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木曜日、才能屋へ
木曜の昼過ぎ。
田嶋課長に「午後から外回りに行ってきます」と告げると、意外にもあっさりOKが出た。
「お前が自分からアポ取ったなんて珍しいな。まあ、行ってこい」
電車を乗り継ぎ、住所に向かって歩く。
地図アプリを頼りにたどり着いたのは、意外にも落ち着いた住宅街の一角だった。
目の前にあったのは、グレーの壁に囲まれた小さなビル。
古い。
窓ガラスには薄くほこりが積もっているように見える。
本当にここか?と疑うようなたたずまいだった。
建物の入口付近に、小さな表札があった。
光の加減で見えたり見えなかったりする。
目を凝らすと、そこには小さくこう書かれていた。
「才能屋」
そこに確かに、存在していた。
あの電話が幻じゃなかったことが、ようやく実感として胸に落ちてきた。
インターホンを押す。
指先がわずかに震えた。
——カチッ。
しばらくして、扉の奥から足音が近づいてきた。
そして、静かにドアが開く。




