——『やっと家買いました! これからは家族で頑張っていきます』


どれも本音かどうか分からない。

だけど、幸せそうな笑顔に囲まれていると、自分だけ取り残された気持ちになる。


心の奥のほうが、じわじわと締め付けられる。

劣等感、焦り、見栄、諦め。

いろんな感情が絡まり合って、喉の奥で固まる。


——何してんだろう、俺。


ほんの数年前まで、「広告業界で働く自分」に、多少なりとも夢を見ていた。

稼ぎまくって出世する。

そんな自分を、周りが羨む姿を想像していた。


でも現実は、誰かが作った商品を、誰かが用意したトークスクリプトで、ひたすら売るだけ。

羨望でも称賛でもない。

そこにあるのは、「お前、いい加減に数字出せよ」という一言だけだった。


ピピッ。


電子音が鳴って、現実に引き戻される。

湯気を立てるカップラーメン。少し麺がのびてしまったかもしれない。


ズズッと音を立ててすすりながら、ふと「人生って、なんなんだろうな」と思う。


別に不幸なわけじゃない。

屋根があって、給料は安くても払われていて、食べるものもある。


でも、満たされない。

朝目覚めても、何も変わっていない自分がそこにいるだけだ。

成長した実感も、前に進んでいる感覚も、何もない。

ただ空虚で、孤独で、どこにも居場所がない。


手元のカップラーメンは、味がしなかった。

それでも完食したのは、習慣でしかなかった。


食べ終わった容器をゴミ箱に捨て、席へと戻る。

そこには、また数字のためだけの時間が待っている。


「今日中にあと50件……」


独り言のようにつぶやいて、ため息を飲み込んだ。

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