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才能屋  作者: ハル
1章 迷子の営業マン
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「君、楽しい?」

その日の午後、また同じように電話をかけ続けていた。


何十件目かの通話で、年配の男性が出た。


「はい、○○社です」


「お忙しいところ失礼いたします。私、株式会社C-GATEの高峰と申しまして——」


「……君、楽しい? そんな仕事してて」


突然、そう聞かれた。


「……え?」


「いや、なんか声に全然元気ないなって思ってさ。大丈夫?」


——大丈夫なわけがない。


でも、そんなこと言えるはずもなかった。


「……すみません、ご迷惑を……」


「いや、迷惑じゃないよ。ただ、君の声聞いてて、なんか心配になっちゃって」


その言葉に、胸が詰まった。


見ず知らずの人に、心配される。

それが、なぜか堪えられないほどうれしかった。


でも同時に、惨めでもあった。


「……ありがとうございます」


「無理すんなよ。じゃあね」


プツッ。


通話が終わった。


カケルは、受話器を置けなかった。


——楽しい?


その問いが、頭の中で何度も反すうされた。


楽しくない。

全然楽しくない。


でも、じゃあどうすればいいのか。

それが分からなかった。

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