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「君、楽しい?」
その日の午後、また同じように電話をかけ続けていた。
何十件目かの通話で、年配の男性が出た。
「はい、○○社です」
「お忙しいところ失礼いたします。私、株式会社C-GATEの高峰と申しまして——」
「……君、楽しい? そんな仕事してて」
突然、そう聞かれた。
「……え?」
「いや、なんか声に全然元気ないなって思ってさ。大丈夫?」
——大丈夫なわけがない。
でも、そんなこと言えるはずもなかった。
「……すみません、ご迷惑を……」
「いや、迷惑じゃないよ。ただ、君の声聞いてて、なんか心配になっちゃって」
その言葉に、胸が詰まった。
見ず知らずの人に、心配される。
それが、なぜか堪えられないほどうれしかった。
でも同時に、惨めでもあった。
「……ありがとうございます」
「無理すんなよ。じゃあね」
プツッ。
通話が終わった。
カケルは、受話器を置けなかった。
——楽しい?
その問いが、頭の中で何度も反すうされた。
楽しくない。
全然楽しくない。
でも、じゃあどうすればいいのか。
それが分からなかった。




